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「どう使う? 何に気をつける? Go To トラベル 」(くらし☆解説) 

神子田 章博  解説委員

GO TO トラベルキャンペーンが始まってきのうで一週間がたちました。東京都の発着が除外される異例の形でのスタートとなった政策について。経済担当の神子田解説委員に聞きます。

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Q 神子田さん、開始して一週間たちましたが、まだまだわかりにくいという声を聴きますね?

A はい。このキャンペーンは、新型コロナウイルスの影響で苦境に陥った観光産業を支援するためのものです。その仕組みについておさらいします。

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もともとは、一泊あたり2万円を上限に、国内旅行の旅費の総額の35%相当の宿泊費が割り引かれ、15%相当の飲食やお土産の購入に使えるクーポン券がもらえるというものでした。例えば4万円の旅行だと宿泊費14000円が割引され、6000円分の食事や土産購入につかえるクーポンがもらえるというものでした。しかし今回このクーポン券の準備が間に合わず9月以降から適用となり、旅費の割引だけのスタートとなりました。

Q どう申し込んだらいいんですか?

A キャンペーンに登録された旅行会社によるツアーや、宿泊施設に予約を、ネットや代理店の窓口などで申し込みますと、あらかじめ割引分を反映させた料金で予約ができるようになりました。登録された宿泊事業者と旅行事業者の数は27日の時点で12500社あまりにのぼっています。

Q この間、番組で取り上げた時は、8月から始まるというお話でしたが、感染が拡大しているいま、なぜ前倒しして始めることになったんですか?

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A 背景には、観光業界の苦境があります。
国土交通省の調査では来月の予約の状況が去年に比べて70%以上も落ち込んでいるという企業が、宿泊業界では49%、貸し切りバスにいたっては、77%にのぼっています。

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こうした中で、観光業界からは、このままでは経営がもたず倒産してしまう。なんとか夏休み前に対策をとってほしいという声が強まり、キャンペーンの前倒しが決まったのです。
でもこのキャンペーン、もともと閣議決定で、感染拡大が収束したあと行うとされていましたから、感染が再び拡大する時期になぜ、という疑問がわきます。政府としては、ウイルス感染の収束に見通しが立たない中で、経済活動を止めたままにしておけない。感染防止と両立する形で進めないといけない。そこでキャンペーン自体は始めるけれども、もっとも感染が急激に拡大している東京都の発着をのぞいて始めることにしたということです。

Q その東京の発着をのぞく、というのもわかりにくいんですが?

A 都内の観光地や飲食店などが行程の中に組み込まれているツアーや、都内のホテルや旅館などに宿泊する旅行はキャンペーンの対象外ということです。

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例えば、神奈川県のひとが東京都内の羽田空港を利用して北海道に行くのはOK、あるいは福岡県のひとが羽田空港を利用して、日光にいくのも、東京は目的地ではなく経由地ですので、補助の対象となります。

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しかし、このツアーの途中に墨田区にあるスカイツリーに立ち寄ると、東京都内に目的地があるということで、補助の対象となりません。利用者が東京のひとかどうかは、旅行を申し込む際と、宿泊施設にチェックインする際に、運転免許証など住所が証明できる書類で確認するとしています。

Q ただ、いま東京以外でも急激に感染が増えていますし、東京だけ除外でいいんでしょうか?

A 政府は、東京以外でも感染が急速に拡大した道府県があれば、新たに対象除外とすることもありうるとしているので、行きたいと考えている旅先の感染の状況には注意が必要です。
 感染の心配について政府は、感染防止にむけた対策を徹底するとしています。

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宿泊施設では、チェックインの際に検温を行う。浴場などの利用については、人数の制限をかけるなど三密対策を徹底する、共用スペースの消毒や換気を行うことを求め、宿泊事業者にとってはこうした対策の徹底がキャンペーン参加登録の条件だとしています。

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また旅行客に対しては、先日この時間でもご紹介した感染防止エチケット。旅先でもマスク着用でおしゃべり控えめ、観光スポットでは混雑を避けるなど密を避けるよう求めています。

Q 団体旅行はどうですか?

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A 団体旅行だから対象外ということはないのですが、感染しても症状がでず、感染を広めることが懸念される若者や、感染すると重症化するリスクの高い高齢者の団体旅行は、控えることが望ましいと呼びかけています。そして、団体旅行を行うケースでも、満員のバスで移動、大人数での雑魚寝、大人数での宴会などは避けるように訴えています。

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そして個人旅行・団体旅行を問わず、感染防止対策を徹底していなかった場合には、事後的にでも、補助の対象外となる、つまり割引分の返金を求める可能性があるとしています。

Q ツアーを申し込む私たちも、感染防止がきちんととられているかどうか、確認する必要がありそうですね

A そうですね。そもそも感染防止がとられていないツアーに参加すれば、感染のリスクが高まるわけですから、ツアーを催行する旅行会社にも、良心にもとづいて感染対策しっかりやってもらいたいと思います。

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 また団体旅行の場合、申し込み代表者が東京以外のひとでも、グループの中に東京の人がいたら、その人は補助が受けられないので注意が必要です。

Q それにしてもこんな状況でキャンペーンをやって経済効果はあがるんでしょうか?

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A 経済効果という面では、やはり、全国1の人口を抱える東京都のひとが利用できなくなったのが大きいです。東京近県にも、海水浴場や温泉といった様々な観光地がありますが、旅行客のうち多くを占めるのが東京からの客です。第一生命経済研究所の永濱利廣主席エコノミトは、当初このキャンペーンが国内需要を1兆円押し上げるとしていましたが、東京が除外されたことで、6000億円程度にとどまると試算しています。

Q それと、東京の観光業の方、東京の人が恩恵は受けられないのは不公平では?

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A  そうですよね。政府は、GO TO トラベルの予算を東京都、大阪府など全国を10の地域に割り振り、東京の観光業でも、感染が収まった後に恩恵を受けられるようにするとしています。一方、東京の人が使えないことについては、このキャンペーンはもともと、各地の観光産業のために行うものだというのが政府の見解です。

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しかし都民からは、地方に旅行すれば感染を広げてしまうと理解を示す声がある一方で、同じように税金を払っているのに、さらにいまコロナで苦しい思いをしているのは同じなのに、東京の人だけ恩恵にあずかれないのは不公平だという声も上がっています。
 全国で感染拡大が続く中で、本来であれば、感染が比較的抑えられている地域はどこかを見極めて、そうした地域同士の旅行からキャンペーンの対象として始め、徐々に広げていくという制度設計が必要だったのではないでしょうか。
 重要なのは、経済活動の再開をいそぐあまり感染防止の意識をゆるめてはならないということだと思います。
 私たちも、旅行をすることで感染が広がらないように気をつけなければなりませんが、そもそも私たちが安心して旅行に行けるような環境となるよう、政府や各自治体が連携して感染防止に向けた有効な対策をとってもらいたいと思います。

(神子田 章博 解説委員)

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