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「この冬 人気の旅行先は? オンラインツアーの楽しみ方」(くらし☆解説)

二村 伸  解説委員

コロナ禍で仕事も趣味も、そして食べたり飲んだりするのも自宅でという方が多いですね。「テレワーク」や「おうちでOO」といった言葉もすっかり定着しましたが、旅行も例外ではありません。パソコンやスマートホンを使ったオンラインの旅行も実際に歩いて見学する従来の旅とはまた違った魅力があるようです。

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Q.オンラインの旅行にはどんなものがあるの?

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大手旅行会社のホームページでもこのように様々なツアーがあります。

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たとえば、スキーツアーは1000円から。ツアーの日程や見どころなど従来のツアーと同じようになっています。このツアーは基本編でゲレンデに行って滑るところまでですが、ヘリコプターで山頂まで行って滑り降りるツアーもあります。映像を見ていると自分も滑っているような感覚になるそうです。

Q.この冬はそんな場所が人気なのですか?

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いつもの年ですとこの時期はヨーロッパのクリスマスマーケットが人気ですが、大手旅行会社によればコロナ禍の冬のオンラインツアーはこんな場所が人気です。無料のツアーでは、▼フランスのモン・サン・ミシェル、▼スペインのバルセロナ、▼イギリス・ロンドンのウェストミンスターが上位です。有料のツアーでは、▼香港と▼カンボジアのアンコールワットなどの遺跡群といったようにアジアの人気が高いということです。

Q.オンラインツアーでも現地の案内があるのですか?
生中継で案内をしてくれたり質問に答えてくれたりするものもあります。
ツアーの一部を見てみましょう。

ユネスコの世界遺産に登録されているガウディの傑作の1つ、カサ・バトリョを借り切って内部を見学するツアーです。ピサの斜塔の階段をのぼるツアーもあります。実際にその場にいるような気分になりますね。新型コロナウイルスの感染のリスクが高い地域ではライブのツアーは無理ですが、それ以外の地域でマスクを着けるなど感染防止策をとりながら案内しています。

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これ以外にも各社工夫を凝らしたツアーがあります。たとえば、▼オーストラリアのケアンズでマンゴの収穫風景を見学し、いろいろな食べ方を知ることができるツアーや、▼南半球のニュージーランドで星を観測したり、マレーシアで昆虫を観察したりするツアーもあります。▼カナダの家庭で留学体験をするツアーは、現地の女性と英語で会話するこのツアーはキャンセル待ちが出るほどの人気だそうです。10代や70代の方も参加するそうです。この他、▼「世界三大仏教遺跡をめぐるツアー」では、カンボジアのアンコールワットとインドネシアのボロブドゥール、それにミャンマーのバガンの3か所を訪れます。実際に行くとなると時間もかかりますし費用も高額になりますのでオンラインならではのツアーですね。変わったところでは、▼結婚式場の下見ツアーや、▼現地のお土産が送られてくるツアーもあります。一人だけで旅をするオーダーメイドのツアーは、自分の行きたい街でブティックをのぞいたりカフェに立ち寄ったりすることもできます。

Q.小さな子どもや高齢の親がいたり、体調が悪かったりするとなかなか海外旅行というわけにはいきませんが、オンラインだと安全ですし気軽に行けて良いですね。

オンラインツアーの参加者は40代から50代が多く、とくに女性に人気だそうです。
ただ、参加するには動画を見ることができるネット環境が必要です。また、有料のツアーではキャンセル料が発生する場合もありますので注意が必要です。

Q.実際の海外旅行がいつ再開されるか見通しが立たないだけにしばらくはオンラインツアーですね。

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国連世界観光機関(UNWTO)によれば、去年1年間の海外旅行者数は世界全体で14億5800万人に上りました。各国に到着し1泊以上した人の数をまとめたもので、おととしより3.5%増え、過去最高を記録しました。旅行者が訪れた上位の国々がこちらです。やはりフランスやスペインが上位で、日本は11位です。
しかし、今年は新型コロナウイルスの感染拡大により、上半期の旅行者数が去年の同じ時期より65%も減少し、観光収入は4600億ドル、日本円でおよそ48兆円の損失となりました。旅行者の数が最も減ったのは日本を含む北東アジアで、80%以上も減りました。下半期はさらに減るのは確実です。今後も世界の旅行業界は不安定な状態が続き、IATA・国際航空運送協会は、航空機の利用者数が去年の水準まで回復するのは2025年頃になるだろうと予測しています。

Q.そこでオンラインツアーなのですね。

はい。旅行会社だけでなく各国政府もオンラインの観光に力を入れています。

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たとえばドイツでは、今年、東西統一30周年、ベートーベンの生誕250年でもあることから様々なイベントが予定されていましたが、軒なみ中止か延期となり、今年ドイツを訪れる観光客は57%減少する見通しです。そこでドイツ観光局は、「インフルエンサー」と呼ばれる、ブログやソーシャルメディアで多数のフォロワーを持つ人をターゲットにしてマ-ケティングや観光キャンペーンを行っています。観光局のツイッターはフォロワーが11万人近くに上っているそうです。

Q.旅行も大きく変わりつつあるのですね。

観光業界も各国政府も、戦略の見直しを迫られています。当面は人込みや密を避ける工夫が必要ですし、環境保護や持続可能性などの長期的なビジョンも必要です。ドイツ政府は、文化や伝統をテーマに、とくに日本やアメリカからの観光客誘致に力を入れています。また、オンラインでは従来のツアーにはなかった場所が日本でも人気になっています。それがこのお店です。

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Q.きれいなお店ですね。何を売っているのですか?

ドイツ東部ドレスデンの牛乳屋さんです。牛乳やチーズなどの乳製品の他、石鹸やスキンケア用品なども売っています。壁や天井はドイツの有名な陶磁器メーカーによる手書きのタイルで埋め尽くされ、ギネス記録集に「世界1美しい乳製品を売る店」として登録されています。ドイツ観光局がツイッターで紹介したところ日本で大人気になっているそうです。

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ベートーベンの生誕地やゆかりの地を訪れ、現地の人々の生の声を聞くことができる企画も人気です。生誕250年の今月16日と翌17日には記念コンサートが行われ、日本でもオンラインでライブコンサートを聞くことができます。

Q.興味深い企画が多いですね。

もちろん実際に現地に旅行するにこしたことはありませんが、オンラインツアーは気軽に海外を旅する気分を味わうことができ、コロナ後の旅行先を見つける手がかりになるのではないでしょうか。ツアーが中止され収入が絶たれた現地のガイドさんにとっても活躍の場が増えるのは良いことですね。オンラインツアーは今後、新しい旅のかたちとして定着するかもしれません。ただいかに独自性を出し付加価値のある旅を提供するか各社の知恵比べでもあります。世界を知ることは日本の良さを見直す機会にもなるだけに、自分にあった旅を見つけてほしいと思います。

(二村 伸 解説委員)

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