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「外出自粛 家計への影響は?」(くらし☆解説)

今井 純子  解説委員

新型コロナウイルスの感染拡大による外出の自粛で、家庭の消費にも様々な影響がでています。今井解説委員。

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【外出自粛で、支出が増えたもの。減ったもの。いろいろありそうですね】
はい。1世帯あたりの消費額。3月に、外出を自粛する動きが広がり、前の年と比べて6%減りました。それが、4月は、緊急事態宣言を受け、11%あまりの減少と、一段と落ち込みました。統計が比較できる2001年以降で最も大きな落ち込み幅でした。
ただ、中身を見てみると、支出が減ったもの、増えたもの。両方があります。
(家計調査)

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【支出でいうと、うちは、やはり、外食が減りました】
はい、多くの人が外へ出るのを控えましたので、
▼ 外食は、食事代が60%あまり。外で飲むお酒代も90%あまり減りました。
▼ 美容院などへの支出も40%あまり減りました。
また、移動の自粛もありましたので、交通費。
▼ 航空運賃、高速代、通学定期代も、いずれも、大幅に減りました。

【学校もお休みでしたものね】
そうですね。
▼ 旅行や遊びにも行けませんので、宿泊料や遊園地代も大幅に減りました。
▼ さらに、在宅勤務が増えたことから、背広への支出が80%近く減ったほか、口紅への支出も40%あまり減りました。在宅勤務の時だけでなく、外へやむをえず出る場合も、マスクを使うので、口紅は本当に使わなくなりました。

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【ほぼ、家庭の支出がなかったと言ってもいい項目もあるのですね】
そうした商品やサービスを提供する側は、非常に厳しい状態だということが、この数字を見るとわかります。
一方、家で過ごす時間が増えたことで、家庭の支出が増えた項目もありました。
▼ まず、家にいるので、光熱費や水道代が増えました。
▼ そして、家で食事をしますので、パスタなどの食材、それからチューハイ・カクテルといった家で飲むお酒への支出が増えました。電子レンジも、3月には、前の年と比べてマイナスだったのが、4月はプラス30%と増えました。
▼ また、こどもの学校が休みだったことから、ゲーム機やゲームソフトへの支出。
▼ それから、パソコンへの支出も3月のマイナスから4月はプラス70%あまりと、大幅に増えました。在宅勤務の他、こどものオンライン授業が増えたことも背景にあるとみられます。

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▼ さらに、家で楽しむという点では、小麦粉や生地などへの支出も大幅に増えました。家でパンやお菓子を作ったり、マスクやフェルトのマスコットなどの手芸をしたりする人が増えたというのです。

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【一時期、スーパーの店頭から小麦粉が消えたことがありましたよね。でも、確かに、家にいるからこそ、こどもと一緒にいろいろなものを作って、楽しむこともできました】
一方、買い物の方法にも変化が見えています。(家計消費状況調査)
▼ 4月にネットショッピングを利用したという世帯。全体の47%あまりと、前の年と比べて5.1ポイントに増えました。1世帯あたりのネットショッピングでの支出額も5.9%増えました。
▼ 支出の内訳をみてみますと、食料品、そして、家電製品へのネットでの支出が、このように大幅に増えました。

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【買い物はしたい。でも、外出は控えたいという方は、ネットでの購入が増えたのですね】
はい。でも、全体では、冒頭で紹介したように消費は、大幅に減りました。

【緊急事態宣言が解除され、今後はどうなるのでしょうか?】
まず、5月後半。きのう公表された調査の結果を見てみますと・・
(出典:JCB/ナウキャスト「JCB消費NOW」より)
▼ クレジットカードの利用情報をもとに算出した消費の動向を示す指数は、前の年と比べてマイナス15.6%。まだ、減ってはいますが、4月の後半は、マイナス28.2%でしたので、下げ幅が縮小していることがわかります。

【人の移動も増えていますよね】
はい。
▼ デパートも、6月に入り、すべての店舗の営業が始まり、回復の動きがみられます。例えば、伊勢丹の新宿本店では、先週末、客数は前の年の半分でしたが、売り上げは20%程度の減少にとどまったということです。店が閉まっていたため買えなかったランドセルや宝飾・高級時計、家でゆっくり過ごすための調理用具やパジャマなどが売れているということです。

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【店が開くのを待っていたという方もいるのでしょうね】
はい。消費は、一時より回復してはいます。ただ、元に戻るまでにはかなり時間がかかるという見方がでているのです。
というのも、家庭の支出が減った背景には、「外出を控えたため」というだけでなく、「雇用や収入への不安から出費を減らした」という家庭も多くあるからです。

【厳しいご家庭も多いですよね】
そうですね。
▼ まず、すでに解雇や雇い止めで職を失った、あるいはその見通しの人は2万4000人を超えています。
▼ また、仕事はあるけれど、営業の自粛などで、仕事が休みになってしまった人も4月には597万人と、過去最大の規模に達しています。事態が改善しなければ、失業に追い込まれる懸念があります。
▼ さらに、仕事がある人も(フルタイムの人も、パート社員も)4月の賃金は減りました。夏のボーナスも大幅に減る見通しです。
特に、雇用や収入への不安を抱えている多くの家庭では、節約の動きが強まることが予想されるのです。

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【節約が強まると、店側の厳しさ、そして、そこで働く方たちの厳しさも続くことになりますね。どうにかならないのでしょうか?】
生活が厳しくても、買いたい物はある。でも、人との接触は避けたい。という、ニーズはあります。それにいかに応えるかが、1つ、ポイントになると思います。

【先ほどは、ネット販売が伸びているという話でしたね】
はい。ネット販売、そして、持ち帰り・宅配。力を入れる企業が増えています。
▼ 例えば、アパレル大手の「ユナイテッドアローズ」。多くの店舗で営業ができなかった中、ネット通販は前の年より50%近く増えて、事業を支えました。中でも、例えば、「初夏のおすすめ仕事着」といったようにテーマと時間を決めて、販売員がネット上の生中継で商品を宣伝。お客さんが打ち込む質問に応じて、色違いの商品や、様々なコーディネートを紹介する手法が好評で、さらに強化する方針です。 
▼ また、回転ずしの「スシロー」は、店内での飲食が落ち込んだ中、宅配・持ち帰りは、前の年の2倍に増えました。ネットで注文した商品を、店員と接触することなく、店頭の冷蔵ロッカーで受け取ることができる仕組みを一部の店で導入しているのが好評で、今後、さらに多くの店に広げていく方針だということです。

【コロナとともに生きる暮らしがしばらく続きそうですので、安心して買いたいものを買える方法は、ぜひ広げてほしいですね】
はい。他にも、ネットで家を建築する相談をしたり、車を買う相談をしたりすることができる仕組みを導入する企業もでてきています。

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こうした取り組みができる分野、できない分野はありますが、できるところで知恵と工夫で、消費が増えれば、そこで働いている人の雇用や賃金を支えることにもつながります。今後、第2波、第3波がくることも想定して、企業は、ぜひ、今のうちに、感染のリスクを減らしながら、消費者が安心して買いたいものを買える仕組みを整えてほしいと思います。

(今井 純子 解説委員)

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