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「コロナで再発見 年賀状のあれこれ」(くらし☆解説)

名越 章浩  解説委員

毎年恒例の年賀状。
「コロナで再発見 年賀状のあれこれ」というテーマで名越章浩解説委員が解説します。

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【年賀はがきの発行枚数は減少傾向でも・・・】

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日本郵便によりますと、年賀はがきの発行枚数は、平成16年(2004年)用をピークに減少傾向。
ことしの年賀はがきの発行枚数は、当初の数値で19億4198万枚と、去年より17%も少なくなっています。
メールやSNSで新年の挨拶を済ませる人が多くなっていて、ことしの場合は特に、新型コロナウイルスの流行で経済活動が停滞し、企業の利用が落ち込んでいることも、主な理由だそうです。
ただ、街で話を聞くと、こんな声も複数聞かれました。

22歳の大学生
「ことしは新型コロナの影響で会えなかった人も多かったので、日ごろの感謝の気持ちを年賀状で伝えたい」

60代の男性
「コロナ禍だからこそ、年賀状でしっかりと気持ちを伝えたい」

年末年始の帰省を控える人が大勢いる中、大切な人を思う気持ちが大きくなっているように感じます。
実際、年賀状の印刷の注文を受けている東京都内のある会社では、ことしは、注文が去年の同じ時期の1.5に増えていて、新型コロナの終息を願うデザインや挨拶文が人気だということです。

【年賀状の習慣 いつから?】

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では年賀状は、一体いつから始まった習慣なのでしょうか。
東京・墨田区にある郵政博物館の学芸員の冨永紀子さんによりますと、おおもとを辿れば平安時代の頃から新年の挨拶を手紙に書くという習慣はあったそうです。しかし、当時は庶民にまで浸透したような習慣ではありませんでした。
江戸時代に寺子屋が増えて、読み書きができる子どもが増えたことで、このころ庶民にも徐々に広がったのではないかということです。

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ただ、ちゃんと郵便制度が始まったのは明治時代になってからです。
最初のころは、ほとんどの人が元日に年賀状を出しに行っていたそうです。
まさに年始の挨拶の習慣の延長線だったのです。
その後、明治33年の1月1日からは、全国で元日に年賀状が配達されるようになったのですが、それに合わせて12月のうちに年賀状を出してもらって、郵便局側で保管しておく仕組みが出来上がっていきました。

【現在の年賀はがき登場の理由】

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今のような全国統一の年賀はがきが登場したのは、戦後、昭和24年のことです。
実はこのとき、「はがき」にある工夫を施して、一気に一般に浸透しました。
それが、「お年玉付き」と「寄付金付き」の年賀はがきの登場でした。
戦争に敗れ、人々が暗く沈む中、京都の民間の男性のアイデアが採用されたのです。
この男性は「戦争で通信が途絶えていたので、年賀状でお互いの消息がわかる。そのクジにお年玉を付け、さらに寄付金を加えれば、夢もあり、社会福祉にも役立つ」と考えたそうです。
戦争からの復興を後押しする狙いがあり、このときのアイデアが、今も受け継がれています。

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最初のお年玉の賞品は「ミシン」でした。
戦後、着るものも十分でなかった時代。ミシンはとても魅力的な賞品だったのです。
その後も、ラジオやカラーテレビなど、それぞれの時代を反映しながら、賞品が変わっていきました。
ちなみに来年の年賀状の1等の賞品は、2つの中から選べるようになっていて、1つは、30万円の現金。もう1つは31万円分の電子マネーギフトです。
まさに今の時代をあらわしていると思いませんか?
年賀状の歴史を見ていくと、時代背景や人々の趣向の変化が読み取れるのです。

【“料額印面”を楽しむ】

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さらに、年賀状の切手の部分、正式名称は「料額印面」というのですが、ここにも工夫があります。
毎年、干支に関係するものがデザインされていて、よく見ると、面白いことに気づきます。

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例えば、平成16年用の年賀はがきには干支の「さる年」にちなんで、1匹の猿が温泉に浸かっている様子が描かれています。これが12年後の平成28年用の年賀はがきでは、子どもができて一緒に温泉に浸かっている様子がデザインされています。

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ほかにも、「ひつじ年」の年賀状では、羊が毛糸で何かを編んでいるデザインの年(平成15年)から、12年後(平成27年)にはマフラーが完成しているといった具合に、変化が楽しめるのです。

必ず毎年、こういうストーリー仕立てになっているわけではないのですが、日本郵便には現在、はがきや切手をデザインする社員のデザイナーが8人いて、そのうちの一部のデザイナーが遊び心を加えてやっているそうです。

【しゃべる年賀状も登場】

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年賀状に親しんできた世代であっても、意外と知らないことが多いのではないでしょうか。
このほかにも、日本郵便が今年から導入した新しいサービスがありました。
それが「おしゃべり年賀状」です。
簡単にいうと、年賀状に印刷されたQRコードをスマートフォンなどで読み取ると、写真の中の人やペットなどが表情豊かに喋り始めるというものです。

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作成の手順を説明します。
まずは日本郵便の公式ホームページへ。その中にある「おしゃべり年賀状を作る」というバナーをクリックします。
すると、写真をアップロードできるようになっています。自分の写真、家族やペットの写真など、好みの写真を1枚選んでアップロードするのです。

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私は、試しにNHK解説委員室のキャラクターのミミちゃんの写真を入れてみました。
そして、目や口の位置などを調整したあと、声を入れます。
録音した自分の声でもいいのですが、今回は、ホームページのサンプルにあった、お笑いタレントの「コウメ太夫」さんの声を入れてみました。
これで完成です。
目がパチパチしたり、表情も変わったりしながら、音声が再生されます。
作ったら、自動的にQRコードが作成されます。
このQRコードを年賀状に印刷して送れば、その相手がスマホなどでQRコードを読み取って、画像と音声が見られるようになるという仕組みです。
慣れれば数分の作業で出来ます。

ITを使いこなす若い世代にも、年賀状に親しんでもらおうというアイデアです。
会員登録などは必要なく、誰でも無料で使えます。
文章と、写真、音声を組み合わせて、しっかり気持ちを伝えられる年賀状に仕上げることもできますね。

コロナと付き合う新しい生活の模索が続く中、年賀状が、コロナに立ち向かって、みんなで乗り越えていこうという思いを共有するための手段の1つとして活用される年になるかもしれません。

(名越 章浩 解説委員)

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