NHK 解説委員室

解説アーカイブス これまでの解説記事

「過払い金流用!? 法律事務所破綻 ホットライン開設」(くらし☆解説)

今井 純子  解説委員

6月に、東京の弁護士法人「東京ミネルヴァ法律事務所」が経営破綻しました。その影響と被害者救済の動きについて、今井解説委員に聞きます。

k200804_01.jpg

【法律事務所の破綻。ニュースで聞いて驚きました】
破綻した東京ミネルヴァ法律事務所は、「返済中の方は借金や返済額が減るだけでなく、過払い金が戻る可能性もあります」といったテレビコマーシャルを展開して、全国で無料相談会を開き、借金の返済に苦しんでいる依頼人を集めていました。

k200804_003.jpg

しかし、6月に、破産手続きが開始されました。負債総額は、およそ51億円。弁護士法人の倒産としては、過去最大だということです。

【過去最大の倒産ですか】
そうです。そして、今回、大きな問題になっているのが、負債のうち31億円が、本来は、依頼人のおカネ。依頼人に返すはずのおカネが、不正に流用され、返せなくなっている疑いがあるということなのです。

k200804_02.jpg

【依頼人のおカネが不正に流用された。どういうことですか?】
そのおカネ。多くが「過払い金」だということですが、どういうものかというと・・・
以前は、多くの消費者金融が、「これより高い金利で貸すと刑罰の対象になる」という「29.2%」の上限金利ぎりぎりでおカネを貸していました。ですが、2010年に法律が改正されたことなどから、民事上の上限金利20%を上回る金利で借りていた分は、そもそも無効。払わなくてもよかったおカネだったということが明確になり、その部分=「過払い金」を過去に遡って取り戻す動きが広がりました。

【20%を超える金利の部分が過払い金。過去に遡って取り戻すことができるのですか?】
はい。実際、法律事務所などに依頼をして、過払い金を取り戻した人も数多くいます。

k200804_05.jpg

東京ミネルヴァ法律事務所は、この過払い金の返還請求を多く手掛けてきましたが、消費者金融側から取り戻した過払い金を、依頼人に渡さず使ってしまった疑いがあるのです。

【使ってしまったのですか?】
本来、そうした、依頼人のおカネは、弁護士法人の経費とは別の口座で管理するよう日弁連の規程で定められているのですが、東京ミネルヴァ法律事務所は、経費の支払いがかさんだため、依頼人のおカネを経費として、使ってしまったというのです。事務所の代表の川島浩弁護士は、NHKの取材に対して、流用していたことを認めています。

【経費と言いますが、何に使ったのですか?】
広告会社などの費用に使ったというのです。川島弁護士は、NHKに対して、「客を集めるために取引をしていた広告会社が実質的に事務所の業務をすべて管理していた。広告費などとして法外な金額を請求されても支払わざるを得なかった」と説明しています。これに対して、広告会社側は、「事務所を実質的に支配していたという事実は一切ない」と反論しています。

【それにしても、弁護士事務所が、依頼人のおカネを使ってしまうのは、ひどいですね】
その通りです。今回の経緯については、まだ、わからない点が多くあります。ただ、依頼人の中には、生活が厳しい中、おカネが戻ってくるかもしれないと言われ、すがるような思いで、弁護士に依頼をした人もいます。それなのに、戻ってきたおカネを、事務所の経費に使っていたというのでは、信頼を裏切る行為。借金に苦しんでいる人を食い物にしていたと言われても仕方ありません。ずさんな経営をしていた責任は免れないと思います。
所属している第一東京弁護士会は、事務所代表の川島弁護士などについて、弁護士法に基づいた懲戒処分を検討していますが、真相を解明して、きちんと処分をしてほしいと思います。

k200804_11.jpg

【依頼をしていた人たちのおカネは戻ってこないのですか?】
最終的に、破産管財人が、法律事務所に残っている資産の中から、過払い金などの割合に応じて、一人一人に「配当」することになります。が、全額は戻ってこない可能性もあるということです。
被害者は、少なくとも6000人とみられています。中には、そもそも、消費者金融との交渉がどうなっているのか。過払い金が戻ってきているのか、わからないという方もいます。そこで、被害の救済をはかるため、長年、多重債務問題などの消費者問題に取り組んできた専門の弁護士が集まって、全国弁護団を立ち上げ、今月、電話で相談に応じることになりました。電話番号は全国、同じ番号です。

【0570-056-560ですね。日にちが決まっているのですね】
はい。先週の週末に続いて、今後、8月8日(土)、9日(日)、15日(土)、22日(土)、29日(土)でも予定しています。時間は、いずれも10時から16時まで。電話をすると、身近な弁護士の事務所につながる仕組みです。
また、弁護団のホームページも開設され、そこから相談の申し込みをすることもできます。申し込みをすると、弁護士から連絡が入る仕組みです。

https://www.tkyminerva-dmg.net

k200804_13.jpg

先週末には160件あまりの相談がありました。

【どのような相談があったのですか?】
例えば
▼法律事務所から、「過払い金が戻ってくるので、まもなくあなたの口座に振り込みます」という連絡を受けた。しかし、振り込みがないまま今回の事態となり、消費者金融側に問い合わせをしたら、とっくに、法律事務所に支払った、という話だった。本当なのかもわからないし、どうしたらいいか。といった相談の他、

k200804_14.jpg

▼過払い金を返してもらっても、一部、借金が残り、法律事務所を通じて返済をしていた。そのために、毎月一定額を法律事務所に預けていたが、本当に消費者金融側に返済されていたのか心配だ、といった相談もあったということです。

k200804_15.jpg

【相談の後、弁護団は何をしてくれるのですか?】
法律事務所から返してもらうべきおカネがあるという場合、
▼ 配当を受けるためには、最終的に、破産管財人に、おカネを返してもらう権利があるという届出をする必要がありますので、そのアドバイスをしたり、依頼があれば弁護団が届出をしたりする。
▼ また、自分の依頼がどうなっているのか、わからない。という場合、希望があれば、消費者金融への調査や過払い金返還の交渉をするために、弁護士を紹介するとしています。

【その場合、新たに費用がかかるのですか?】
改めて弁護士に依頼する場合、費用はかかります。ただ、弁護団では、東京ミネルヴァ法律事務所にすでに費用を払っていることを配慮するよう、一定の目安を設けるとしています。さらに、弁護団は、
▼ 先ほど触れた広告会社がどのように関与していたのかなど、今回の事態に至った背景を調べて、破産管財人を通じて、被害にあった人たちができるだけ多くの配当を得られるよう取り組むほか、
▼ 刑事告発も検討する。
▼ そして、今後、弁護士事務所による同じような被害が起きないよう、再発防止策を提言することも検討するとしています。

k200804_17.jpg

【こういうことがあると、何かあった場合、どうやって弁護士を探していいかわからなくなりますよね】
弁護士会などでは、まずは、住んでいる地域の弁護士会の法律相談センターに相談するという方法があるとしています。ただ、今回のことは、消費者からすると、弁護士そのものへの信頼を根底から覆されたような思いです。一方、真摯に取り組んでいる弁護士も大勢います。全体の信頼を回復するためにも、弁護士界をあげて、真相の解明、責任の追及、そして、再発防止に取り組んでほしいと思います。

(今井 純子 解説委員)

キーワード

関連記事