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「地球帰還近づくはやぶさ2 新たな探査へ」(くらし☆解説)

水野 倫之  解説委員

地球帰還を目指す探査機はやぶさ2について、オーストラリア政府が今月、南部の砂漠地帯への着陸を許可し、12月6日に帰還することが正式に決定。
そしてあらたな探査へ旅立つ計画も明らかに。水野倫之解説委員の解説。

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はやぶさ2は現在地球まで直線距離で5100万キロに近づいている。
機体はすべて正常で、チームでは12月6日未明に地球に帰還できるよう、
来月から軌道の調整作業を行う計画。
帰還場所がオーストラリアなのは平坦で広大な場所が必要だから。
計画では、はやぶさ2は地球に数10万キロまで迫ったところで
小惑星の岩石が入ったカプセルを分離。カプセルは時速4万3000キロで大気圏に突入。最高3000度になるが
カプセルは特殊な材料でできていて内部は守られ、
最後はパラシュートで減速して、着地。
ただどれだけ精密に制御しても距離にして150キロ程の誤差が出るため、
着地点は非常に広大で人口密度が低く、探しやすいように平坦な地形であることが条件で、
今回も初号機と同じオーストラリア南部のウーメラという村の砂漠地帯が選ばれた。

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チームは1年前にオーストラリア政府に着陸許可を申請。
初号機の実績もあることから順調に許可が出るかに思われたが、
新型コロナウイルスの感染拡大が立ちはだかった。
オーストラリアも海外からの入国を原則禁止し、国際線の多くが運休。
広い砂漠地帯でカプセルを探すには大勢の人手が必要で、
初号機では日本から百数十人のスタッフが入って探した。しかし人が多いほど感染拡大につながりかねないわけで、
オーストラリア政府はその点を慎重に検討したとみられる。

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ただはやぶさ2の地球帰還は、学術界はもちろん一般からの期待も高く、
科学的・社会的に価値が高い。
また地球帰還の受け入れは日豪関係をより緊密にし、外交上も価値が高い点が考慮され、
オーストラリア政府は今月、着陸許可を出した。
許可が出たとは言ってもオーストラリアへの入国は
最小限にすることが求められるので
チームでは今回スタッフを70~80人程に減らすことを検討。
今回はやぶさ2は小惑星に2回着陸に成功、岩石を採取できたとみられる。ミッションの最終目的はその岩石を分析して太陽系や生命のルーツを探ること、
人数が少なくなってもカプセルを絶対に探し出して日本に持ち帰らなければ。
そこで今回チームは、6段がまえの対策をとる方針。
カプセルは高度10キロでパラシュートを開き、電波を発しながら着地するので、
まずはその電波を捉える。

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第1段としてアンテナで着地場所を推定。
カプセルが着地したあと、第2段としてヘリコプターを飛ばして上空から電波を捉える。

カプセルからの電波がポイントになるがトラブルで電波が出ない可能性も考えなければ。
そこで目視観測。
カプセルは時速43000キロで大気圏に突入し光を発する。

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今回着地は夜間、
第3段として地上からカメラでこの光跡を撮影し、着地点を推定。
曇った場合に備え、
第4段としてNASAに頼んで航空機で雲の上から光跡を観測する計画。

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そして今回より確実に捜索できるようにするため、さらに2つ対策を追加。
第5弾としてレーダーも配置し、反射波で位置を推定。
最後に第6弾として無人飛行機も飛ばして上空から撮影、カプセルを探す。
このように多くの対策を組み合わせることで確実にカプセルを探し出し、
着地から4日以内に日本に輸送することを目標。

そして回収できたらはやぶさ2の旅、終わりというわけではない。
チームは今後さらに10年かけて別の小天体を目指す
新たな宇宙探査へ旅立つことを決めた。はやぶさ2はカプセルを分離した後、姿勢制御用のエンジンを噴射して地球から離れる。
今のところ2つの小惑星が候補。

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新たに探査機を仕立てて別の天体を調べるには、莫大な費用がかかる。
幸いなことに今回はやぶさ2の機体は健全で、燃料も半分以上残っている。
それに所期の目的は達成しつつある、つまり減価償却は終わっているので、
失敗を恐れずより困難なことにもチャレンジできるということもあり、
チームの総意で第二幕へ向かう事に。

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チームは残された燃料などから行けそうな天体を354個ピックアップし、
その中から10年で到達できる2つの小惑星に目をつけた。
一つは2001AV43。大きさ40mの細長い岩石質の小惑星。
金星の重力を利用して進路を変えて向かうことから金星も観測できるチャンス。
もう一つは1998KY26。大きさ30mで丸い形の小惑星。
今回のリュウグウのように炭素が多く含まれるとみられる。
いずれも10分で1回転と、かなり高速で自転。

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こうした小さい小惑星は地上からの観測が難しく詳しいことはほとんどわかっていない。高速回転で遠心力が強く働くことから、
たくさんの岩石が集まって出てきたリュウグウとは構造が異なるのではないかとも推測され、そのできかたなど世界初の新たな発見が期待でき、
科学的な価値が十分あると判断された。
またこうした大きさ数十mの小惑星は、
百年から数百年に1回の確率で地球に衝突するおそれも。実際2013年には20mの小惑星がロシアに落下、1500人がけがするなど被害。こうした衝突のおそれのある小惑星の素性が明らかにできれば、
防御方法を検討する上でも役に立つかも。
チームは来月中にどちらに行くかを決める方針。
新たな探査に期待が高まるが、それが実現できるようコロナに負けずまずは12月のカプセルの帰還を成功させてほしい。

(水野 倫之 解説委員)

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