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「大雨災害 覚えておきたい『10か条』」(くらし☆解説)

清永 聡  解説委員

停滞する前線の影響で、大雨による土砂災害や浸水などの被害が相次いでいます。
被災した場合どのような点に注意し、どういう支援制度があるのでしょうか。特に被災直後に覚えておきたい“10か条”をお伝えします。

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【「水害被害 弁護士からの10か条」】

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今回の提言は日弁連・日本弁護士連合会で災害復興支援委員会の副委員長を務める今田健太郎さんが、「水害直後 弁護士からの10か条」としてまとめたものです。今田さんは広島の弁護士で、西日本豪雨など被災者の支援を行ってきた経験から、災害直後に気を付けてほしいこと、そして災害時の支援制度や、法的な注意点を提言として公表しています。
被災された方への参考になるよう、今回はこの提言を紹介します。(放送では事前に了解を得たうえで提言の順番や表現の一部を変更しています)

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【提言の内容は】
最初は「1、土砂撤去で無理をしない」でほしいということです。
Q:ただ、自宅に土砂が流れ込むと、やはりまず取り除きたいと思いますよね。
A:もちろん被災した規模にもよりますが、自宅の土砂を一人で取り除くのは、かなり大変です。私も西日本豪雨の時に、浸水した住宅の片づけを手伝ったことがありますが、5、6人で作業しても1日ではまったく終わりませんでした。
自宅が気になる気持ちはわかりますが、無理をすれば健康状態を悪化させるおそれもあります。けがをする危険もあります。大雨が落ち着くまでは、避難を続けて、まず体力を回復してください。
行政やボランティアの支援を待つという判断も大事です。

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Q:では何をまずしたら良いのでしょうか。
A:「2、落ち着いたら自宅の写真撮影を」ということです。
できれば片付ける前に、被害状況を写真に撮ってください。その際には、家の外をなるべく4方向から、それに浸水した深さが分かるように撮影してください。また、室内の被害状況もわかるように撮影してください。
Q:どうしてですか。
A:市町村に「り災証明書」を申請するためです。被害の程度を認定する書類で、申し出をすると市町村などの調査が行われて「り災証明書」が発行されます。これが後に、様々な公的な支援を受ける際必要となります。また、保険金の請求にも必要です。

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それから「3、保険の内容の確認を」ということです。
Q:自分の保険が分からないとか、書類が流されたという人もいると思います。
A:その場合、災害救助法が適用された地域などを対象に、契約の手掛かりがなくても確認が可能な仕組みがあります。災害救助法の適用地域は、被災状況によって自治体ごとに指定されます。
適用地域では「自然災害等損保契約照会センター」が電話で対応する制度があります。無料のフリーダイヤルで平日の午前9時15分から午後5時まで受け付けています。(0120-501331)

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そして「4、通帳などを紛失しても大丈夫」ということです。
Q:通帳や印鑑が流されるということもありますね。
A:通帳などがなくても、災害時は多くの金融機関は、本人確認ができれば、預貯金の引き出しに応じているということです。災害時には、財務省が金融機関に対して、柔軟に対応するように要請したこともあります。
また、仮に通帳が土砂に流されてもそれで財産がなくなるということはないということですから、安心してください。

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続いて2つ。「5、修理は決して急がず」そして「6、敷地内の物の処分や撤去に注意」です。
Q:被災した人からすれば、自宅は急いで修理したいと思います。
A:災害救助法の適用地域では、修理費用の補助制度があります。「応急修理制度」といいます。例えば半壊以上では上限で59万円あまりの補助があります。ただし、この補助には課題があります。
この補助を利用すると、仮設住宅への入居ができないとされているんです。
Q:そうなんですか。
A:これは元の家に住み続けることを目的とした制度となっているからです。ですからこの補助制度を使うかどうかは、まず全体の修理内容や費用を十分に検討して、自宅に住み続けるか、今後仮設住宅への入居を希望するか、慎重に判断する必要があります。

また、自宅に流れ着いた第三者の物や近所の家財道具などを勝手に撤去すると、トラブルのもとになることもあります。修理や物の処分について、わからないことがあれば、弁護士会の電話相談などに問い合わせてほしいということです。

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それから「7、お金を払う前に行政の窓口で相談を」というものです。
Q:これはどういう理由でしょうか。
A:土砂の撤去や生活の再建などについて、様々な公的な支援があります。まずは支援制度がないか行政に確認するということです。
例えば「被災者生活再建支援金」、それに自治体からお金を借りることができる「災害援護資金」の制度もあります。被災直後は、役所も体制が整っていないことがあります。
まずは自治体のHPなどでどういう制度があるのか、仕組みを確認してから判断してほしいということです。

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それから「8、収入のめどが立たない方々へ」そして、「9、税金、医療費の減免や、教育の補助など」の2つです。
Q:収入が絶たれる事態になったら、とても不安ですよね。
A:自宅は無事でも、職場が水没してしまう事態もあるでしょう。過去には、災害で休業した場合や、一時的に離職した場合などに失業手当の特例措置がありました。お近くのハローワークや労働局などに相談してください。

Q:税金や医療費、教育補助はどうでしょうか。
A:大規模な災害時には、こちらも「税金の減免や猶予」、「水道費や光熱費の特例」、「教育費用の補助」などがあります。
まだ今も自治体が被災して体制が整っていないところがあるかもしれません。その場合も、すこし時間がたてば相談体制は整いますから、あわてずにできるだけ支援制度を活用してください。

【“生活再建はできます!”】

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提言の最後は「10、必ずや生活再建はできます」となっています。
ここまで見てきたように、普段はあまり知られていませんが、災害時には様々な支援制度が設けられています。こうした制度を活用したり、行政や専門家に相談したりすることで、乗り越えることは可能だと思います。

今回の提言をまとめた今田健太郎弁護士は、過去の災害で苦労する被災者をたくさん見てきたことから、この10か条をまとめたということでした。
今田さんは「今はまだ災害中です。まずは身体を大事にしてください。今後、再建に向かうタイミングは必ずあります」と話していました。
大雨となっている地域の方々は、まずは身体に気を付けながら、警戒を続けてください。そして、専門家や行政の力を借りて、生活を取り戻すためには何ができるのかを、焦らずに検討してください。

(清永 聡 解説委員)

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