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「中止?日帰り? コロナ禍の修学旅行」(くらし☆解説)

二宮 徹  解説委員

きょうから10月。例年なら秋の修学旅行シーズンですが、今年はどうなのでしょう。やはり修学旅行にも新型コロナウイルスの影響が出ているのでしょうか。

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<地域や学校で対応が分かれる>
春に予定していた学校の多くが、緊急事態宣言などで秋以降に延期しました。ところが、今、もともと秋の予定だった学校を含め、中止や延期、変更が相次いでいます。

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修学旅行の行き先や日程は、市区町村の教育委員会や学校ごとに決めます。予定通り実施という学校も多いのですが、行き先や日帰りへの変更、来年や来年度に延期、それに中止と、対応が分かれています。
8月のこの番組で、今年は夏休みの日数が地域や学校によって9日から42日まで大きな差があったことをお伝えしましたが、修学旅行も同様に、地域や学校で違うという状況になっています。

<全国の状況は?>
全国の調査や統計がないうえ、まだ検討中のところも多いのですが、小中学校の例を一部挙げます。

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宮崎県は小学校のほぼすべて、中学校のほぼ半数が県内か隣県に変更、またはその予定です。岐阜県は教育委員会が全校に宿泊中止を求め、学校は日帰りか、別の行事に変更しています。北海道は道内への変更、福島県も県内での実施を求めています。
一方、前橋市や岡山市は小学校が中止され、相模原市は中学校の中止を決めました。これ以外も、各地で対応が分かれていて、特に小6や中3、高3で修学旅行をする学校は、来年度への延期ができないので、決断を迫られています。

<実施する場合の対策は?>
実施する場合はどう対策しているのか。多ければ何百人が一緒に動くわけですから、簡単ではありません。実際の修学旅行の様子を見ると、マスクや3密回避はもちろん、バスの定員を半分近くまで減らすほか、乗り降りの都度、手を消毒。食事は飛沫が飛ばないようにして、泊まる部屋の人数も減らします。
こうした感染リスクを減らす対策には費用もかかりますが、Go Toトラベルキャンペーンを活用するほか、増やしたバスの費用などを補助する市町村もあります。

<中止や延期の理由は?>

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修学旅行は、見聞を広め、集団生活の経験を積むなどの目的だけでなく、 学校生活の思い出としても大切な行事です。このため、感染防止を徹底したうえで、実施する学校も多くある一方で、「不安だから行かせたくない」という声も少なくありません。
中止や延期の理由は、主に移動中や旅先での感染の不安です。遠い旅先で熱が出たら、そこで検査を受けたり、家族が迎えに行くことになったりするかもしれないという心配があります。さらに、家族への感染拡大、特に3世代同居の保護者からは、もし子どもが感染したら、おじいちゃん、おばあちゃんにうつしてしまうかもという不安の声も多いといいます。
一方で、大都市の学校が中止する理由には、感染者が少ない旅先で、もし感染を広げてしまったらという不安があります。
 
<近場に変える理由は?>

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近くであれば、貸し切りバスで移動できるので、駅や空港で不特定多数の人と接触するのを減らせるし、3密の混雑も避けられます。それに、文部科学省が7月に全国の教育委員会に出した連絡には、「修学旅行の教育的意義や児童生徒の心情等を踏まえ」「例えば、秋以降への変更、近距離、短縮などへの変更の検討を」とあります。こうして、感染者が少ない県内や隣県の近場に、バスで行くという学校が相次いでいるのです。
そして、近場どころか自分の町に泊まる修学旅行もあります。
鳥取県三朝町の中学生は、バスで1時間ほどの鳥取砂丘でサンドボードを楽しみました。その日、泊まったのは、地元の老舗温泉旅館。わざわざ地元に戻って泊まり、県産和牛のしゃぶしゃぶなど、豪華な食事を味わいました。
地元の旅館に泊まることはほとんどないので、意外に良い経験で、自分が住む町の良いところを実感できたし、何より子どもたち、喜んでいました。
こうした近場の修学旅行は、国内外からの観光客が大きく減っている今、地方の観光地にとって大きな助けとなっています。

<受け入れ側も支援>
このため、受け入れる自治体も、県内や隣県からの修学旅行を増やそうとしています。

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三重県は、県内での修学旅行に一人最大5000円を支援します。困っている観光業への支援にもなるという判断です。また、道後温泉がある松山市は、市内に泊まる修学旅行に最大15万円の助成金を出しています。その効果もあって、ことし松山市を修学旅行で訪れる学校が過去最多になる見込みだというほどです。同様の支援策は、青森県など、他の自治体にも広がっていて、近場の修学旅行を後押ししています。

<工夫した取り組み>
遠くに行けなくても、学べること、楽しめる取り組みをいくつかご紹介します。

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栃木県那須町にある遊園地に、先月、宇都宮市の中学3年生が日帰りで訪れました。京都で体験するはずだった着付けをしてもらい、浴衣姿で楽しみました。
また、大手旅行会社のJTBは、360度撮影した京都・奈良の風景や、職人とオンラインでつないで伝統工芸を体験する、教室での「バーチャル修学旅行」を10月1日から始めました。
そして、珍しいのは、岐阜県本巣市の「二十歳の修学旅行」です。中学3年の修学旅行を日帰りにする代わりに、5年後のプランを考えてもらい、その一部を市が補助する計画です。生徒たちが将来や友情を考えあう機会にしてほしいということです。

<「このまま卒業させたくない」>
本来、修学旅行は学習の場であり、みんなで泊まることも貴重な経験の一つなので、その意味では、紹介したような日程や行き先、内容では十分でないという見方もあると思います。
ただ、私が今回の取材で印象的だったのは、話を聞いた学校などの関係者全員が「今年の小6や中高の3年生は学校行事も少なく、寂しい思いをさせているので、このまま卒業させたくない」と話していたことです。
この秋は、運動会や音楽会、文化祭なども中止が相次いでいます。
修学旅行を中止する学校には、子どもたちの気持ちをフォローしながら、授業を離れて、いっしょに楽しめる時間を作ってほしいと思います。

(二宮 徹 解説委員)

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