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「2022年度本格導入へ 小学校高学年に教科担任制」(くらし☆解説)【取材後記あり】

二宮 徹  解説委員

公立小学校の授業の一部を、中学校のように担任以外の教員が受け持つ「教科担任制」が、2022年度から全国で本格導入される見通しです。その目的や課題についてお伝えします。

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<教科担任制とは?>

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教科担任制というのは、理科は理科の先生というように担任ではない先生が教えるってことです。
再来年度から全国で導入する方向で、中央教育審議会が具体的な内容や方法を検討しています。対象は5・6年生で、教科も全部ではなく、一部になる見通しです。専門性を持った先生が教えることで、よりわかりやすく、質の高い授業にするというのが最大の目的です。子どもの理解度を高め、学力向上につなげます。
5・6年生だけ、しかも一部の教科ですが、小学校は明治以来、担任の先生がほとんどすべての教科を教える「学級担任制」が基本でしたから、小学校教育の大きな転換と言えます。

<中1ギャップ>

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なぜ5・6年生だけなのか。中学校に入ると、勉強が難しくなって、環境や生活もかなり変わります。これが「中1ギャップ」といって、学校や勉強が嫌いになるとか、不登校の原因の一つとされています。このため、その前に「教科担任」に慣れてもらうというねらいもあります。それに、成長に伴い、担任との相性も問題になってくるので、複数の先生が関わることで、担任以外にも相談できるようになります。
 一方で、4年生まではこれまで通りの見通しです。小さいうちは担任が密接に関わりながら成長を支えるという従来の役割を重視します。

<教科担任制の現状>
実はすでに一部、教科担任制を取り入れている学校が結構多いのです。兵庫県や群馬県など、10年以上取り組んで定着している地域もあります。

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教科や規模は自治体や学校で違いますが、文部科学省のおととしの全国調査では、小6の音楽は56%、理科は48%が導入していました。算数は7%です。これを全国で本格的に行うわけですが、中教審は、導入する教科の例として、英語、理科、算数を挙げているのです。
どうして、この3教科なのかというと、・中学での学習を見据えて、より系統だった教え方が望ましい教科ということです。
英語は、コミュニケーションや楽しさなど、中学校につながる基礎を教える専門性が求められます。
また、理科は、観察や実験で発見する学びが多く、新たに始まったプログラミング教育でも専門性が期待されます。
そして、算数は、特に高学年でつまずく子どもが多いので、日常生活と絡めるなど、よりわかりやすい教え方が必要です。
ただ、どの教科で導入するかは、自治体や学校に一定の裁量が認められると思います。
教え方がうまいとよくわかりますし、子どももその教科を好きになれます。先行している自治体からも、効果が上がっているという報告が相次いでいます。

<実施例を3つに分類>
それでは、どのように実践しているか、やり方を分類しながら説明します。

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5年生が3クラスある学校の一日です。まずは「交換型」。A先生は国語、B先生は算数、C先生は理科と、得意な教科を受け持ち、授業を交換します。この形は、学校や学年ごとに比較的簡単にできるので、すでに取り入れている学校が多くあります。

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続いて、「連携型」です。近くの中学校と連携する小中連携や別の小学校と連携する小小連携で、例えば社会と音楽の先生がやってくるという形です。公立でも最近増えている小中一貫校は同じ敷地に中学校があるので連携しやすいですね。
一番多いのは「追加型」。例えば英語の先生を追加で配置するといった方法です。英語や音楽、図工などの先生を追加している自治体が目立ちます。岩渕さんのお子さんの学校もこの形だと思います。
教科担任制を実施するには、こうした時間割を作ったり、やりくりしたりするのが大変で、全体を管理するコーディネーター役が必要だといいます。

<教員の働き方改革にも>

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それに、この教科担任制、教員の「働き方改革」というねらいもあるのです。他のクラスでも同じ授業するので、全部の教科を教えている今より、準備の負担が減ります。
例えば、理科を別の先生が担当すれば、授業だけでなく、計画づくりや実験の準備、片づけも任せられます。
その空いた時間に、家庭との連絡やテストの採点、事務処理を進められます。
ただ、先ほどの分類でいいますと、交換型だけで行うと、受け持つ授業の数は変わらず、結局一日中教壇に立つことになります。また、連携型だけだと、やってくる先生の受け持つ授業が増えて、移動も負担です。このため、追加型を組み合わせることで効果が上がります。
でも、それには教員を増やす必要があり、予算や人材の問題が出てきます。
それに、中学校の教員免許では、原則、小学校では教えられないので、教員免許の在り方を見直す動きも出てきています。
近年、教員になりたいという若者が減っているので、働き方や免許制度の改善を急いでほしいと思います。

<解決すべき課題は?>

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そもそも、教科担任制には、担任の目が届かない時間が増えて、子どもの変化に気付きにくくなるとか、担任と距離ができて戸惑う子どもが出るという短所があります。担任と各教科の先生が頻繁に話し合って、情報共有や相談を欠かさないようにしなければなりません。
そして重要なのは小規模の学校の問題です。全国の公立小学校のおよそ3分の1は、1学年1クラスかそれ以下しかない小さな学校です。
英語や理科が得意な先生がおらず、授業の交換が難しいとか、中学校も小さくて連携しづらいという学校もあります。
本格導入まであと1年半もないので、文部科学省は地域や学校の事情を考慮した方法や配置を早く示す必要があります。

(二宮 徹 解説委員)


■ 取材後記
文部科学省や中央教育審議会では、現在、「令和の教育改革」の議論が盛んに行われています。
「少人数学級」や「一人一台配備の情報端末活用」、「教員養成」など、あらゆる面での改革を目指しています。
毎週、いくつもの部会がオンラインで開かれていますが、傍聴申請は一般の方でもでき、萩生田大臣の記者会見も動画サイトで公開されています。
教育問題は、立場や見方によって意見が分かれることも多いので、私もこうした議論を細かくフォローしながら、丁寧でわかりやすい解説を目指しています。
「教科担任制」は、導入まで1年半足らずしかありません。
先進自治体の成果や課題を参考にしながら、問題なく転換してほしいと思います。

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