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「再び悪化 夏の消費」(くらし☆解説)

今井 純子  解説委員

緊急事態宣言が解除された後、徐々に回復していた消費ですが、夏に入り再び落ち込んでいるという7月、そして8月前半の統計が、相次いで公表されました。今井解説委員。

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【消費は、どのくらい落ち込んでいるのでしょうか?】
まずは7月の統計、今週公表された家計調査の結果を見てみます。一年前と比べた消費支出の推移ですが、4月、5月の大幅な落ち込みの後、緊急事態宣言、そして、全国への移動制限が解除されたことを受け、6月には、マイナス幅が縮小し、去年の水準に近づいていました。

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それが7月は、-7.6%と、再びマイナス幅が広がりました。7月に入って、新型コロナの感染が全国で再び広がったことや、天候が悪かったことが影響しているとみられています。

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【確かに、日に日に感染が広がる状況を見て、改めて買い物や外食の回数を減らしました】
そうですね。もう一度、警戒感を強めましたよね。目立つのは、サービスの落ち込みが厳しいことです。特に、航空運賃や鉄道運賃への支出は、6月の落ち込みからさらに悪化しています。美術館などの入場料、それから、塾への支出も、夏休みが短くなって夏期講習や夏合宿がなかったことなどから、大幅に悪化しました。

【GoToトラベルキャンペーンの効果はなかったのですか?】
7月22日から、旅行代金を割り引くGoToトラベルキャンペーンが東京発着を除いて始まりました。ただ、感染拡大を受けて、そのころには、飛行機や鉄道を使って遠くに旅行に行くのは控えよう、という動きが急速に強まっていました。一方、外食のお酒代や宿泊料、高速料金。一年前と比べると、大幅に減った状態が続いてはいますが、それでも、6月よりはマイナス幅が改善しています。キャンペーンを利用して、人があまりいない、比較的近い場所に車ででかけて、ホテルや旅館に泊まる。そうした動きを後押しした効果は一定程度あったのではないかと思います。

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さらに、一部ではありますが、消費が好調な分野もありました。モノへの支出ですが、
▼ 冷蔵庫や洗濯機、テレビ、パソコン、自転車への支出は、一年前を上回りました。テーブル・ソファなどの家具も好調でした。

【パソコンは、2.3倍ということですか?】
在宅勤務やオンライン授業が広がったことで、一家に一台どころか、人数分必要になったという声を聞きますよね。

【それにしても値段の高いものが売れているのですね】
国民ひとりあたり現金10万円の一律給付が背景にあるとみられています。勤労者世帯の収入は、6月に16%、7月に9%、増えました。
家で過ごす時間が増えたので、快適に過ごしたい。出かけるときにできるだけ電車に乗りたくない。という思いを、給付金が後押ししたとみられています。

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ただ、感染が拡大していた中、買いものにでかけるのも不安だという方もいますよね。そこで引き続き増えていたのが、ネットショッピングです。(家計消費状況調査)
▼ 同じ7月の統計ですが、ネットショッピングを利用したという世帯は、全体の50%を超えています。前の年と比べて7.5ポイント増えています、支出額も全体で15%増えています。
▼ 支出の内訳をみてみると、家電製品や家具への支出。ネット経由でも大幅に増えているのが見て取れます。

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【7月は、消費全体は落ち込んだ中、ネットを利用する人は増えたということなのですね。次に、もうひとつの統計。8月前半の消費は、どうなのでしょうか?】
それが、さらに、悪化しているのです。
クレジットカードの利用情報をもとに算出した消費の動向を示す指数(JCB/ナウキャスト「JCB消費NOW」)をみると、8月前半はマイナス5.7%。7月後半より、小幅ですが、悪化しています。航空や鉄道、そして居酒屋は、7月後半より、大幅に悪化しています。

【帰省をやめた人も多かったですよね】
はい、感染拡大を受けて、各自治体が独自に、
▼ 飲食店などに営業時間の短縮などを要請したり、
▼ 緊急事態などの宣言を出して、
▼ 県をまたぐ移動の自粛や酒を伴う飲食などへの注意を呼びかけたりする動きが相次いだことも影響しているとみられます。
消費者の買い物などへの意欲を示す「消費者態度指数」という指数も、8月には、4か月ぶりに低下しました。

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【ただ、7月下旬をピークに、徐々に、感染者の数は減ってきています。今後、消費は回復していくのでしょうか?】
消費は、GDPの半分以上を占めていますので、経済を動かすためにも、消費は増えてほしいと期待しているのですが、心配もあります。
まず、高額な消費を後押しした現金給付の恩恵は、今後、消えていきます。加えて、雇用や賃金を取り巻く環境が厳しさを増しているからです。

【大変なご家庭は多いですよね】
はい。まず、雇用ですが、
▼ 新型コロナウイルスの影響で、解雇や雇止めで職を失った、あるいはその見通しの人は、すでに5万2000人を超えています。また、コロナの影響で倒産した企業も、500社に達しました。
▼ 一方、新たな仕事は探しにくくなっています。仕事を求めている人1人に対して、企業から何人の求人があるかを示す有効求人倍率は、全国で1.08倍。求人倍率が1を下回る(つまり、仕事を求めている人分の仕事がない)道や県も14に増えています。

また、仕事があっても、賃金が減っているという方も多くいます。
こちらの統計では、直近の月収が、感染前より10%以上減ったと答えた人が27%に達しました。過去3か月でみて、支出が収入を上回る赤字になっていると答えた人も、29%に達しています。(8月 労働政策研究・研修機構)
さらに悪化していくと、雇用や収入への不安から、節約の動きが強まることになりかねません。

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【どうしたらいいのでしょうか?】
先ほどの統計を見ると、収入が変わっていないという人もいます。感染がいつ再び増えるかわからない中、まずは、そうした人たちが、安心して消費できる環境を整えることが、大事だと思います。例えば、

▼ 先ほどの話にもあったように、ホテルや旅館で、人とできるだけ接触しない。感染リスクを抑えながら、おいしい食事やすばらしい景色といった非日常を味わえる工夫で、近場の人から利用を広げていく。
▼ あるいは、双方向のビデオ会議システムで、やりとりしながらマンションや車を販売するネット販売も、様々な分野に広がっています。
こうした動きを進めることで、コロナの中でも、消費を下支えし、そこで働く人の雇用や収入を支えることにつながります。

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【感染を抑えながら消費を増やすことが大事ですね。】
その通りです。今後は、GoToトラベルの拡大のほか、GoToイートも順次始まる予定です。ただ、移動や会食が増えることで感染が広がると、また、消費が冷え込むことになりかねません。いかに感染を防ぎながら、利用していけるのかが、消費を継続的に増やしていくうえでも、大きなカギを握ると思います。

(今井 純子 解説委員)

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