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「『オーナー商法』 法律で原則禁止へ」(くらし☆解説)

今井 純子  解説委員

深刻な被害が繰り返されてきた、いわゆる「オーナー商法」について、原則禁止とする方針が打ち出されました。今井解説委員。

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【オーナー商法。どのような商法ですか?】
例えばこちら。「ジャパンライフ」という会社。
「年に6%の高い配当が得られる」「いつでも解約できる」と勧誘して、磁気を埋め込んだ治療器(ベスト)を消費者に買わせ、オーナーになってもらう。と同時に、それを消費者に引き渡すのではなく、会社が預かって、別の人に貸し出して、その利益の中から、オーナーに配当を払うという触れ込みの会社でした。ところが、2018年に経営が破綻して、おカネが戻ってこない被害者がおよそ7000人にのぼりました。
オーナー商法の被害。これだけではありません。

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【ほかにもあるのですか?】
はい。
▼ 1980年代に社会問題になった豊田商事の事件。「金の現物を買って、会社に預ければ、高い利子を払う」と言われて、2万9000人もの被害者がでました。これがオーナー商法の先駆けです。この後も、
▼ IP電話サービスの中継局や繁殖用の牛、干し柿など、様々なモノで、同じようなオーナー商法の被害が繰り返されてきました。
いずれも最後には経営が破綻して、消費者におカネは、ほとんど戻ってきませんでした。
このオーナー商法の被害。一人当たりの被害額が、数百万円から数千万円と、消費者被害の中でも、きわめて大きいことが特徴なのです

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【なぜ、大きな被害がでるのですか?】
なかなか「被害に気付かれない手口」をとっているからです。
消費者は、まず、「あなたが買って預けたものを運用することで、銀行より高い配当や金利が得られますよ」という説明を受けます。疑いを持って、少ない額で始める人も多いのですが、最初のうちは、配当や利子がきちんと払い込まれます。そこで、安心して、契約額を増やしていきます。

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ところが、実態を見ると、消費者が買ったはずの商品は、そもそも存在しなかったり、オーナーの数に対して、ごく一部だったりする。つまり、レンタルなどの事業の実態は、ほとんどありません。でも、消費者からみると、自分が買ったものが本当に存在するのか、どれが自分のものなのか、確認できる方法もないわけです。

【配当や利子は払っていたのですよね】
新しいオーナーが増えている間は、その新しいオーナーが、いわゆる「商品を買った代金」を払います。それを、元からいるオーナーの配当や利子にあてていたのです。解約したいという申し出があれば、それにも対応します。ですから、オーナーは、初めのうちは、だまされていることに気付きません。

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でも、自転車操業ですから、元からいるオーナーが増えて、新しいオーナーが減ったり、いなくなったりする、配当などの支払いが滞ります。その段階で、オーナーはだまされていたことに気づきますが、その時には、金庫はからっぽで、経営は破たん。それまでに事業者が儲けたおカネは、どこかにいったのかわからず、被害のおカネが戻ってこないケースがほとんどです。

【発覚が遅れるから、被害額が膨れ上がるのですね】
そうです。そして、被害者の多くは、お年寄りです。「いつでも解約する」と言われ、「モノを買って預けるだけ」「安全だ」と信じている。友人や知り合いに誘われて始めたという人も少なからずいます。年金収入だけだと不安だという、お年寄りの心理につけこみ、老後のために貯えていたおカネを根こそぎ狙う、本当に悪質な商法です。

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【規制はないのですか?】
豊田商事の事件の後、「預託法」という法律ができ、その後も改正されてきました。その中では、
▼ 客にウソをつくなどして強引に勧誘することを禁止することや
▼ 国が業務停止命令などの処分を出せることが盛り込まれました。
ただ、業務停止命令を出しても、勧誘の方法や配当の名目など、少しやり方を変えて事業を続ける事業者もいます。

【商品が存在しないのに売っている。それは、規制されていないのですか?】
それは、客にウソをついていることになります。ただ、先ほども言ったように、商品がないことは、なかなかわからない。最終的に、警察の捜査が入ったケースも多くありますが、立件するのに時間がかかり、その間に被害が広がってしまっているのです。

【これまでの規制では効果はなかったということですね】
はい。このため、有識者や消費者の代表でつくる国の消費者委員会、そして、日弁連などが相次いで、一段の規制の強化を求めていました。

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その結果、先月、対策を検討してきた消費者庁の検討委員会が、商品を販売した上で、それを預かり運用する形の「オーナー商法」の取引について、原則禁止とする方針を盛り込んだ報告書の骨子案をまとめました。違反した場合には、罰則を設けることや、消費者が契約を無効にできることも盛り込んでいます。今月中に、最終的な報告書をまとめ、消費者庁が来年の通常国会にも法律の改正案を提出する方向です。

【禁止ですか。厳しい方針を打ち出したのですね?】
これまでの悪質な手口を分析した結果、ほぼすべてが「消費者に財産被害を及ぼす反社会性のある取引」で「本質的に詐欺的な性質のある取引だ」と判断したためです。

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【ただ、「原則」とありますね?】
株式などの金融商品を買って、事業者に預けて運用してもらったり、賃貸アパートを買って事業者に運営を任せたりする取引は、似たような仕組みですが、別の法律でルールが定められていますので、対象外。だから、「原則」です。
ですが、「対象外」を除き、消費者庁が把握している、およそ40のオーナー商法については、今の販売方法のままでは法律ができた後は禁止となる可能性があるとしています。

【これで被害は防げるのでしょうか?】
消費生活センターなど相談の現場からは、
これまでは、「こうした事業者から勧誘を受けたけれど、大丈夫か?」という相談に対して、「違法」だとは言えず、せいぜい、過去のトラブルを説明することしかできなかった。このため、被害の拡大を食い止めることができなかった。
それが、今後は「刑事罰をもって禁止されている違法な取引だ」と言えるので、被害を防ぐことにつながるのではないか、と話しています。

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ただ、法律ができても、施行されるのは少し先になります。全国の消費生活センターには、最近でも、オーナー商法ではないかと疑われる相談や問い合わせが寄せられているということですので、注意は必要です。

【どのような商品ですか?】
例えば、ゲームなどのアプリが入ったカード型USBメモリ、海外の果物などの樹、ヘリコプターなど、様々な商品があります。困ったら、早めに消費生活センターに相談をしていただきたいと思います。全国共通の電話番号188から、身近な窓口につながる仕組みになっています。

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そもそもリスクなしで確実に高い配当や利子が得られるという、もうけ話は、世の中にはほとんどありません。

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まずは疑うこと。手を出さないことがなにより大事だと思います。

(今井 純子 解説委員)

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