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「コロナ時代の夏 マスクとどう向き合うか」(くらし☆解説)

水野 倫之  解説委員

緊急事態宣言は全国で解除されたが、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため引き続き、マスクの着用が求められている。これから暑い夏を迎えるが私たちはマスクとどう向き合えばよいのか、水野倫之解説委員の解説。

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政府が使い捨ての不織布マスクの増産を支援したり輸入も増えてきて、ドラッグストアでも以前よりは手に入れやすくなった。また雑貨店などでも扱われるようになり、価格も下がってきているが、完全な品薄解消にはまだ時間がかかる見通し。
でも専門家会議が示す新しい生活様式では、「外出時、屋内にいるときや会話をするときは、症状がなくてもマスク着用」を求めていて、必需品。

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そこで人気が高まっているのが手作りの布製マスク。

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俳優の香川照之さんが子どもたちに寄贈したてんとう虫やカマキリなどがデザインされたマスク。昆虫好きの香川さんのもとに「子供がマスクを嫌がる」という声が届き、こどもの心をくすぐるマスクを作ったということ。
また北海道のアイヌの人たちでつくる団体が製作したマスクはアイヌの伝統的な文様が刺繍されていて、全国から注文が相次いでいる。
さらにデニムの生産が盛んな岡山県ではデニム生地のおしゃれなマスクも登場。

ただ専門家は、一体何のためにマスクをするのか、本来の役割をこのコロナ時代に正しく認識することが大事だと言う。

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一般的な不織布マスクや布マスクは、顔との間にどうしても隙間ができるので、ウイルス取り込み防止効果は期待できない。
ただせきやくしゃみをした時の飛沫飛散を防止する効果がある程度期待でき、感染防止に役立つわけ。
その効果を左右するのがフィルターの性能。
不織布マスクのフィルターは細かい繊維が何層にも重なっていて0.1ミクロンの新型コロナウイルスもほとんど捉える性能があり、目に見えない小さな飛沫の飛散も防止することができる。
ただこうした性能が本当にあるのかどうかは、微粒子を使った試験で確認する必要。
試験済みのマスクには検査機関名とともに、PFEやBFE、あるいはVFEなどの微粒子を使った試験が実施済みと書かれている。
ところが専門家によると、ここ1、2か月雑貨店などで販売され始めた輸入マスクの中にはそうした記載がないものもあり、粗悪品が混じっている可能性があると言う。
購入する際には、検査機関名やPFEといった記載を確認したり、性能がよくわからない場合はお店の人に確認してほしいとのこと。

次に一般的な布マスクのフィルターは不織布に比べて隙間がかなり大きい。
マスクに詳しい聖路加国際大学の大西准教授が、政府が全家庭に配布中の布マスクの性能を調べた。マスクの外側と内側の粒子の数を計測する方法で確認した結果、マスクの周りを押さえても、粒子の透過率は90%以上もあったということ。
布マスクには様々なものがあって一概には言えないが、今回の政府のマスクはガーゼが15枚重ねられているということだが、1枚1枚の目が粗いため、くしゃみの際に出る目に見えない小さな飛沫は素通りして外に飛び散る可能性が高いということ。
なので大西准教授によれば、屋内で人が多い3密に近い状況では、性能が確認されている不織布マスクを使うことが望ましく、屋外で人との距離が保てるようであれば、布製マスクでも問題はないということ。

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ただ手元に布マスクしかなければ、しないという選択肢はなく、その性能を理解した上で、くしゃみが出そうなときは肘で押さえるなどエチケットを守ることが大事だと。

さらにマスクをしていくうえでこれからの季節、気を付けなければならないのが熱中症。

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熱中症はだるい、めまいがするといった症状から始まり、頭がガンガン痛くなったり、重症になると体がけいれんを起こし、意識を失うことも。

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毎年およそ5万人が救急搬送され、多い年には1000人超が亡くなっている。
患者の半分は65歳以上の高齢の方で、自宅など屋内で多く発生している。
気象庁の3か月予報では、西日本や東日本などで平年よりも気温が高く暑い夏になりそうで、ただでさえ今年は熱中症のリスクが高まっているが、今回その暑い夏にほぼすべての国民がマスクをして過ごすという、これまで経験したことがない夏を迎えようとしているわけ。
そこで今週、日本救急医学会など4つの学会が、熱中症予防の緊急提言をまとめ、発表。

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それによると、マスクを常につけていることで口や鼻の中の保湿効果が高まり、のどの渇きを感じづらくなって自覚がないままの脱水症状が進むおそれがあるという。
またマスクをつけて軽い運動をすると呼吸や心拍数が10%程度あがり、顔の温度も1.7度上昇するという研究データがあってからだに負担がかかることは明らかだということで、例年よりも熱中症のリスクは高くなるということ。

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そこで対策としてはまずはのどが渇いていなくても意識的に水分を補給することが大切。
食事でとる水分以外に1日1.2L水などを補給することが目安。
そして周りに人がいなければ適宜マスクを外して休憩することも大事。
厚生労働省は屋外で2m以内に人がいなければマスクを外してもよいと話す。
さらに新型コロナの影響で外出自粛が続いて体が暑さに慣れていない方が多いので、今の時期から人込みを避けて散歩したり、軽い運動をして暑さ慣れを。
またエアコンの使い方も例年とは違う点があり、エアコンは空気の入れ替えはしてくれないので、感染予防のためにはこまめに換気することが必要。
先ほど見たように熱中症の症状は、新型コロナの症状と似ている部分もあって、病院に搬送された時にコロナか熱中症か判断に時間がかかって、熱中症の治療の開始が遅れるおそれもあるのでこの夏はマスクをうまく使って今まで以上に熱中症の予防に気を付けてもらえれば。

(水野 倫之 解説委員)

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