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「コロナ禍の防災 在宅避難の備えは?」(くらし☆解説)

二宮 徹  解説委員

きょう9月1日は防災の日です。在宅避難の備えについて、二宮徹解説委員。
災害時にどこに避難するか、今は避難所での感染のリスクを心配する人が多いと思います。

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<避難所が足りない>

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4年前の熊本地震での益城町の避難所は、発生から3週間後でも、まさに3密の状況でした。今はコロナ感染拡大を防ぐため、雑魚寝のような避難生活はできません。
一方、今年7月豪雨での熊本県人吉市の避難所はパーティションで仕切られていました。今は、どこの避難所もこうした仕切りなどで感染リスクを減らすことになっています。
ところが、スペースを広くした分、深刻な問題が生じています。同じ面積で見ると、これまでの3分の1程度しか受け入れられないのです。自治体は避難所を増やしたり、体育館以外に教室も使うようにしたりと対応を進めていますが、現状では、大地震など、災害の規模や被害によっては避難所に行っても入れない人が相次ぐと見られます。もともと大地震では避難所が足りないと言われているのに、コロナ対応でさらに足りなくなっているのです。

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このため、在宅避難や車中避難、親せきの家に身を寄せるなどの「分散避難」の重みが増しています。

<在宅避難の条件は?>
このうち、自宅で生活を続ける在宅避難を考えます。

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在宅避難は、浸水や土砂崩れの危険がないなど、安全であることが絶対の条件です。危険な場所や状況にあれば自宅を出て避難してください。地震では、倒壊はもちろん、窓ガラスが割れたり、タンスが倒れたり、割れた食器が散乱したりというような被害そのものを抑えることが大切です。そうして安全を確認したうえで、自宅で過ごせるだけの水や食料、日用品が必要です。

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食べ物は、パスタやそうめんなどの乾麺、ふだんからよく食べているレトルト食品や好きな缶詰がおすすめです。カセットコンロと多めのボンベも必要です。最低3日、大規模災害では、できれば1週間の備蓄が必要とされています。

<ローリングストックとは?>
緊急事態宣言で、あまり外出しない「巣ごもり生活」になり、食料などを多めに買っておくようになった人も多いと思いますが、多めに買い置きする中で、心がけたいのは「ローリングストック」です。

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ふだんから日持ちのする食べ物や飲み物、日用品を多めに買っておき、賞味期限が近いものから食べて、その分を買い足していくというやり方です。こうすることで、あまり気負わずに備蓄しておけます。賞味期限の順に並べておくと食べ忘れを防げます。巣ごもり生活と違って、水道や電気、ガスが使えなくても大丈夫か、気をつけてください。
トイレが使えない場合に備えて、携帯トイレも多めに必要ですね。

<水の備蓄とコロナ対応>
こうした備蓄で一番大事な「水の備蓄」について詳しく考えます。

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農林水産省では、水は調理用を含めて、1人1日およそ3リットル必要としています。これは、家族4人・1週間分だと、2リットル6本入りのケースが7箱にもなります。
全部を台所に置く必要はないので、分散収納やローリングストックを上手に活用するといいでしょう。
さらに、コロナ対応も加えて考えましょう。

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衛生がとても重要なのに、断水すると手洗いやうがいが難しくなります。
そこで、例えば汚れた手はウエットティシュでよく拭いてから、アルコール消毒液をつけることにする。このためにはウエットティシュや消毒液の買い置きが多めに必要です。
また、口をゆすぐ洗浄剤は、歯磨きの水を節約できます。今のように暑い時期は体をふく大きめのウエットティシュも欲しいところです。このように、水が足りない中でのコロナ対策を考えておく必要があります。

<使い捨てマスクの備蓄>

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コロナ対策でマスクはどうでしょうか?最近は使い捨てではなく、洗えるものや手作りのマスクをする人が増えましたが、水がなくてマスクを洗えないことが想定されます。避難所で生活せざるを得ない場合も考えると、使い捨てマスクが毎日必要になります。
在宅避難でも、支援物資の受け取りなどで外に出ることはありますから、使い捨てマスクは意外に使いそうです。
洗えるマスクに変えたので、使い捨てマスクはもういらないかと思っている人も、最近はマスクも買えるようになってきたので、1箱備えておくといいでしょう。

<水の節約>

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水の節約でいうと、料理道具のクッキングシートもおすすめです。例えば、カセットコンロと土鍋で米を炊く際、シートを鍋に敷くとご飯がこびりつかず、鍋を洗う水を節約できます。シートが焦げないように下に少し水を入れるのがコツです。フライパンに敷いても便利です。
このほか、無洗米はコメを研ぐ水を節約できますし、お湯や水を注ぐアルファ米やおかずは、水をたくさん使う湯せんをせずに済みます。

<スマホ充電の備えも大切>
他に、コロナ対応で必要性が増した備えは、スマートフォンの充電です。

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これまで自治体は、避難所を支援物資の配布だけでなく、被災者へのお知らせの掲示や連絡など、情報伝達にも活用してきました。しかし、今は感染を防ぐため、在宅避難の人などが避難所に来なくてもいいように、ホームページやSNSで情報を発信する自治体が増えています。
これらの情報を得るためには、スマホを太陽光や乾電池、手回し発電で充電できると便利です。乾電池などの充電器は、自分や家族のスマホとケーブルが合わないかもしれないので、確認してください。

<日頃の備えを>
在宅避難で必要なものは、農林水産省や各都道府県のホームページなどで確認できます。ただ、在宅避難は自宅が安全であることが大前提です。危険な場合はためらわずに避難してください。
台風シーズンが始まり、大地震もいつ起きるかわかりません。

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避難所に行く場合は、マスク、消毒液やウェットティッシュ、体温計、上履きかスリッパなどを持参して、3密を避けて過ごしてください。上履きやスリッパは床からの感染リスクを減らせます。
そして、自治体は、多くの避難者の受け入れとコロナ対応の両立をしっかりと進めてほしいと思います。

(二宮 徹 解説委員)

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