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「明日からSDGs週間 いちからわかるSDGs」(くらし☆解説)

土屋 敏之  解説委員

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◆明日9月18日からは国連が定めた今年の「SDGs週間」 そもそもSDGsとは?

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 SDGsとは「持続可能な開発目標」の略で、2015年の国連サミットで採択されました。最近は学校の授業で取り上げられることもあって、若い世代ではかなり知られるようになっていますが、全体ではまだ日本での認知度は4人に1人程度とされますので、よくわからないという方が大半ということになります。
 SDGsの内容としては、2030年までに貧困や飢餓の撲滅をはじめ、経済成長や環境保全など17の目標の達成を目指しています。背景には、経済だけを最優先していると、格差の拡大や環境問題などで成長を持続することはできないという考え方があり、その過程で「誰一人取り残さない」ことも掲げています。
 SDGは17も目標が並んでいるため一見わかりにくいのですが、大きく3つのテーマに整理できます。

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 1列目は「人間」の命や権利に関する目標、2列目は「経済」活動、そして3列目は気候変動など「地球」規模の課題に関する目標などです。
 具体的には1~6番は、貧困や飢餓をなくし、医療や教育を誰もが受けられるように、男女平等、水やトイレといった衛生的な生活を実現するという、どれも人間の基本的な権利に関わるものとも言えます。
 それぞれの目標には、複数の指標が設けられていて、例えば、1番の貧困については、「1日1.25ドル未満で暮らす人をゼロにする」などです。
 7~12番の経済に関する目標は、エネルギー供給、雇用と経済成長、産業やインフラ整備、10番は格差の是正、11番は地域の活力や災害に強い街作りなど、12番は生産活動の持続性でゴミ問題なども含みます。
 そして、13番からの地球規模の課題は、順に気候変動、海洋プラスチックなど海の環境保全、森林の生態系や砂漠化防止など・・・といった内容になっています。

◆なぜこうした目標が作られた?

 SDGsができる前、国連は途上国の経済発展などに関する目標(ミレニアム開発目標)を定めていましたが、例えば、途上国の貧困と言っても、気候変動で干ばつが続いて食糧不足になっていたり、女性が教育を受けられないため貧困から抜け出せないなど、様々な要因が絡み合っています。
 先進国にとっても他人事ではなく、(8)経済成長だけを追求すると、(14)海洋プラスチック問題や(13)気候変動が深刻化したり、国内でも(10)所得格差が広がったり、(11)都市への人口集中で地方が衰退してふるさとに住み続けるのが困難になるなど、色々な問題が既に起きていると言えます。
 つまり、17の目標は互いに深く関係しているので、世界が協力し総合的に解決していく必要がある、そこでSDGsが作られたと言えるでしょう。

◆具体的な取り組み方は?

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 自治体の例では、北海道の下川町では林業の衰退で未利用になった木材をバイオマス燃料として活用し、地域の熱供給の半分以上を賄えるようになると共に、発電して売電収入も得て、雇用や過疎化対策にもつなげています。これは(7)エネルギー、(8)雇用と経済成長、(11)住み続けられるまちづくり、(13)気候変動、(15)森林保全、といった複数の目標の同時解決を目指す取組みと言えます。
 SDGsに取り組む企業も急増しています。ある化学メーカーでは、社内での省エネや女性管理職比率の数値目標などを進めると共に、製品の面でもCO2の分離回収や水素の活用など脱炭素技術の開発を進め、SDGsを事業の柱の1つに位置づけています。これは、(5)ジェンダー、(9)技術開発、などにあたります。
 北九州市の商店街では、空き店舗をシェアオフィスに再生したり、飲食店での食品ロス削減を進めるなどして地域活性化につなげていて、(11)住み続けられるまちづくり、を中心にした取り組みとも言えます。

◆世界的に見て日本のSDGsへの取り組みは?

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 6月末に発表された「持続可能な開発レポート」(ドイツのベルテルスマン財団と持続可能な開発方法ネットワーク(SDSN)による)では、日本の達成状況は世界で17位という評価でした。
 個別の目標では、(3)健康・福祉や(9)産業・インフラ、(16)平和、の3項目が4段階のうち一番高い評価を得ています。
 世界で17位というのはまずまずの感じもしますが、実は去年は15位で少しずつ順位が下がっていますし、課題も指摘されています。(5)ジェンダー平等や(13)気候変動対策など5項目は最低評価でした。「ジェンダー平等」が低評価なのは、国会議員の女性比率の低さや男女の賃金格差、「気候変動対策」については、炭素税などの対策が十分導入されず、1人あたりのCO2排出量が依然多いことなどが挙げられています。

◆今年は新型コロナウイルスの影響でSDGsへの取り組みにブレーキ

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 世界的に経済活動が大打撃を受けたこともあり、7月に国連は、「過去20年で初めて、貧困層の人の割合が大幅に増える見通し」だと発表しました。他にも、医療や教育を受けられない人が増え、高齢者や非正規雇用の人たちなど弱い立場の人がより被害を受けるなど格差も拡大し、多岐に渡る悪影響が出ています。
 SDGsの各目標にはそれぞれ達成度を見る指標がありますが、グテーレス事務総長は「達成が一層困難になっている」と危機感を表明しました。

◆今後は何が求められる?

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 グテーレス事務総長は、「新型コロナウイルスからの経済復興は、環境や気候変動に配慮した新たな雇用やビジネスを生み、持続可能な成長につながるものであるべきだ」と世界各国に訴えています。
 こうした中、世界的に注目されているのが「グリーン・リカバリー」あるいは「持続可能な復興」と呼ばれる政策です。これは、単に既存の産業を守り再生するのではなく、再生可能エネルギーなど環境分野や、災害や感染症などに対し強靱な社会に変えていくような分野を重視し、新たな雇用や産業を創出する復興政策を言います。
 EUでは90兆円にのぼる復興基金を「環境」と「デジタル」の分野に集中的に投じる方針ですし、カナダや韓国などでもこうしたグリーン・リカバリーを掲げています。
    
◆日本の復興策は?

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 7月にまとめられた政府の経済財政の基本方針、いわゆる「骨太の方針」でも経済対策はSDGsにも貢献するように、ということが最後に触れられてはいますが、全体としてグリーン・リカバリーの視点は非常に乏しいのが実情です。
 こうした中、国の有識者会議のメンバーが7月末、当時の安倍総理大臣に「新型コロナからの復興は、気候変動を含む新たな災害リスク軽減などのためにもSDGsを軸に経済再生計画を」と求める緊急提言を出しました。
 今年は2030年の目標達成まで10年と言うことで、国連も日本政府も「行動の10年」を掲げてSDGsへの取り組みを加速するとしています。こうしたことを新たな政権でもきちんと継承し持続可能な社会を実現していってほしいと思います。

(土屋 敏之 解説委員)

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