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「なぜ増加?ネットバンキング被害」(くらし☆解説)

三輪 誠司  解説委員

インターネットを使ってお金を振り込んだりできるネットバンキングを悪用した金銭被害が、過去最悪に迫る勢いで増加しています。増加の背景と、被害にあわないための対策についてお伝えします。

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これは6月、金融庁が発表した被害件数のグラフです。ネットバンキングを悪用した金銭被害は、年々減っていましたが、令和元年度は被害が拡大してしまいました。件数は1866件と、前の年度の4.7倍。過去最悪に迫る数字です。被害総額は24億900万円でした。平均すると1件あたり、129万円となっています。

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ネットバンキングは、インターネットに接続したパソコンやスマートフォンを使い、IDとパスワードを入力して利用します。1日当たりの利用限度額が高額なサービスもあり、住宅修理の代金振り込みなどにも使えます。

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以前は、このサービスを悪用して金を奪う手口は、コンピューターウイルスを使うものでした。このウイルスは、パソコンがネットバンキングにアクセスすると動き出し、画面には何も出てきませんが、口座の金を勝手に別の口座に移し替えてしまいます。

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これに対して金融機関は、ウイルス対策ソフトを無料で配布するなどしました。これによって、いったん被害は沈静化していたわけです。

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しかし犯人側は、利用者、つまり「人間」をだます手口に切り替えました。具体的には、スマートフォンに偽のショートメッセージを送ります。「口座への不正なアクセスを検知しました。至急確認をお願いします」などと書かれていまして、詳しくはここにと、ホームページのアドレスが書かれています。

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開くと、金融機関とそっくりの偽のホームページが表示され、パスワードなどを入力するよう促します。利用者が入力してしまうと、情報が犯人側に送信されます。犯人はそれを利用してログインし、金を自分が管理する口座に移し替えるというものです。中には、口座のお金をすべて奪われてしまい、公共料金などの引き落としができないという連絡を受けて、初めて気がついたという人もいます。

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人間の心理をついた手口なので技術的な対策は難しく、利用者が気をつけるしかありません。そのための対策をいくつかお伝えします。大原則があります。ショートメッセージに書かれたアドレスを開かない。金融機関が、ショートメッセージのような簡易な仕組みで、パスワードなどの入力を促すことはありません。これを覚えておいてください。届いても、放置しておいていいです。よほど気になるならば、公式ホームページを改めてネット検索し、そのページを開いて確認してください。

ただ、偽物のメッセージは、緊急性を装っていますので、焦って偽のページを開いてしまう危険性があります。それを想定した事前の対策についても紹介します。

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(1)二段階認証を設定しておく。ネットバンキングにログインすると、事前に登録していた自分の携帯電話に「ログインしましたか」という通知と、第二暗証番号がショートメッセージで届きます。その番号をネットバンキングのページに入力しないと実際には利用できません。犯人が勝手にログインしても被害を防ぐことができます。金銭を扱うネットサービスでは、標準的なセキュリティー対策となっています。ただ、第二暗証番号をだまし取る手口も去年の秋から出ていますので、万全とは言い切れない状態です。

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(2)国際電話の利用を停止する。偽のショートメッセージのほとんどが海外の業者を通じて一斉送信されています。この際、電話回線が使われるので、国際電話の利用をとめれば、届かなくなります。しかし、これをすると、ほぼすべてのネットサービスで、先ほどの二段階認証が使えなくなりますので、どちらかを選ぶことになります。二段階認証も、海外の業者に依頼して、国際電話を通じて送っているからです。

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(3)ネットバンキングの利用限度額を下げておく。被害にあっても取られるお金を減らすことが出来ます。しかし、多額の振込みができなくなるというデメリットもあります。

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どれも一長一短なので、対策の大原則は「ショートメッセージのアドレスをクリックしない」ということになります。それ以外は、あくまでも補助的な対策と思ってください。

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お金を奪われてしまった場合、預貯金者保護法という法律に準ずる形で、原則補償されるようになっています。しかし金融庁によると、昨年度の被害のうち、245件は補償されませんでした。それには例外があるからです。

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まず、被害から30日を過ぎたものは補償されません。このため、被害にあったことに気づかず、放置していると補償されなくなってしまいます。こまめに残高照会をして、お金が減っていないかを調べてください。また、顧客に重大な過失がある場合などは、補償されません。何が重過失かというのは、金融機関が判断するので一概には言えませんが、金融機関が繰り返し注意喚起している手口については、だまされないように十分気を付けておいたほうがいいと思います。

そのためにも、自分が利用している金融機関のホームページの注意喚起を事前に確認するようにしましょう。

(三輪 誠司 解説委員)

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