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「菅政権発足1か月、国民の意識は」(くらし☆解説)

曽我 英弘  解説委員

10月のNHK世論調査がまとまった。発足してまもなく1か月になる菅政権への国民の評価はどうだったのか。

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【内閣支持率低下、無党派層にも】
Q)内閣支持率に変化はあったか。

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A)菅内閣の支持率は「支持する」が55%、「支持しない」が20%だった。前の政権のもとでの8月より20ポイント余り高いものの、菅政権発足後初めての9月と比べると「支持する」が7ポイント減り、「支持しない」が7ポイント増えた。政権が発足して2回目の支持率が7ポイント下がるのは旧民主党の菅内閣の22ポイント減、小渕内閣の14ポイント減に次ぐ水準で野田内閣と同じだ。

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詳しく見ると「支持する」と答えた与党支持層が85%から80%に減り、およそ4割を占める特に支持する政党を持たない「無党派層」は50%から43%に減った。また男女別では男性の59%が支持しているのに対し、女性は62%から51%に減り、男女差が広がったことが目を引く。

Q)支持率の低下、原因は何だと考えられるのか。

A)菅政権はおおむね順調に滑り出してきたわけだが、ここにきてある人事をめぐって議論が起きていることも背景のひとつにあるのではないか。

【日本学術会議 任命拒否】
Q)日本学術会議の人事のことか。そもそもどういう組織なのか。

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A)昭和24年(1949)に設立され専門家の立場で政府に様々な提言をしてきた。会員は210人で3年に一度半数を新たに決める。学術会議からの推薦に基づいて総理大臣が任命する仕組みだ。
ただ今回、会議が推薦した新しい会員の候補105人のうち加藤陽子・東京大学教授ら6人が任命されなかった。この理由について菅総理大臣は「法に基づいて適切に対応した結果だ」などと説明している。

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そこで菅総理のこうした説明にどの程度納得できるか聞いた。「納得できる」が38%、「納得できない」が47%で、与党支持層でも「納得できる」は55%にとどまった。

Q)任命されなかった具体的な理由は何だと考えられるのか。

A)拒否された学者には前の政権のもとで議論を呼んだ安全保障関連法や特定秘密保護法に反対し、野党の推薦で国会に出席し発言した人も含まれている。このため学術会議側は前政権を批判したことが、除外の理由ではないかと反発している。そして今回の判断は学問の自由を侵す行為であり「推薦を受けた人は拒否しない」とした過去の政府答弁に沿って推薦通り任命するよう求めている。

Q)これに対し政府側はどう説明しているのか。

A)菅総理は候補者が政府の法案にかつて反対したことと今回の判断は「まったく関係ない」と答えている。そして会員の選考過程について「現在の会員が自分の後任を指名することも可能な仕組みとなっている」と指摘し「推薦された方をそのまま任命してきた前例を踏襲してよいのか考えてきた」と明かしている。
一連の議論は推薦候補者の任命の是非にとどまらず、政府による人事権の行使や学術界との関係のあり方にまで発展していく気配だ。政府は学術会議の予算や事務局の定員を行政改革の観点から検証する方針も示していて、26日に召集される臨時国会の大きな焦点のひとつに浮上してきた。

【“脱ハンコ” 国民ニーズに答えを】
Q)一方で菅政権が取り組む生活に身近な政策の進捗具合はどうなのか。

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A)なかでも議論が進んでいるように映るのが行政手続きにおける“脱ハンコ”。すべての国の役所で行政手続き上の押印を可能な限り廃止することを目指している。
そこでこの方針を評価するかどうか聞いたところ「評価する」は65%に上り幅広い支持を得た。

Q)婚姻届や離婚届でもハンコを廃止する方向で検討するというニュースを見た。

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A)調査では「日常生活で本人であることを証明するためにハンコがあったほうが良いか、なくてもよいか」尋ねてみたところ、「あったほうがよい」と答えた人が39%だったのに対し、「なくてもよい」は51%で、中でも「勤めている人」で「なくてもよい」と答えた人は68%と多くなった。
“脱ハンコ”に限らず、例えば携帯電話料金は果たして適正か、また給付金の申請から振り込みまでになぜあんなに時間がかかったのかという国民のニーズや疑問をすくいあげて値下げやデジタル庁といった目に見える答えを目指すのが菅政権の特徴と言えそうだ。

【入国制限緩和、Go Toトラベルに東京追加】
Q)そして前の政権から課題となっているのが新型コロナウイルス対策だが。

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A)新型コロナをめぐる政府のこれまでの取り組みを「評価する」人(54%)が「評価しない」人(40%)を上回る一方で、感染防止と社会経済活動の両立に悩む国民の意識があらためてうかがえる結果となった。

Q)というと。

A)ヨーロッパなどで再流行の兆しがみえる一方で、国内では移動制限の緩和の動きが続いている。10月1日から海外からは原則全世界を対象に入国制限が緩和され、同じ日に国内では観光需要の喚起策「トラベル」に東京発着の旅行も加わった。
そこでこのタイミングについてどう思うかそれぞれ聞いた。その結果、「全世界からの入国緩和」については「適切だ」が20%、「早すぎた」が59%、「遅すぎた」が9%だった。
また「Go Toトラベルに東京を追加」したことは「適切だ」が30%、「早すぎた」が45%、「遅すぎた」が13%だった。

Q)どちらも「早すぎた」と感じている人が一番多いが。

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A)これは自分や家族が感染する不安を「感じる」という人が8割近くに上ることが背景にあるのは間違いない。国内で感染が確認されたのはことし1月。終息のめどが見えない中、社会経済活動との両立をいかに図るかは臨時国会で引き続き主要なテーマとなりそうだ。

【政党支持率 国会論戦を】
Q)菅総理が就任して初めての本格論戦の場となるが。

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A)菅総理就任から40日が経って召集される臨時国会は政府与党が閣僚や党幹部の顔触れも変わり、野党も合流で新しい態勢で迎えることになった。
いま何党を支持しているか尋ねたところ、自民党は37.0%、立憲民主党は5.8%などとなった。
衆議院の解散・総選挙が1年以内に必ずある中で与野党ともに互いに一歩も引かない構えだが、内外の課題が山積しているのは言うまでもない。それだけに政府、とりわけ菅総理大臣は自らの政権運営の方針や施策の目的や効果などを丁寧に説明するとともに、与野党双方は国民の判断に資する活発な論戦を求めたい。

(曽我 英弘 解説委員)

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