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「どうする? コロナ禍の初詣」(くらし☆解説)

名越 章浩  解説委員

コロナ禍での初めての初詣。あなたはどうしますか?
「どうする? コロナ禍の初詣」をテーマに名越章浩解説委員が解説します。

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【各地で“分散参拝”呼びかけ】
各地の神社仏閣は、それぞれ感染防止のため、手を清める際のひしゃくを撤去したり、お札やお守りの授与所にアクリル板を設置したりするなどの対策をとっています。
そのうえで、「分散参拝」、時期をずらして参拝してもらうよう呼び掛けています。

来年は、1月4日の月曜日から仕事という方もいて、曜日の並びの関係で三が日に初詣に行く人が集中するのではないかと懸念されているので、分散参拝が求められているのです。

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例えば、和歌山県にある世界遺産の熊野本宮大社は、初詣を1月17日まで分散してほしいと呼びかけ。さいたま市の武蔵一宮氷川神社や、大阪の住吉大社は、2月の節分までに分散してほしいと呼びかけています。
このように、分散する時期はそれぞれで、特に決まりがあるというわけではありません。
神社仏閣が、参拝者の数や、地域の事情などによって個別に設定して呼び掛けています。
旧正月の2月12日ごろまでというところもありますし、長いところでは、例えば、福岡県の太宰府天満宮のように3月末まで分散を呼び掛けるところもあります。
また年始ではなく年末に、その年の感謝を伝えにお参りすることを勧めるところもあります。

一方、明治神宮は、分散参拝を呼び掛けていますが、特に「いつまで」という期間は設けないということです。
12月7日時点の予定では、例年通り、大みそかから元旦にかけて終夜、参拝者を迎え入れる計画です。
ただ、飲食できる場所はなくし、境内で人が滞留しないよう、例年とは違った導線を検討しているということでした。

【初詣のはじまりって何?】
初詣は、時代とともに変化してきた人々の習慣です。
初詣の歴史に詳しい、民俗伝承学の専門家、國學院大学の新谷尚紀客員教授によりますと、もともと日本に初詣という習慣はなく、今のような初詣が行われるようになったのは、明治の後半以降なのだそうです。当時は、七草の頃まで、あるいは小正月、つまり1月15日までにお参りする習慣だったようです。
つまり、かつては、すでに分散型の参拝だったというわけです。
では、どういう経緯で初詣が大規模に行われるようになったのでしょうか。

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新谷さんによりますと、もともと日本人は、正月には家にいて新年の運気をくださる「年神様」を待っていた習慣が基本だったそうです。

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それが江戸時代の後半には、「恵方参り」といって、江戸の庶民が、良い運気のある方角の寺や神社にお参りするようになった。つまり、自分からご利益を受け取りに行く習慣に変わってきたそうです。

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そして、次第に恵方を気にするよりも、家の近くの寺や神社へ行き、とにかく早く、ご利益をもらった方が良い運気がもらえるという考え方になって、明治後半には、今のような初詣の形になったということです。
さらに、これを後押ししたのが鉄道の開通です。大きな神社仏閣の参拝者を大量に輸送し、年始の文化として定着していったという歴史があります。
このように初詣は時代と共に変化してきた習慣なのです。

【“分散参拝”を後押し】
でも、今度の正月にちゃんと分散されるかどうかはやってみないと分かりません。
そこで、分散を促す取り組みも各地で進んでいます。

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例えば、例年、正月の三が日には全国最大規模の300万人以上が集まるという千葉県の成田山新勝寺の場合、地元の成田市が、分散参拝を促すキャンペーンを実施します。
具体的には、来年1月12日から1か月間、成田市内の1600以上の店舗で買い物をする際、特定のキャッシュレス決済で購入すると、「2021年」にちなんで購入金額の21%分のポイントが付与されるというキャンペーンです。
つまり、正月三が日を避けて、「1月12日以降に成田市に来た方がお得ですよ!」と呼びかけることによって、分散参拝を後押ししようという分散と経済効果の両方を考えたアイデアです。

ほかにも、伊勢神宮がある三重県伊勢市は、「平日伊勢まいり」と題したキャンペーンを実施します。
1月6日以降の1月の平日であれば、伊勢神宮の近くにある市営駐車場、1800台分について、4時間まで無料にします。
また平日に伊勢市を訪れた観光客に、抽せんで地元の特産品が当たる応募券を配布するなどします。
平日に行けばお得になるというキャンペーンで、土日・祝日の「密」を減らす狙いです。

【お札の郵送も】
一方、分散参拝ではなく、そもそも初詣を控えたいという人に向け、神奈川県鎌倉市の鶴岡八幡宮は、祈とうしたお札を郵送することにしています。
専用の用紙で、「家内安全」「開運厄除」などと祈願したい内容を記して申し込むと、ふだんと同じ場所で
祈とうし、郵送してもらえるということです。
鶴岡八幡宮は、「しっかりとご祈とうしたお札を送るので、自宅でそのお札にお参りしていただければ神様のご加護は十分にあると思います」としています。

【QRコードでおみくじも】
このほか、接触のリスクを少なくするため、神戸市の生田神社は、QRコードを利用したおみくじを取り入れています。
おみくじをひく際に普段は筒を振りますが、不特定多数の人が触ることになるので、これをやめて、境内にQRコードを載せた看板を設置しました。
参拝者が撮影すると、おみくじ専用のサイトが立ち上がって、おみくじを引けるようにする仕組みです。

【私たちが気を付けること】

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例年とは違った新たな参拝の形の模索が続いています。
これから年末年始にかけて、どこまで感染拡大するかによって判断が分かれると思いますが、初詣に行く場合は、とにかく「密」を避けて、すいている時期にお参りに行くという分散の徹底が重要です。
また、大声での会話や飲食を控えるなどの対策も心掛けてほしいポイントです。
さらに、境内の中を一方通行にするなど、各神社仏閣でのルールがあるので、それに従って感染防止対策に協力しましょう。
多くのところが、インターネット上のライブカメラで混雑状況を確認できるようにホームページなどで公開する予定です。
ぜひお出かけ前に確認をして、混雑を避けてください。

(名越 章浩 解説委員)

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