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「コロナ禍で 不安・ストレス どう対処?」(くらし☆解説)【取材後記あり】

矢島 ゆき子  解説委員

新型コロナウイルスの感染流行が長く続くことで、以前のような生活に戻れず、不安や、ストレスを感じている方も多いのではないでしょうか?今日は心の問題、不安・ストレスについて、専門家に伺った対処法などをご紹介します。

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◆不安・ストレスを感じている人はどのぐらいいる?

12月1日に国立成育医療研究センターが発表した、全国の小学生から高校生までの子ども、それから17歳以下の子どもをもつ保護者 約1万人を対象に調査結果があります。子どもたちにアンケートした所、73%がストレスを感じていたということです。
調査を担当した一人、半谷(はんがい)まゆみさんにお話しを伺ったところ、「子どもは思ったよりストレスを感じているので、保護者や先生は子どもの話を聞く工夫などをしてほしい。」ということでした。

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また、保護者自身の「こころの状態」をアンケートしたところ「こころの負担(不安・ストレス)がある」と考えられる人が 30%、「心理的苦痛を感じている」は 10%、「(うつ病のような)深刻なこころの状態のおそれ」は 12%と、半数以上の保護者に何らかの こころの負担・苦痛などがあるかもしれないことがわかりました。

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「保護者自身も多くの不安・ストレスを感じています。子どものことを優先して、不安・ストレスのある保護者自身の心身のケアがおろそかになっていないか注意してほしい」と半谷さんは言います。また、「感染拡大している今、保護者のこころの状態が悪化している可能性もあるので、子どもへの影響に注意が必要だ」とのことでした。

◆感染が拡大の影響でくらし・働き方が変わることでおこる「不安・ストレス」

では、大人の方で不安・ストレスがある場合、どんなケースがあるのでしょうか?ストレス外来をもつ東邦大学医療センター小山文彦教授にお話しを聞きました。

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新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、主に在宅勤務をしている会社員のAさん。仕事中の同僚とのやりとりは、ほとんどがメールです。以前は簡単に済んだことも、確認に時間がかかり、ストレスを感じるそうです。また、たまの通勤でも感染するのではないかと不安を感じています。最近は、ほとんど毎日、早朝には目が覚めてしまい、眠れず、日中の集中力が下がっているということで、外来にきたそうです。Aさんは、「感染拡大で、暮らし・働き方が変化したことで、不安・ストレス」を感じるようになったんです。

◆不安・ストレス 対処法 ~コミュニケーション・自分ができることを実践

小山さんは、この患者さんへのアドバイスはこちら。

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まず、コミュニケーション。メールだけではなく、同僚と電話やWEB会議などでもしてストレスを減らしましょうとのことです。私たちが人に伝達できる情報量は、直接、対面した方が表情・態度などもわかるので電話より多いですし、電話の方がメールより情報量が多く、細かいニュアンスが伝わるからです。また、「感染への不安」については、基本中の基本ですが、マスクをする、手を洗う、通勤時間を調整してなるべく三密を避ける、換気をするなど、自分ができることを実践することが大切だということ。そして、「すべてをコントロールできるわけではないと考える」、とアドバイスしたそうです。つまり自分がコントロールできないことは考えすぎないことが大事、ということです。

◆不安・ストレス 対処法~ “幸せホルモン”を増やす!

コロナ禍の 不安・ストレス対処法として、「幸せホルモン」を増やす!という視点をもつといいのではというアドバイスもありました。

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広島大学 山脇成人特任教授によると、人の脳では、心や体を正常に保つために様々な「幸せホルモン」があるそうです。その代表がオキシトシンとセロトニン。
オキシトシンは、幸福感を与え、不安・恐怖を和らげてくれるもので、母親と赤ちゃんのふれあい、手をつなぐなどの「スキンシップ」などで体の中でたくさん増えることが知られていたのですが、このオキシトシン、電話で親しい人の声を聞くのでも増えたり、相手を思いやって 他人に親切にしたり、助け合うと増えることもわかってきたそうです。
新型コロナウイルスの影響で、人と会って話すのが難しい今、電話などのコミュニケーションは、本当に大切かもしれません。

「セロトニン」は分泌が多いと精神が安定し、不眠・うつ病になりづらいと言われているそうです。セロトニンを増やすために重要なのが「太陽の光」をあびること。ウォーキングのような一定のリズムを刻む運動もセロトニンを増やします。そして食事。セロトニンはほとんどが腸で作られます。日頃から腸内環境を整え、セロトニンの原料になるたんぱく質を含む卵・大豆・大豆製品・乳製品などがお勧めです。

◆不安・ストレスのサイン 体の不調を見逃さない!

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先ほど、ご紹介したAさんには不眠がありました。「眠りたくても眠れない 不眠」は、「不安やストレス」がある時に、起こりやすい「体の不調」です。「不安やストレスがありますよ」ということを示す、体が出す「サイン」のようなものです。
このサインで、不安やストレスを持っている、ことに気づくこともできるのです。サインは他にもあります。肩こり・めまい・頭痛などの筋肉などの緊張、動悸(き)、あるいは便秘・下痢などの消化器系症状です。こうしたサインに気づくことは大切です。実は、不安・ストレスがあるのにそのままにしておくと、「うつ病」などの病気つながる場合もあるからです。
昨年まで減少していた自殺者の数が、ここ数か月、増えています。以前は、病気や悩みがあったら、周囲の人と「コミュニケーション」ができました。でも今は、人と会って話すことが減り、ストレスがかかり、時に孤独を感じたり、あるいは自殺へとつながる例もあるそうです。もし、体の調子がひどい、ひどく不安・ストレスがある場合、是非、医療機関を受診してみてください。

◆不安・ストレス対処法~リラクゼーション・筋しかん法

姿勢を正し、手でグーをつくって ぎゅっと握り、手首 と 肘も曲げ、 脇をしめ、両肩をすくめて、グーッと上に持ち上げて、少しの間、そのままで保ち、それから、フーッと、力を抜いて伸ばします。あらゆる関節をぎゅっと曲げてから、全てを緩めて延ばすことがポイントです。またぎゅっとするときに息を吸い、そのまま息をとめ、力を抜きながら、息もフーッと吐くとよいそうです。

◆マスクの下で笑顔を作る!

皆さん、マスクをする機会が増えたかと思います。マスクの下で笑顔を作ることもおすすめです。様々な顔の筋肉を動かして笑顔を作ると、脳は笑っていると錯覚し、不安が緩和され、心身の緊張が和らぐそうです。通勤中でもマスクをしているので、他の人に気がつかれずにできます。

まだまだ感染拡大が続いています。これからも不安ストレスを感じたり、緊張する場面があるかと思います。そんなときに、一度、実践していただけたらと思います。

(矢島 ゆき子 解説委員)


■取材後記

国立成育医療研究センターの調査では、「日常生活が変化した理由について、家族から十分に理由を説明してもらえていない」と感じている子どもたちがある程度いるということもわかりました。大人の私たちも大変な状況ではありますが、子どもたちとも、しっかりコミュニケーションができたらと改めて思いました。また未就学児など小さい子どもの場合、言語化できないので、言葉でなく、イライラ・かんしゃくがふえた、怒りっぽく暴力的になった、登園をいやがる、母親から離れたがらないなど、子どもの様子からストレスを感じていることがわかったり、大きなお子さんでも、楽しみにしていた行事がなくなったり、部活動が中止になることで、やる気がなくなる・無気力な状態になっている子もいるようです。下記の、国立成育医療研究センターのHPから、番組で今回、ご紹介した調査結果「コロナ×こどもアンケート」などを見ることができます。また、そこから、「関連情報」として、子どもやまわりの大人が相談できる連絡先や、子どものストレス対処法など関する情報も閲覧できます。

 ▶ 国立成育医療研究センター はこちら
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