12月のNHK世論調査がまとまった。新型コロナウイルスの感染拡大や、内閣支持率が大きく低下した菅政権を国民はどう見ているのか。
【内閣支持率】
菅内閣の支持率は「支持する」が42%、「支持しない」が36%で、その差は6ポイントに縮まった。11月と比べると、「支持する」が14ポイント減り、「支持しない」が17ポイント増えた。このうち与党支持層の内閣支持は83%から65%、およそ4割を占める「無党派層」では41%から27%と大幅に減った。
【新型コロナ感染再拡大】
支持率の低下に影響を与えたとみられるのが新型コロナウイルスの感染拡大だ。自分や家族が感染する不安をどの程度感じるか尋ねたところ、「感じる」は85%、「感じない」は12%と「感じる」人が増加傾向にあり、およそ4人に1人(24%)は収入が「減った」とも答えた。
また緊急事態宣言を国が再び出すべきだという人は6割近く(57%)に上り、「第2波」が指摘されていた7月に比べ「出すべきだ」は9ポイント増えた。
こうした不安感もあって新型コロナをめぐる政府のこれまでの対応を「評価する」は41%、「評価しない」は56%と、菅政権になって初めて「評価しない」が「評価する」を上回った。
政権発足後、対応を「評価する」という人は常に5割を上回ってきただけに、今回の結果が内閣支持率の低下に大きく影響したとみて間違いなさそうだ。
【Go Toトラベル 全国一斉で一時停止】
議論となっていた「Go Toトラベル」について政府は14日、12月28日から来年1月11日の成人の日までの間、全国一斉に一時停止することを決めた。また12月27日までは、札幌市、大阪市、東京都、名古屋市を目的地とする旅行を対象から外し、出発地とする旅行も利用を控えるよう呼びかけた。
菅首相はこれまで、「Go Toトラベル」は地域経済の下支えとなっており、「移動では感染はしないという提言も受けている」とも述べていた。ただ国民の意識はというと、事業を「続けるべき」と答えた人は12%にすぎず、「いったん停止すべき」は79%に上っていた。
この間、日本医師会などが「今は人の動きを止めるべきだ」と指摘し、政府の分科会は先週、感染状況が高止まりしている地域を対象から除外するよう提言し、年末年始を静かに過ごすよう呼びかけていた。さらに世論の動向なども踏まえ政府は判断したものとみられる。
菅首相は14日、「最大限の対策」と述べたが、今回の決定を受けて医療が最も手薄になる年末年始に感染者数がどう推移していくのか。一方で消費や人の移動が1年で最も活発になるこの時期の景気に、どのような影響が出るのか。感染状況、経済の動向が、年明け以降の内閣支持率、さらには政権運営の行方を大きく左右するものとみられる。
【年末年始どう過ごす】
ことしもあと2週間余りで終わるが、国民はどう過ごそうとしているのだろうか。
年末年始に「帰省や旅行をする」は5%、「帰省も旅行もしない」は81%だった。「しない」は先月より14ポイントも増えた。また帰省や旅行だけでなく、初詣についても「正月三が日に行く」という人は12%にすぎず、「正月三が日以外の日に行く」人が32%、「行く予定はない」は51%だった。
来年は1月4日が月曜日。このため正月三が日に初詣に行く人が集中することが予想され、政府も期間をずらして分散参拝するよう呼び掛けているが、国民の意識はすでに高いことがうかがえる。
【ワクチン接種】
感染防止に期待されているのがワクチンだ。海外企業で開発が進んだことで、すでに接種を始め、また近く始める国もある。日本国内ではいつごろ開始するのか現時点ではっきりとした時期はわからないが、先の国会で法律が成立したことで国の承認が終われば順次無料で受けられることになっている。
「ワクチンを接種したいか、したくないか」聞いたところ、「接種したい」は50%だった一方で、「接種したくない」は36%と安全性も気にして、一定程度の人が接種に慎重な考えだ。
イギリスでワクチンを接種した2人に激しいアレルギー反応のような症状が出たというニュースも伝えられた。安全性をどう評価し、有効性はどの程度期待できるのか、政府はわかりやすく説明することが大切になってくる。
【桜を見る会 安倍前首相の説明は】
ここにきて政権に影を落としているのが「桜を見る会」前日夜に安倍前首相の後援会が主催した懇親会をめぐる問題だ。懇親会をめぐっては、去年までの5年間の費用の総額が2000万円を超え、このうち少なくとも800万円以上を安倍氏側が負担したとみられることが明らかになっている。
この問題について安倍氏の説明にどの程度納得しているか聞いたところ、「納得している」は13%、「納得していない」は78%だった。
安倍氏はこれまで、「懇親会のすべての費用は参加者の自己負担で支払われており事務所や後援会の収支は一切ない」などと答弁していきた。野党側は仮に事実と異なるのであれば責任は非常に重いとして、国会招致に応じるよう求めているほか、自民党内からも説明を求める声が出ている。安倍氏は捜査の結果が出た段階で自ら経緯などを説明するとしている。これがいつ頃、どのような形で行われるのか。そしてその中身が国民の疑問に十分答えるものとなるのかが焦点だ。
【政党支持率】
今何党を支持しているか尋ねたところ、自民党38.2%、立憲民主党5.1%などとなった。
大きく減少した内閣支持率とは対照的に、政党支持率は与野党とも大きな変化は見られなかった。
ことしの政治は、コロナ禍のもとで首相が7年9か月ぶりに代わり、野党も合流や分裂が相次ぐ、動きの激しい1年だった。来年は衆院選が必ずあるが、菅首相がそのタイミングをどう判断するかも、新型コロナの感染状況が大きな影響を与えそうだ。
(曽我 英弘 解説委員)
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