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「どういかす?オンライン診療」(くらし☆解説)

土屋 敏之  解説委員

◆新型コロナウイルスの感染拡大に対し、4月からオンライン診療を利用できる条件が大幅に緩和されている

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 オンライン診療は、病院に行かずにスマートフォンやパソコンなどを使い、テレビ電話のような形で診察を受けられる仕組みです。例えばスマホに専用のアプリを入れて医師とつなぎ、支払いはクレジットカードなどで行えるものが普及しています。
 そして、新型コロナウイルスの感染拡大に対すし、4月から「時限的・特例的な対応」として、医師の責任で、病気の種類を限定せず、初診からオンライン、つまり一度も医療機関に行かずに薬の処方まで受けられるような形も認められました。
 さらに、音声だけの電話でも同様に初診から可能になっています。
 その結果、電話やオンラインでの診療を受けられる医療機関は急激に増え、7月1日現在、全国で1万6千か所を越えています。

◆オンライン診療はどうやったら受けられる?

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 現在、厚生労働省がホームページで、オンライン診療や電話診療に対応している医療機関のリスト、そして利用の手順も見られるようにしています。QRコードからもアクセスできます。ネットが使えない方は、まずかかりつけ医などに電話で問い合わせて見て下さい。
 現在も各地で大雨による避難生活や不自由な暮らしをおくっている方が多いですが、そうした中で健康を守るためにも役立ててほしいと思います。
 ただ、このオンライン診療を初診でも受けられるなどの現在の状況は、あくまで新型コロナウイルスの感染拡大に対する特例的な対応で、今後見直しが考えられます。先週、加藤厚生労働大臣が「検証作業をスタートしたい」と発言し、いずれ元々の形に戻していくのか、あるいは現在の特例を継続するのかなど注目されています。

◆現在が特例ということは、元々はこのようにオンライン診療は行えなかった?

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 これまでもオンライン診療は行われていましたが、色々な条件がありました。
 国の指針では、初診は対面診療、つまり最初は病院に行くことが原則です。また対象になるのは、主に慢性疾患で容体が安定し継続的に決まった処方で治療するようなケースが中心になります。薬については処方せんを郵送などで受け取り、患者が薬局に行って薬剤師に対面で服薬指導を受けるなどの条件もありました。
 利用する側にはこういう条件は無い方が便利に思えますが、オンラインでは医師は患者を映像で見て話を聞くなどに限られ、検査や触診は出来ませんし、まして電話では得られる情報が少ないので正確な診断が難しく、病気を見落とすリスクもより高くなります。
 そこで、少なくとも初診は対面診療できちんと診断をつけることが原則なのです。

◆ではなぜ今は、「特例的な対応」が行われている?

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 新型コロナの感染拡大に伴って、他の病気で通院した患者が病院で新型コロナに感染してしまったり、医療従事者にも感染が広がる、いわゆる院内感染が度々起きました。そこで、人と人の接触がないオンライン診療の活用で、この院内感染などを防ぐことが主な目的でした。

◆今後はどうなる?

 まだはっきり決まってはいません。政府の有識者会議では大きく異なる2つの考え方があります。

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 医療の専門家などが集まった厚労省の検討会では、オンライン診療の緩和にはリスクも伴うので限定的にすべき、という考え方が主流です。
 一方で、経済界にはオンライン診療を「デジタル化推進」や「規制緩和」の象徴とする考え方があって、内閣府の規制改革推進会議ではオンライン診療の全面的な解禁を求めていました。
 そして結局、新型コロナの「緊急経済対策」の中に、この初診からオンラインなどを認める内容が盛り込まれた経緯があります。

 そして、今回の特例的な措置は「3か月ごとに検証を行う」ことになっています。
 医療関係者の間では、緩和の理由だった感染拡大は緊急事態宣言も解除されているわけで、リスクの大きい初診オンラインなどは本来の姿に戻すべき、との意見が強いのですが、経済界などからは引き続き全面解禁を求める声が強く、政府の経済財政諮問会議は8日、いわゆる「骨太の方針」の原案に、「診察から薬剤受け取りまでオンラインで完結する仕組みを構築する」と盛り込んで、オンライン診療をさらに進めていく方向性が示されました。

◆そうした中で、オンライン診療は今後どういかされていく?

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 ひとつ参考になると思うのは、兵庫県の北部にある養父市のケースです。
 高齢化と過疎化が進む中山間地域のひとつですが、国家戦略特区として、従来から薬に関しては薬局に行かずオンラインで服薬の指導を受ける仕組みが認められていました。この養父市が、初診からオンライン診療を認める現在の特例を今後も継続して欲しいという要望を、5月に国に出しました。
 その背景には、例えば一日に数本のバスで長時間かけて病院に通わなくてはならないような高齢者もいる地域では、オンライン診療は特に利便性が大きいし、また、医療体制が脆弱な地域では、新型コロナに限らず今後のインフルエンザなどでも、もし院内感染が広がると、地域医療に深刻なダメージが出る不安がある、ということがあります。
 このように医療アクセスの悪い地方ではオンライン診療への期待は大きいですし、また、今回の大雨のような災害時にも、オンライン診療は有効な手段になり得ます。
 例えば、初診は対面診療という原則は維持した上で、医療体制が脆弱な地域や災害時 などに特例を認めて活用するような制度化、というのも考えられるかもしれません。

◆私たちがオンライン診療を利用する場合の注意点は?

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 オンライン診療のリスクや限界も理解した上で上手に使うこと、だと思います。
 特に持病のある方が、新型コロナウイルス感染への不安などから受診を控えたり、自己判断で薬をやめてしまうことは危険ですから、かかりつけ医などに相談して治療継続の手段としても活用して欲しいと思います。
 オンライン診療はあくまで、「国民の健康を守るための手段」なので、今後行われる国の検証では、特例として行われた初診オンラインなどが、医療としてどんな効果や課題があったのかをきちんと検証する必要があります。
 そして、新型コロナウイルスの状況を見極めつつ、今後の超高齢化や災害の激甚化も進む中での地域の医療も支えていけるような、持続可能な制度設計を急ぐ必要があると思います。

(土屋 敏之 解説委員)

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