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「感染防止業界ガイドライン ~変わる暮らしとビジネス」(くらし☆解説)

神子田 章博  解説委員

今週緊急事態宣言が解除されましたが、感染防止の取り組みは引き続き求められています。こうした中、企業の間では、業界ごとに、感染防止のためのガイドラインをまとめています。神子田解説委員です。

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Q このガイドライン業界ごとということですが、どういった業界がつくっているんでしょうか?

A 内閣官房のまとめによりますと、21の業種、100以上の業界が作っています。日頃よく行く飲食店や宿泊業、娯楽・交通など様々な業界にわたっています。内容についてみますと、大きく言って、二つです。顧客同士の感染を防ぐ、それから従業員と顧客の間の感染を防ぐ取り組みです。
 具体的にみていきましょう。

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飲食店では、座席の間をできるだけ2メートル最低でも1メートル開ける。対面しないように座ってもらうか、対面する場合は、机の上にアクリル板の仕切りを置く。店員はマスクを着用。注文を取るときもお客の前に立たずに横に立つ。

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結婚式場のガイドラインあります。親族一同の写真を撮影するときは、直前までマスクをして会話を控える。テーブルやイスは披露宴の開始前に消毒。

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それと披露宴では、列席者同士の間で飛沫感染が防げる間隔をとり、少なくとも隣の席とは1席程度の間隔をあける。それから披露宴につきものの余興。大学時代の応援歌などをうたって新郎新婦にエールを送るシーンがよくみられますが、大声を発する余興は、控えてもらう。とあります。

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それから麻雀店。マージャン卓では、普通にやると対面する人の距離が1メートルなんですが、椅子を後ろに下げるなどして、対人距離をできるだけ2メートル確保する。しかし2メートル離すと、こんな感じになって、ちょっとやりにくいですよね。

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そこで対人距離が確保できない場合は、アクリル板や透明なカーテンで遮蔽する、と書かれています。それから、折衝感染をふせぐために麻雀パイは3時間に一回、消毒済の新しい麻雀パイと交換するとも書かれています。

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また従業員に対しては、感染防止対策の徹底を求めています。毎日朝体温チェックをして熱があれば出社しない。マスクや咳エチケットの徹底、こまめに手洗い・手指の消毒を行う。衣服や身につけているものをこまめに洗濯消毒することを求める業界もありました。そのうえでお客さんを迎える店内、交通機関だったら車内の消毒を徹底することなどが書かれています。

Q ここまで徹底した感染対策をとるなかで、ビジネスへはどんな影響がでてくるでしょうか?

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A まずはソーシャルディスタンスをとることで、お客の数がいままでより減ってしまうことです。
 例えば居酒屋のカウンター席は、これまで5人座れたところ、2人しか座れないとか。

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映画館のガイドラインでは、前後左右をあけた席配置にする。映画館は、前後左右を開けた席配置に努める。

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 航空機でも、ガイドラインにはないんですが、日本航空は一人置きに座ってもらう形にしています。ちなみに飛行機の中は密閉空間と思われがちですが、業界団体によりますと、エンジンから取り込んだ空気を浄化フィルターにかけて客室内に送り込み、左右の座席の下から室外に排気されていて、客室内の空気は3分程度で入れ替わるといことです。

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話を元に戻しますと、席の数が減っていますから、こうした対応がずっと続きますと、“満席”になっても以前のような収入が得られないということになります。

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 その一方で、徹底した消毒、あるいは客同士の間に設けるアクリル板、透明なカーテンなどの設置、ちなみに専門家は、こうした資材は燃えにくい加工がしてあるものを使ったほうが良いと指摘していますが、このうように、対策を打つには相応のコストがかかります。このため、政府は事業の再開に向けて感染防止対策を行う小規模な事業者にこうした費用を最大で150万円を補助することになりました。それでも、従業員にとってはかなりの時間と労力がとられることになり、とくに規模の小さな企業にとっては重い負担となりそうです。

Q いろいろなところを消毒してもらうとお店を使う私たちには有難いですが、たいへんそうですね。ほかにはどんな影響が考えられますか?

A 従来のサービスの在り方が少し変わるかもしれません。

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 こちらをは宿泊業のガイドラインです。
 まず宿泊客が宿に到着したときの館内の説明、非常口がどこで、大浴場がどこで、という説明は、従業員による説明でなく、文書の配布や動画等の紹介を導入。食事時には、従業員からの料理説明は、料理説明メモに変更 部屋で食べるときには、できるだけ一度に料理を提供して、従業員の客室への入室回数を減らす。と書かれています。

Q ということは、御布団なんかも敷きに来てくれなくなるかもしれませんね?

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A そういうところも出てくるかもしれませんね。ただ、大事なポイントだとは思うんですが、これまで従業員の方々がお客と接触する中で、様々な配り、目配り、地元の観光スポットについてガイドブックに書いてないことを教えてもらったりという、きめ細かなコミュニケーションが強みだったサービス、いわば日本流のおもてなしが味気ないものになってしまわないかちょっと気がかりです。

Q ここまで接客の機会がある業界のガイドラインを中心にみてきましたが、オフィスワークはどのようなガイドラインがあるんですか?

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A 経団連が、オフィスの感染防止対策をまとめました。基本はやはり三密対策です。まず通勤電車が混まないように時差出勤。オフィスの中ではご覧のような方法で感染を防ぐ。そしてテレワークの普及です。

Q 私の周りでもテレワークしている人が増えてきました。

A 実際に初めて見ると、家には小さな子供がいたりして、仕事に集中できないという声も聞かれます。そこで、いま企業の中には、東京近郊のターミナル駅に、サテライトオフィスをつくって、テレワークの拠点にする動きも出ています。こうすれば、人の集まる都心にでなくてよいので、感染のリスクを減らすことができます。また外国人旅行客が減っているなか民泊の部屋をテレワークに活用してもらおうという取り組みも始まっています。

Q そういう場所が近くにあれば、通勤時間も短くできるのでいいですね?

A それから、テレワークは、大企業では広がってきているのですが、中小企業では導入が遅れています。必要な機材を購入する資金に乏しかったり、機材はあっても、使い慣れていなかったりして、なかなかひろがらないといいます。またテレワークには、社員が持ち帰った会社のパソコンがサイバー攻撃を受けて情報が流出するなどのトラブルも考えられ、中小企業に対しては、そうしたソフト面の対策も含めてノウハウの支援が、資金面での支援とともに求められています。
また企業の規模を問わず、ただ仕事の内容によっては、テレワークでは対応できない仕事もありますので、そういう人には、週休三日制も提案されています。といっても、出勤日は減っても、出勤した日に。いまよりも労働時間が長くなる仕組みで、仕事が楽になるわけではありません。実現には労使で合意する必要もでてきます。

 緊急事態宣言が解除されたことで、経済活動を少しずつ動かしていく新たな段階に入ったわけですが、再び感染の急速な拡大を招かないように、きょうご紹介した新しい仕事方式を、様々な課題を解決しながら、着実に定着させていくことが求められています。

(神子田 章博 解説委員)

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