NHK 解説委員室

解説アーカイブス これまでの解説記事

「新型コロナ 広がる検査とその課題」(くらし☆解説)

米原 達生  解説委員

新型コロナウイルスの検査が、いま大きく変わろうとしています。これから冬にインフルエンザと同時に流行する恐れがあることから、その準備が進められているんです。一方で、自分が感染していないかどうか調べる「安心のための検査」も広がりつつあります。広がる検査とその課題について考えます。

k200923_0.jpg

▽検査の現状と課題

今年の春は新型コロナの検査をしたくてもできないという状況に、市民の不安も募りました。しかし、検査の状況は以前よりはずいぶん改善されています。厚生労働省によると1日に可能なPCR検査の件数は厚生労働省によると、最大で6万8000件余り(9月20日現在)、実際に1日に3万件以上の検査が行われた日もあります。背景には、民間会社による検査が増えたことがあります。

k200923_01_2.jpg

ただ、これから冬に向けては例年流行するインフルエンザと新型コロナ、見分けのつきにくい両方を相手にしないといけないということで、検査体制はさらに拡充が必要です。冬の発熱患者はピーク時には全国で一日30万人ともいわれています。新型コロナの感染を否定できない人たちを検査し診療につなげていくシステムを構築する必要があるのです。

k200923_02_0.jpg

今の帰国者・接触者相談センターに電話してから専用の外来で検査・診療となると、多すぎてとても受けきれません。

k200923_02_1.jpg

そこで国は、かかりつけ医などの地域のクリニックに相談して、そこで検査するか、その地域で決めた医療機関に紹介するシステムに切り替える方針を打ち出しています。

k200923_03.jpg

また、15分程度で結果が分かる簡易キット(使用は発症2日目から9日目まで)を1日20万件できるようにしていく方針です。厚生労働省は10月中をめどに体制整備を行うことにしています。

こうしたことができるようにするためには地域のクリニックの協力が欠かせません。

どう、院内感染を防いで、協力できる環境を作れるか。そのポイントのうち2つを挙げます。

k200923_04_1.jpg

一つ目がまず、簡易キットの検体の取り方です。9月23日現在で使用が認められているのは鼻咽頭まで綿棒を突っ込んで採取する検体です。

この方法、患者さんの咳やくしゃみを誘って院内感染を引き起こす恐れがあるといわれてきました。そこで、現在、唾液とか、鼻くうで採取した検体でも検査できないか研究されています。鼻くうの検体については9月中にも判断が出るということなので、インフルエンザの簡易キットも含めてこうした方法が認められれば、クリニックも検査を行いやすくなると思います。

もう一つのポイントは、発熱して受診したい時には、必ずクリニックに電話などで連絡をすることです。発熱患者を診療するクリニックでは感染対策で、感染が疑われる患者と、そうではない患者のエリアをわけたり、診療時間を分ける対応を取ったりします。事前に連絡することで、医療機関も対応が取りやすくなりますから、患者も協力して感染を防いでいくことが大切です。

▽安心のための検査は受けられないの?

感染も珍しくないですし、高齢の親に会う前など、症状がなくても、自分が感染してないか確認したいという人は多いかもしれません。

こうした「安心のための検査」というのは感染拡大を防ぐ効果は低いとされ、基本的に自由診療です。しかし、ビジネス向けの需要が広がっていて、ソフトバンクグループが検査のための会社を作って研究をすすめるなど、検査サービスに参入する企業も出てきています。

横浜市の医療機器輸入会社では、8月から新型コロナウイルスのPCR検査を2週間ごとに受けられるという法人向けのサービスを始めました。1人あたり1月1万4000円ほどで、検査キットを事業所に送って社員に唾液を検体として取ってもらいます。それを回収して自前で導入した機械でPCR検査を行う、というものです。会社ではおよそ60社が契約していると説明しています。業種は観光・建設・交通、芸能関係など多岐にわたっていますが、リモートでの業務が難しい仕事が多いということです。

導入した会社に聞いてみますと、職員に感染者がいないことを定期的に確認したいとか、社員に感染者が出たときに周囲の職員に感染が広がっていないことを念のため確認したいという話をしていました。おおむね、職場の安心を確保したいということがベースにあるようです。

検査を受けたい人にとっては会社がお金を出してくれるのは良いと思いますし、職場の安心を守りたい企業の立場もわかります。ただ、大前提として「症状がある人や感染が疑われる人の検査」が優先されるべきだと思いますし、加えて、こうした無症状の人に「検査を受けさせる」ことについては注意が必要だと指摘する専門家もいます。

国際医療福祉大学の和田耕治教授に聞きました。

k200923_p.png

k200923_06.jpg

まず大切なのは検査の限界を理解すること。感染していても検体がきちんととれていなくて結果が陰性と出る場合もありますし、検査したあとで感染する可能性もあります。それを理解して、3密を避ける、マスクをつける、そして何より体調が悪い場合は外出しないという基本的な感染対策は怠らないことが大切です。

そして、受ける人に検査の必要性や活用方法、そして陽性になった場合のことについて、丁寧に説明して了解を取ることが大事だということです。会社がお金を出すとしても検査結果は原則受けた人のものですから、職員の不利益にならないようにすることが大切です。

新型コロナの感染拡大を防ぎながら、仕事や生活を少しでも普通の状態に戻していきたいという思いは皆同じです。その目的と、一人一人が嫌な気持ちにならない良いバランスを、それぞれの場所で議論しながら見つけていくことが求められています。

(米原 達生 解説委員)

キーワード

関連記事