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「100年目の国勢調査始まる」(くらし☆解説)

権藤 敏範  解説委員

日本の人口などを把握するため5年に1度行われている国勢調査が、9月中旬から始まりました。今回は、1回目の調査からちょうど100年目にあたります。

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【国勢調査とは】

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国勢調査は、5年に1度、外国人も含めて日本に住んでいるすべての人を対象に行われます。日本の人口や世帯数だけでなく、地域ごとに何歳の人が何人住んでいるかまで正確に分かるので、さまざまな形で活用されます。
例えば、▽労働力調査や家計調査など多くの統計調査は、一部の人を抜き出して調べる標本調査なのですが、国勢調査がなければ、対象となる人をどのように選んでいいのか分かりません。また、▽子育て中の人や高齢者など、住んでいる人に寄り添ったまちづくりや、▽どこに避難所を設置したらいいかなど防災計画にも利用されます。▽衆議院の小選挙区の区割りを見直すのも国勢調査が使われます。▽民間でも活用されていて、コンビニやスーパーの出店計画などに影響しています。

【調査の回答方法】
国勢調査には、▽パソコンやスマートフォンを使ってインターネットで回答するか、▽調査票に記入するか、2つの回答方法があります。いずれも調査日となっている、10月1日現在の状況を答えます。

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インターネット回答は、封筒を受け取ったその日からできます。「国政調査オンライン」のホームページを開いて、封筒の中の書類に記されている8桁の「ログインID」と4桁の「アクセスキー」を入力すると回答画面に進みます。回答は、画面の案内に沿って世帯を構成する全員について10月1日現在の状況を入力します。質問は、世帯の人数や住居の種類、仕事の状況など16問。すべて回答したら、自分で「パスワード」を設定し、「送信」ボタンを押すと終了です。

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調査票は、マークシート方式で、記入例を参照しながら選択肢の欄を塗りつぶしていきます。書き終えたら、提出用の封筒に入れて郵送します。ただし、郵送での回答が可能なのは10月1日以降です。調査票は、回収に訪れる調査員に渡すこともできます。
インターネット、調査票ともに、回答の期限は、10月7日です。

回答を済ませた後に、10月1日現在で状況が変わった場合、▽インターネットで回答した人は、簡単に入力し直すことができます。▽調査票を出し終えたという人は、市区町村に、変更の連絡をして下さい。

【初めての国勢調査】
今回の調査は、ちょうど100年目の節目ということで、1回目の調査を振り返ってみます。当時は、国民の意識が今とは大きく違ったようです。

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初めての国勢調査は、1920年・大正9年10月1日に行われました。欧米各国と肩を並べようと、計画から長い年月の末、実現しました。質問の数は8問と今回の半分。また、現在はふだん住んでいる場所で調査を行いますが、1回目の調査は、10月1日の午前零時にいる場所で調べました。ですから、旅行中の人は宿屋の世帯員としてカウントされました。
調査当日は、台風が本州を直撃して洪水の被害が生じたところもあったようですが、調査は順調に行われたようです。地域によっては、午前零時ごろにサイレンや大砲が鳴り響くなどお祭り騒ぎになったようです。第1次世界大戦で戦勝国になった後でもあり、国民も、「文明国の仲間入り」ととらえ、参加することを誇りに思っていたようです。
調査によって、人口は、5596万人だとわかりました。それから、5年ごとに100年間、積み重ねられた国勢調査は、正確な人口の増減や社会情勢など、日本の歩みを知る貴重なデータとなっています。

【新型コロナウイルスの影響】
今回の調査は、新型コロナウイルスの大きな影響を受けています。調査員が、想定通り集まらなかったのです。

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総務省は、前回・5年前の調査と同じ70万人の確保を目指しましたが、およそ61万人にとどまりました。もともと担い手不足の懸念がありましたが、コロナの影響で、高齢者を中心に辞退や敬遠するケースが相次いだといいます。このため、総務省は、▽調査員1人あたりの担当する世帯数を増やす一方で、▽調査書類の配布や回収の期間を延ばして対応していますが、どうしても調査員の負担は重くなっています。

【回答率の低下】
課題はこれだけではありません。調査に応じてくれない人が増えているのです。特に都市部、それに若者が目立ちます。
国勢調査は、調査員が住民に面会して調査書類を手渡すのが原則です。しかし、プライバシー意識の高まりや犯罪への警戒から、見知らぬ人の訪問に拒絶反応を示す人は少なくありません。さらに今回は、感染防止の観点から、多くの自治体で、調査員が面会せずにインターホン越しに説明して封筒を郵便受けなどに入れています。いきなり封筒が自宅のポストに入っていたという人も少なくないでしょう。これにより、さらなる回答率の低下が懸念されています。

【回答は義務】

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国勢調査には回答の義務があり、実は罰則もあります。例えば、回答を拒否したり、うその回答をしたりした人は50万円以下の罰金と法律にあります。ただ、総務省によりますと、実際に罰則を受けたケースは把握していないということです。

回答が、10月7日の期限までになかった世帯には、調査員が再度訪問して督促します。それでも回答が得られなかった場合には、調査員が近所の人から対象の世帯の人数や性別を聞き取って記入します。住んでいるのは確実なのに詳しく分からない場合は、最小限の「1人」とすることもあります。
未回答の割合は、20年前の調査では1.7%でしたが、だんだん増えていて、前回の調査では13.1%でした。この割合が増えるほど、調査の精度が低下する事につながります。

【インターネット回答のすすめ】

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総務省は、特にインターネット回答をすすめています。▽記入漏れを防ぎ、間違えを修正できますし、▽調査員の負担も減らすことができます。▽行政側も、改めてコンピューターに入力する手間が省けるなど、メリットが多いといいます。
インターネット回答は、前回の調査から導入され、37%が利用しました。総務省は、今回、50%を目標にしていますが、9月28日の時点で、23.2%にとどまっています。新型コロナウイルスへの対応で、国や自治体のデジタル化の遅れが明らかになりましたが、インターネット回答の伸び悩みも無関係ではないように思えます。

国勢調査の結果が発表されるのは、来年6月からです。調査結果は、行政から民間まで、幅広く活用されます。政府は、その意義を国民に丁寧に説明して、精度の高い調査を維持するとともに、これまでの調査方法が今後も通用するのか、検討と対策が急がれると思います。

(権藤 敏範 解説委員)

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