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「感染拡大防止と経済再生・国民の視線は?」(くらし☆解説)

太田 真嗣  解説委員

NHKの7月の世論調査がまとまりました。新型コロナウイルスの感染者が、再び増加傾向にある中、感染拡大防止と経済再生の両立について、国民はどう受け止めているのでしょうか。

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≪イベント規制の緩和 国民の受け止めは?≫
政府は、感染状況を見極めながら、徐々に規制を緩和していく方針で、先週金曜日からは、それまで1000人までとしていた入場者の制限を、会場の収容人数の半数程度、最大5000人までに引き上げました。もちろん、同時に、感染防止もしていかなければなりませんから、政府は、▽発熱などの症状がある人は外出を控えると共に、イベントの参加者には、▽接触確認アプリのインストールや、▽連絡先の登録など、対策の徹底を呼び掛けています。

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そこで、今月のNHKの世論調査で、イベントの規制緩和のタイミングについて、どう思うかを聞いたところ、▽「適切だ」は23%、これに対し、▽「早すぎた」は59%、▽「遅すぎた」は8%でした。
「早すぎた」が多かった背景には、このところの感染者の増加があります。東京都で感染が確認された人の数は、先週200人を超え、13日は、5日ぶりに200人を切ったものの、依然、高い水準です。これまで、緊急事態宣言、そして、東京アラートの解除など、徐々に規制が緩和されてきましたが、それを後追いするように、感染が確認される人も再び増加傾向を見せています。国や東京都は、「積極的にPCR検査を受けてもらい、検査数が増えたことが影響している」とする一方、最近の傾向には、「更なる警戒が必要だ」としています。

≪感染再拡大への不安は?≫

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そうした中、今回の調査で、国内で新型コロナウイルスの感染が再び拡大することへの不安を、どの程度感じているかを聞いたところ、▽「大いに感じている」が48%、▽「ある程度感じている」は42%で、あわせて9割の人が、「不安に感じる」と答えています。
これを前回の調査と比べてみますと、「大いに感じている」という人が増えており、国民の不安は、むしろ強まっているというのが実態です。また、地域別で見てみますと、いま、感染者が増えている東京だけでなく、それ以外の地域でも、同じように、多くの人たちが、「不安」を感じていることが分かります。

≪緊急事態宣言・新たな対応策は?≫

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東京で1日の感染者がこれまでで最も多くなるなど、全国で感染の確認が相次ぐ中、第2波を防ぐため、国が再び緊急事態宣言を出すべきだと思うかどうかを聞いたところ、▽「出すべき」は48%、▽「出す必要はない」は34%、▽「わからない」が19%となり、全体としては、緊急事態宣言を「出すべき」という人が多数を占めました。
ただ、回答者の職業別で見てみますと、いずれのグループでも、「出すべき」と答えた人が最も多かったものの、「主婦」と答えた層などと比べると、サラリーマンなどの「勤め人」の層では、「出す必要はない」と答えた人も多く、慎重な意見も目立ちました。そこには、「感染拡大は怖いけれど、仕事、あるいは収入のことを考えると、なかなか難しい」という姿が浮かびあがります。

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政府は、「緊急事態宣言を出した、ことし4月の時点と比べれば、重症者は大きく減っていて、医療提供体制はひっ迫した状況ではない」として、「今の時点では、緊急事態宣言を出すことは考えていない」としています。ただ、最近の傾向を受けて、与党内からも、「クラスターが発生している業種やエリアについて、メリハリのある対策が必要だ」という声が出始めています。ただ、その場合にも、▽業種やエリアをどう絞り込むか、や、▽同じ業種であっても、感染防止対策に一生懸命取り組んでいるところと、そうでないところを一律に規制してよいのか、さらに、▽補償の問題はどうするのか、といった課題もあります。また、ある地域や特定の業種だけを規制すれば、「規制の無い、別のエリアにかえって集中してしまったり、隠れて営業をされ、逆に実態が把握しにくくなってしまったりする恐れもある」ということで、西村大臣は、今後、新たに休業要請などを行うかどうかは、専門家の意見も踏まえて検討するとしています。

≪感染拡大防止と経済活動・政府の対応の評価は?≫

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今回の調査で、「感染拡大防止」と「経済活動」のどちらに重点をおくべきかを聞いたところ、▽「感染拡大防止」が20%、▽「どちらかといえば拡大防止」が47%だったのに対し、▽「どちらかといえば経済活動」が19%、▽「経済活動」が6%という結果でした。
もちろん、健康でなければ経済活動もできない訳ですが、その一方で、仮に経済が完全にストップしてしまえば、健康であっても、私たちの暮らしは成り立ちません。ですから、本来は、政府が言うように、「どちらも大事」ですが、今回の結果は、ある意味、経済との両立を目指す政府の姿勢と、現時点での国民の危機感とのギャップを浮き彫りにしているように思います。
来週からは、観光復活に向けた政府のキャンペーンも始まりますが、いくら旗を振っても、国民の不安を解消できなければ、景気回復の勢いは生まれません。今回の調査で、これまでの政府の対応をどう評価するかを聞いたところ、▽「大いに評価する」は5%、▽「ある程度評価する」は45%です。これに対し、▽「あまり評価しない」は35%、▽「全く評価しない」は10%と国民の評価は分かれています。

≪災害時の避難所でのコロナ対策≫

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いま、九州などを中心にした豪雨災害で、避難生活を余儀なくされている方が大勢います。今回の豪雨災害を踏まえ、災害時の避難所での新型コロナウイルス感染への不安をどの程度感じているかを聞いたところ、▽「大いに感じている」が35%、▽「ある程度感じている」が47%でした。
しかし、もちろん、緊急時、そして、必要な際には、何よりも身を守る行動をとることが最優先です。安心して避難できるよう、避難所の設置にあたる自治体や地域には、万全な対策が求められますが、私たち住民の側としても、例えば、安全な場所にある、親戚や知り合いの家などに、早めに避難するといった対策を、事前に、家族で十分話し合っておくことも必要だと思います。

≪安倍内閣の支持率≫

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7月の安倍内閣の支持率は、「支持する」は、先月と同じ36%、一方、▽「支持しない」は、4ポイント下がって45%でした。今回は、「支持しない」という答えが減った分だけ、「わからない・無回答」が増えた形となっており、「支持」が「不支持」を下回ったのは、これで3ヵ月連続です。
いまは、新型コロナウイルスの感染拡大、さらに、豪雨災害が各地で相次ぐなど、まさに、国の非常時ともいわれる状態です。総理大臣のリーダーシップ、そして、政治の実行力が、改めて、問われています。

(太田 真嗣 解説委員)

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