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「観光シーズン到来 でもコロナが心配」(くらし☆解説)

神子田 章博  解説委員

(岩渕)7月に入り、観光シーズン到来という季節ですが、今年は新型コロナウイルスの影響で、例年とは事情がことなります。そうした中で観光産業はどう乗り切ろうとしているのか、神子田解説委員です。

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神子田さん、観光産業の打撃が大きいようですね。現状はどうなんでしょうか?

(神子田)厳しい状況が続いています。とりわけ4月から5月にかけて緊急事態宣言が発せられた期間中は、どの観光地も閑古鳥が鳴いていた状況です。ただ、その後徐々に回復する動きをみせています。
こちらをごらんください。

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データ分析会社のナウキャストとクレジットカード大手JCBは、カードの利用情報をもとにプライバシーを保護したうえで、半月ごとの消費動向を指数で示しています。このグラフは旅行の消費を今年1月後半に比べてどれだけ減少したかを示したものですが、4月後半は94.6%も下落していたのが、6月前半は75.3%の下落と、底打ちから回復にむかっているようにも見えます。さらに来月からは、国内旅行を対象とした旅行需要の喚起策=Go To トラベルキャンペーンの事業が始まります。

(岩渕)Go To トラベルキャンペーンというのはどういうものなんでしょうか?

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(神子田)国内旅行にかかる費用の二分の1、一泊当たり2万円を限度に、国が補助してくれるものです。この補助額のうち、7割は宿泊料金、3割は、旅先で食事をしたり、お土産を買う時の代金にあてることができます。具体的に見てみましょう。

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例えば電車やバスでどこかの観光地にゆき、一泊する旅行を旅行代理店などに申し込みます。そしてその合計代金が40000円だった場合、2万円相当のクーポンがもらえて、うち14000円は宿泊代金から差し引かれ、残り6000円分は、現地で食事をしたり、おみやげの購入に使えるクーポンがもられるということです。家族5人で旅行に行けば一泊当たりあたり10万円の補助が受けられるというわけです。ネットの旅行予約サイトでも、宿泊施設に直接申し込むこともできるようにしたいとしています。

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 気をつけないといけないのは、自分で電車などの交通手段を個別に予約した場合は、その交通費の部分は補助の対象となりません。

(岩渕)それはどうしてなんですか?

(神子田)このキャンペーンが、観光地でお金を使ってもらうということが目的で、交通手段の予約をしただけでは、観光目的かどうか判別しないためだということです。

(岩渕)なるほど。これいつから予約できるのか、気になる人も多いと思うんですが?

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(神子田)これは8月中に受付が始められるように準備を進めているということですが、何日からというのは、まだ決まっていないということです。この予算、およそ1兆1000億円が補助金につかわれる見通しで、一人が一回の旅行で限度いっぱいの2万円の補助を受けるとすると、5500万人分となります。一人が何回使ってもよいので、3泊の旅行だったら、3泊分もらえるということになっています。

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今年度内来年3月までの事業なのですが、予算がなくなってしまったら終わりになりますので、早い者勝ちという面もあります。ただですね、もしこれが8月にはじまって人気殺到で9月には予算がなくなったということになると、残り10月からは一気に需要がしぼんでしまうことになります。

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また観光地に一時期に人が集中するのを避けることも必要なので、期間ごとに補助する予算を分散して割り振っていく方向で検討されています。それから、ある地域に観光客が集中すると、別の地域はこの制度の恩恵が受けられないということになりますので、地域ごとの枠の割り振りも、例えば前年度の旅行客数の実績などを参考にしながら、行っていくことになるとしています。

(岩渕)確かにこの制度をつかって、旅行にはいきたい人も多いと思うんですが、一方で、新型コロナウイルスの感染の危険も残っていますよね、心配なひともいるのではないでしょうか。

(神子田)そうですね。確かにきのうは東京で100人以上の感染が確認されています。旅行を通じて感染が拡大するおそれがあることから、観光地でも、旅行者の増加を歓迎する声と不安に思う声が聞かれます。
 インタビューAさん「やっと客が戻ってきた。うれしい」
 インタビューBさん「感染が広がるのではないかと不安だ」
 
(岩渕)複雑な気持ちもあるでしょうね?

(神子田)旅する私たちも感染が広がらないように気をつけたいところですが、こうした中で、観光に関連する業界の団体が、国土交通省や観光庁の協力を得て、旅行者が注意すべき感染防止のポイントを川柳風にしてまとめました。
いくつかみてゆきましょう。

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 まず旅にでかける前から始まっているんです。
〇毎朝の健康チェックは、おしゃれな旅のみだしなみ
旅に出る前に、あるいは旅先で宿を出る前に、体温をはかるなどの健康チェックをしましょう。

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〇旅先の 状況確認 忘れずに
地方から東京に観光に来るひとなど特に気にされているのではないでしょうか。行く先の感染状況を確認してから出発しようと呼び掛けています。

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 次に移動する際の注意点です。
〇楽しくも、車内のおしゃべり控えめに。
大きな声でしゃべると飛沫がとんで感染リスクが大きくなるのを避けようということです。

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さらに、観光地でも、密を避けるということで
〇混んでたらいまはやめて後でゆっくり

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そして宿についてからは部屋の換気
〇 こまめに換気 フレッシュ外気は 旅のごちそう 

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それから接触感染をふせぐことも呼びかけています。
〇旅行けば、何はともあれ、手洗い・消毒
〇おみやげは あれこれ触らず 目で選ぼう

このように、感染防止のエチケットをみんなで実行することで、安心した旅をする環境をつくれるかどうかが、国内旅行の復調に向けたカギとなりそうです。それから、観光と言えば、国内旅行とともに、大きな柱となっているのが、外国人旅行者インバウンド需要の動向ですが、こちらも厳しい情況です。観光庁のまとめによりますと、今年4月と5月に日本を訪れた外国人旅行客の数は、いずれも、前の年に比べて99.9%も減少しているんです。

(岩渕)99.9%のマイナスですか、ほとんど来なくなっているということですね。

(神子田)はい。これは海外からの感染を防ぐために入国制限を行っているためです。かつてのように大勢のインバウンド客が来るようになるのは、ワクチンが完成して、世界的に普及するというのを待たなければなりません。

(岩渕)それまで、観光業のひとはたいへんですね。

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(神子田)そうですね。ただそうした中で宿泊業者の中には、インバウンドの旅行客が激減しているという状況を逆に利用して、老朽化した施設の全面的なリフォームを行ったり、外国人観光客を意識して、洋式トイレの設置、WIFIの整備、バリアフリー化など一気に進めようという動きも出ています。また経営者の中には、これまでできなかった従業員の英語や中国語のレッスンを行いたいと話す人もいます。こうした施設や人材は、将来、将来インバウンド需要が回復した際に、外国人が多くの国の中から日本を選んで観光に来てくれるようになる競争力の源泉ともなります。政府としても、国内需要の喚起策に加えて、こうした将来を見据えた動きを支援する政策も進めてもらいたいと思います。

(神子田 章博 解説委員)

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