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「大火球の隕石 発見の意義は」(くらし☆解説)

水野 倫之  解説委員

南の空を捉えていた東京渋谷のNHKのカメラを今月2日午前2時半過ぎ、明るい光の球・火球が夜空を大きく横切った。
そのもととなった隕石が千葉県習志野市で見つかり、習志野隕石と命名される見通しとなった。この発見、アマチュア天文家たちの観測が威力を発揮。
水野倫之解説委員の解説。

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火球は小惑星のかけらなどが大気圏に突入して光る流れ星の中でも、特に明るく光る現象。かけらが大きいと衝撃波が伝わることがあり、「ドーン」という爆発音を聞いたという人が多い。
この火球、各地で目撃・撮影され、神奈川県平塚市で撮影された映像では瞬間的に満月よりも明るく輝いていることがわかる。

そのもととなった隕石が見つかった。
習志野市のマンション住民が夜中に「ガーン」という音を聞いて、朝、玄関前の廊下に一つめを、2日後に中庭で2個目を見つけた。
隕石は2つで6㎝、落下後に2つに割れたとみられる。
黒く溶けたようなあとや、一部錆びていること、さらに国立科学博物館が分析した結果、宇宙空間にあったことを示す放射線も観測されたことから隕石と断定され、詳しい成分分析が進められている。
まだほかにも落下している可能性もあり、研究者たちが探しているが科学博物館では「習志野隕石」として国際学会に登録する手続き。

なぜあの大火球のもとだということまでわかったのかといえば今回アマチュア天文家を中心に370人で作る観測のネットワークが威力を発揮した。

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グループのメンバーが、上空の発光現象を捉えようと自宅などに何台もカメラを設置して
1日中、空を撮影し続けていた。

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そして今回複数のカメラが撮影に成功、分析の結果、火球は神奈川県の上空85キロで光り始め、東京の上空を通過して千葉県沖の上空23キロで発光し終わっていたことがわかった。
グループはその軌跡から元となった隕石は習志野市を含む半径5キロの赤い範囲内に落下している可能性が高いと発表していた。
落下予想地点と見つかった場所が一致したことから火球の元の隕石だとわかった。
火球のもととなった隕石が発見されたのは日本ではこれがはじめて。
アマチュア天文家たちはどうやって観測を行っているのか、グループのメンバーの一人、神奈川県の平塚市博物館の学芸員でアマチュア天文家の藤井大地さんを訪ねた。
今回の火球の映像を捉えた一人で、自宅を案内してもらうと…。
8台の小型カメラが、空を向けて設置。
いずれも上空を24時間撮影し続けていて、データはパソコンに。
専用のソフトが流れ星など発光現象を認識して映像を切り出すことができ、藤井さんは毎日、数時間かけて映像をチェック。
今回は起床後にパソコンをチェックして大火球を確認。
さらに藤井さんらの映像で、隕石がどこからやってきたのかまでわかりつつある。
隕石の軌跡を時間をさかのぼらせることで、候補となる小惑星が3つに絞られた。

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はやぶさ2は小惑星まで飛行してかけらを採取したが、今回、わざわざ特定の小惑星に行かなくても、そのかけらを手にすることができたとも言える。
ただ隕石は大気圏で熱せられて変質していつので、生のかけらを手にしたはやぶさ2にはかなわないが、アマチュアの観測がもととなってここまで推定できた点は専門家からも評価の声。
ただ今回マンションの廊下の手すりには傷がついていて、隕石が衝突したことがわかっている。
またおおとし愛知県小牧市に落下した隕石は住宅の屋根を壊した。

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いずれもけが人はいないが、今回あらためて天体衝突のリスクを認識させられることに。
過去には巨大な天体衝突で被害やけが人が出たケースも。

7年前ロシアで直径17m、重量1万tの巨大な小惑星が音速を超える速度で大気圏に突入し、大火球に。
数回にわたって爆発を起こし、衝撃波が発生して建物のガラスが割れるなどして1000人を超えるけが人。

さらに規模が大きいものとしては1908年、シベリアのツングースカの森で起きた大爆発。多くの木が放射状に倒されていたことから直径50mの巨大な小惑星の衝突だったと。

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これ以外にも地球上には170以上のクレーターが確認されていて、中には塵が舞い上がって太陽を遮り、地球が寒冷化して恐竜絶滅の原因と考えられているクレーターも。

こうした小惑星は46億年前、太陽系ができたときに惑星になりきれなかった岩石で、このうち地球の近くを通るものが現在2万5000個ほど確認され、将来地球の脅威となり得る可能性も。

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生物の絶滅につながるような10キロサイズの天体衝突は数千万年に1回。
都市に大きな被害をもたらす50mサイズとなると1,000年に1回程度と考えられている。
地球に衝突しそうな小惑星が見つかったら、いかに衝突回避するか天体に巨大な弾丸などをぶつけて軌道を変えることが考えられている。
NASAは、地球軌道と交差する軌道を持つ大小二つの小惑星ディディモスに目をつけ、小さい方の小惑星の軌道を人工的に変えるミッションを計画。
探査機を打ち上げ、体当たりさせる計画。
衝突によって小惑星の速度が毎秒1ミリメートルほど遅くなり、軌道が徐々にかわるとみられており、これを実際に確認しようというわけ。
ただ軌道はごくわずかしか変えられないので、小惑星がもう近くまで来ていて数年後に地球にぶつかるというタイミングでは回避は難しいとみられる。なるべく早く見つけることが重要。
日本のアマチュアの中には発光現象だけでなく、小惑星をあらたに見つけようと観測したり、形や回転の様子を研究している人も。アマチュアの力が地球防衛に役立つ日が来るかも。
今回撮影に成功した藤井さんも、さらに広範囲を撮影できるようビデオカメラを倍増させる計画。今回の大火球をきっかけに、アマチュアのネットワークがさらに広がり、知見が深まることを期待。

(水野 倫之 解説委員)

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