新型コロナ対策 安倍内閣の評価は?
2020年06月23日 (火)
太田 真嗣 解説委員
NHKの6月の世論調査がまとまりました。政府の新型コロナウイルスへの対応などについて、国民はどう評価しているのか。太田解説委員です。
≪内閣支持率≫
安倍内閣の支持率は、▽「支持する」が1ポイント下がって36%。逆に、▽「支持しない」は、4ポイント上がって49%でした。「支持しない」が、「支持する」を上回ったのは、2ヵ月連続となりますが、その差は更に広がり、「支持しない」は、第2次政権発足以降、最も高い水準になりました。
ちなみに、今月17日に閉会した、先の通常国会が始まる直前の今年1月の時点から比べてみますと、通常国会を経て、安倍内閣の支持率は、「支持する」が8ポイント下がり、逆に「支持しない」は11ポイント上がった計算です。
安倍政権にとって、先の通常国会は、新型コロナウイルス対策に追われ、国民に積極的にアピールできる政策を打ち出せずに、いわば防戦一方になった感がありました。当初、この国会で大型の景気対策を行い、経済・雇用を、さらに押し上げて、夏のオリンピック・パラリンピックを盛り上げていく、というシナリオを描いていましたが、蓋を開けてみれば、新型コロナウイルスの感染拡大で、経済・雇用は急ブレーキ、オリンピックも延期となりました。
また、会期中には、検察庁の定年延長をめぐる問題もクローズアップされたほか、今月に入ってからは、新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画の停止、河井克行・前法務大臣と妻の杏里参議院議員が公職選挙法違反の疑いで逮捕される、といったマイナスの要素も重なり、詳しい説明やその責任を問われる場面も目立ちました。
≪支持率回復に何が必要か?≫
これまで歴代政権は、政権運営が難しい局面を迎えた際、衆議院の解散、あるいは、内閣改造で、事態を打開しようとしてきました。
安倍総理も、国会閉会を受けて開かれた、18日の記者会見で、衆議院の解散・総選挙について聞かれ、「国民の信を問うべき時が来れば、躊躇なく解散を断行する考えに変わりはない」と強調しました。ただ、同時に、「いま現在、コロナ対策に全力を尽くしており、頭の片隅にもない」とも述べ、内閣改造と党役員人事についても、「先の話だ」としています。与党内でも「第2波などが懸念される中、コロナ対策を放り出して、解散・総選挙に打って出るのは難しい」という見方が強いですから、まずは、コロナ対策、そして、経済の回復にしっかりとした道筋をつけることが最優先事項です。
≪政府の新型コロナウイルス対策、国民の評価は?≫
今回の調査で、政府のこれまでの対策を、どう評価するかを聞いたところ、▽「大いに評価する」は6%、▽「ある程度評価する」が45%だったのに対し、▽「あまり評価しない」は37%、▽「まったく評価しない」は10%でした。これを先月の調査と比較しますと、各種の支援策などが、順次、手元に届くようになったこともあり、今回は、「評価する」が「評価しない」を上回りました。
≪移動自粛 緩和の判断は?≫
だた、19日に都道府県をまたぐ移動の自粛が全国で緩和されたことを受けて、そのタイミングについて、どう思うかを聞いたところ、▽「適切だ」と答えた人は35%。これに対し、▽「早すぎた」は47%、▽「遅すぎた」は11%となっています。
背景には、新型コロナウイルスへの国民の根強い不安があります。今回の調査で、国内で感染が再び拡大することへの不安をどの程度感じるかを聞いたところ、▽「大いに感じる」は37%、▽「ある程度感じる」は49%で、これら合わせると、「不安を感じる」という人は全体の9割近くに上ります。
これを、先ほどのデータに重ねてみますと、やはり、「大いに不安を感じる」という人では、自粛緩和は「早すぎた」と感じている人が多いし、逆に、「不安をあまり感じない」という人は、自粛緩和を積極的に受けとめているのがわかります。
≪一律、10万円給付 使い道は?≫
一方、今回の調査で、国民に一律に給付される10万円をどのように使うかを聞いたところ、結果は、このようになりました。もちろん、所得水準によっても違いますし、休業手当のある『勤め人』より、『自営業者』の方が生活費に充てるという人が多いといったこともありますが、全体的には、感染拡大への不安が少ない人の方が、給付金を生活費以外に充てる割合が多いという傾向が見られます。
「景気は気から」という言葉もありますが、やはり、経済を動かしていくためには、国民の不安をなんとかして解消していかなければなりません。そのためにも、医療や検査体制の強化、治療薬やワクチンの開発など、次の流行への備えを急ぎ、その姿を、しっかり国民に示す必要があります。
≪イージス・アショア 配備計画停止≫
政府が秋田県と山口県に配備を計画していた、新型迎撃ミサイルシステム『イージス・アショア』の配備計画を停止したことについて、その評価を聞いたところ、▽「評価する」は48%、▽「評価しない」は29%で、▽「わからない」が23%となりました。
政府は、計画を停止した理由について、「迎撃ミサイルについている、『ブースター』と呼ばれる推進補助装置を安全に落下させることが難しいことが分かったため」としています。これまで地元に説明してきたことと違う訳ですから、計画の見直しは『当然』ですが、イージス・アショアの配備をめぐっては、これ以前にも、防衛省のずさんな調査が明らかになっています。
「『配備ありき』で、計画そのものに無理があったのではないか」、「すでに費用の一部の支払いも済んでいるアメリカ側との契約はどうなるのか」といった国民の疑問に対し、納得できる説明が求められます。一方で、北朝鮮によるミサイルの脅威が変わった訳ではありません。政府は、今週、計画の撤回を正式に決める方針ですが、イージス・アショアに代わる、ミサイル防衛体制をどう築いていくかも、きちんと国民に示し、理解を得る努力が必要でしょう。
≪公職選挙違反事件≫
今回の調査では、河井前法務大臣と妻の杏里議員が公職選挙法の買収の疑いで逮捕されたことについても聞きました。河井夫妻は、「違法な行為はしていない」として、議員辞職はしない意向を示しているということですが、それについて聞いたところ、▽「辞職すべき」は83%、▽「辞職する必要はない」は5%となり、国民は厳しい目で見ています。
河井夫妻は、いずれも容疑を否認しているということですが、検察当局は、地方議員などに配られた多額の資金の流れなどの解明を進めるものと見られます。こうした事件が明らかになる度に、「政治は信なくば立たず」という言葉が繰り返されますが、政治とカネの問題は、依然、後を絶ちません。新型コロナウイルス感染の不安の解消と合わせて、政治への『信頼の回復』も、いま、安倍政権に課せられている大きな宿題です。
(太田 真嗣 解説委員)
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