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「甲子園高校野球交流試合 withコロナの風景は」(くらし☆解説)

小澤 正修  解説委員

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、高校野球はことし、春夏とも甲子園が中止となりました。その救済策のひとつとして、春のセンバツ出場を決めていたチームが、甲子園球場でプレーする「交流試合」が8月10日に始まります。感染予防対策のもと行われる試合は、いつもの甲子園とは違った風景での実施となりそうです。小澤正修解説委員です。

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【交流試合ってどんな試合なの?】

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春のセンバツの、いわば代替大会のような位置づけとなる試合です。
交流試合には、センバツに出場を決めていた32校が招待され、今月10日から17日まで、甲子園球場で行われます。感染拡大の影響で春、夏の甲子園とも中止、例年なら公開競技として高校野球が行われる国体も、大会自体が延期されましたから、ことし、3年生が出場できる全国大会は、ひとつも行われない状態でした。なので、日本高校野球連盟は6月、緊急事態宣言が解除されたあとに、春のセンバツへの出場が決まっていたチームへの救済策として、交流試合の実施を決めました。私も野球をやっていましたが、今自分が高校生だったら、小学生の頃から憧れていた舞台に立つ権利をつかんだ、その寸前でセンバツが中止、気持ちを切り替えて目指した夏の甲子園も中止という状況には、やり場のない、もやもや感を抱えたまま、野球部を引退することになったと思いますので、交流試合の実施は、球児にとって本当にうれしいことだと思います。しかし、ここにきて感染が再び拡大してきていますので、運営はいつもの甲子園とはかなり違った形になりそうです。

【具体的にはなにが違うのか】

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まずいつものようにトーナメントで優勝を決めることはせず、各チームが甲子園で試合をするのは1試合のみとなります。さらに甲子園練習や、全チームがそろっての開会式も行われません。通常なら甲子園での大会はおよそ2週間かかりますが、予備日を除けば6日間となり、日程を大幅に短縮しました。試合でも、延長は10回からタイブレークという、ノーアウト1塁2塁の状態で攻撃を開始する制度をとりいれ、得点を入りやすくして早めに決着がつくようにします。一方で、通常ベンチ入りの選手の数は18人ですが、1人でも多くの球児に機会を与えたいと、今回は20人まで認められることになりました。

【球場の中での制限は?】

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試合中、マウンドに集合する際にはグラブを口に当てて会話することや、素手でのハイタッチを避けること、またボールを触った手でなるべく目や鼻、口を触らないことが求められています。またスタンドでも、応援できるのは野球部員のほか、部員1人につき5人以内の保護者など制限があり、ブラスバンドも禁止されましたので、打席や守備についている選手にとって、雰囲気は例年とだいぶ違う感じがするのではないかと思います。

【あのシーンはどうなる?】
いつもなら試合と試合の合間に、敗れた選手たちがベンチ前で甲子園の土を持ち帰ろうとスパイクの袋などに入れるシーンが見られますが、今回は選手を完全に入れ替えてからベンチなどの消毒をすることや時間短縮などもあって、土を持ち帰るのは遠慮してもらうことになりました。甲子園の土は、主催者側から別途、選手に届けられるということです。選手にとっては甲子園の雰囲気を完全な形で感じることはできないかもしれません。ただそれでも、甲子園でのプレーすることが小学生の頃からの憧れだったという球児も多いと思いますし、いったんあきらめかけた夢の舞台で野球ができたという経験こそが、甲子園の土以上の、代えがたい思い出になるのではないかと思います。

【球場の外での対策は】

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高野連では対策のガイドラインを各校に周知し、感染予防対策の徹底に努めるとしています。いわゆる「3密」を避ける、手洗い・うがいの励行、定期的な検温などを基本原則とした上で、地元からの関西への移動については、なるべく貸し切りのバスを利用してもらい、公共交通機関を使う場合には、空港や駅から宿舎までは専用のバスが用意される予定です。宿泊は最大2泊まで。甲子園に近い学校については日帰りするよう求めています。宿舎はなるべくシングルルームの利用とし、大浴場の利用を控え、食事も極力ビュッフェスタイルではなく、個別の配膳とすることを求めています。

【甲子園前の普段の生活も大切に】

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甲子園に移動するまでに、感染者を出さないことが大切になります。出場する32校の中には7月、学校関係者に感染が確認され、この夏の県独自の大会への出場を辞退したケースもありました。両チームとも野球部の関係者に感染者はおらず、交流試合には出場する予定です。今回の甲子園での交流試合は各チームが1試合ずつしか行いませんので、急に出場辞退というチームが出た場合、その学校にとって残念なことになるだけではなく、相手のチームにも、試合が組めなくなるという影響が出てしまいます。不戦勝となっても球児にとって、特にことしは、勝ち負けより、甲子園でプレーしたいという気持ちが強いと思いますから、高野連、各出場校ともに、感染予防には神経をとがらせているのです。

【出場できないチームが出たらどうなる】

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代わりに補欠校が出場することになります。補欠校というのはなんらかの理由で出場できなくなったチームが出た時に、代わりに出場する学校のことで、センバツでは通常、出場校を決めると同時に選考委員会で決まります。補欠校も同じように去年秋の公式戦の成績などをもとに、地区ごとに決められていて、ことし春のセンバツでは20校が補欠校となっていました。出場を辞退するチームが出た場合は、この中から順次、出場チームが決まることになっています。どんなに対策をとっても感染のリスクは完全に排除はできませんので、補欠校には万が一の可能性について連絡はしてあるということですが、高野連の関係者は「最後まですべてのチームがプレーできるよう、祈るような気持ちだ」と話していました。

【精一杯のプレーを!】
今回招待された32校は、1試合だけとはいえ、甲子園でプレーできることになりました。勝っても負けてもこれが最後の甲子園での試合、という意味で言えば、決勝戦と同じだと考えることもできますので、高校野球生活の節目となるよう、精一杯のプレーをして欲しいと思います。今後、感染拡大の状況にもよりますが、高校野球だけでなく、高校総体が中止となった陸上やフェンシングでも代替大会の開催が予定されています。今回の交流試合は、ほかの競技の代替大会開催のためにも、すべてのチームが感染者を出さずに予定通りプレーし、無事に試合を終えることがなにより大切ではないかと思います。

(小澤 正修 解説委員)

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