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「広げよう寄付支援の輪」(くらし☆解説)

出石 直  解説委員

新型コロナウイルスの感染拡大と自粛要請の影響で多くの人達が生活困難に陥っています。
その一方で、こんな時だからこそ困っている人達を寄付という形で支援しようという取り組みも広がっているということです。出石 直(いでいし・ただし)解説委員です。

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【広がる支援】
Q1、自粛要請でイベントが中止になったり、休業に追い込まれたり、本当に困っている方がたくさんいらっしゃいますね。

A1、公的な支援策も行われていますが、手続きに時間がかかる、金額も足りないといった不満の声も多く聞かれます。きょうご紹介するのは、そうした人達を支援しようという民間の取り組みです。
岩渕さんはクラウドファンディングという言葉はお聞きになったことがありますよね。

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インターネットを通じて不特定多数の人から資金を募る仕組みです。
新たな事業を立ち上げるベンチャー企業を支援したり、応援したいお店に資金提供をしたりと様々な形があるのですが、インターネットを通じたやりとりですので、外出の自粛が続いている今、街頭での募金活動に代わってこうしたクラウドファンディングによる支援の動きが広がっているのです。

【10万円の給付金から寄付】

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そのひとつが、国から一律に給付される10万円から寄付を募ろうという取り組みです。
産業界や医療関係者の呼びかけで先週からスタートしました。
このプロジェクトの特徴は、寄付をしたい分野を選択できるところです。

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▽「医療」「福祉・教育・子ども」「文化・芸術・スポーツ」「中小企業」、この4つの分野から支援したい分野を選んでクレジットカードを使って寄付をします。一口100円から寄付をすることができます。
▽集まった寄付は、プロジェクトを運営する公益財団法人に引き渡されます。ここを通じて支援を必要としている個人、団体、企業などに分野ごとに寄付が届けられます。
▽支援を希望する個人や団体は、この公益財団法人に申請を行います。様々な分野の専門家で構成する審査員が審査をして支援先を決定することになっています。

Q2、寄付はしたいけれど、どこに寄付をすれば良いのかわからないという人にとっては、分野を選ぶだけで支援を必要としているところに寄付を届けられるというわけですね。

A2、10万円の給付金をもらえるのなら、もっと困っている人達を助けたいという方は、こうした形の寄付を検討されてはいかがでしょうか。

【約3億円を集めた基金】
先月から活動を始めて3億円近い寄付を集めた基金もあります。

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クラウドファンディングを通じて、感染拡大防止に取り組んでいる医療機関に医療用のマスクやフェイスシールドなどを贈ったり、ひとり親家庭に日用品を提供したりする活動を行っています。寄付は一口1000円から行うことができます。
先月初めからこれまでに1万3000人を超える人達から3億円近い寄付が寄せられ、医療関係者やNPO法人など10の団体に届けられました。

Q3、3億円とは驚きですね。

A3、この活動は7月まで行われることになっています。集まったお金がどこでどのように使われたのかは、この基金のウェブサイトで見ることができます。
寄付を受け取った団体からのメッセージも掲載されています。
低所得のひとり親家庭への支援活動を行っている団体からお礼のメッセージです。

特定非営利活動法人「フローレンス」
「この度の皆様の温かいご寄付本当にありがとうございました。今回皆様からの温かいご支援をもとにさらに手厚いサポートを届けることができるようになりました」
特定非営利活動法人「難民を助ける会」
「多方面からマスクが不足し困っているとの声をお寄せ頂いています。このたびのご支援ご協力に心より御礼申し上げます。」

【医療従事者に無料サラダ】

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クラウドファンディングを利用して医療従事者に無料でサラダを提供しているところもあります。
都内を中心にサラダ専門店を展開している会社です。寄付を募って、新型コロナウイルスと最前線で闘っている医療従事者やスタッフに無料でサラダを提供する活動を続けています。
今月6日現在で1800万円を超える寄付が寄せられ、都内の25の医療機関に1万3000食を超えるサラダを無償で提供できたということです。

【特典付き寄付】

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寄付した額に応じて特典がもらえるものもあります。営業を自粛して困っているお店などに寄付をして応援しようという取り組みです。サイトには「レストラン・居酒屋」、「宿泊施設」など、分野ごとに支援を求めている人と、そこに集まった金額が掲載されています。
例えば「渋谷の飲食店応援プロジェクト」では、寄付をした額に応じてプロジェクトに参加している店舗で使えるお食事券がもらえます。

Q4、お店にすれば当面の運転資金が得られるし、寄付をする側もお店が再開したらお食事券として利用できるわけですね。

A4、寄付は本来、見返りを求めないのが原則ですが、こうした形の応援もあって良いのではないでしょうか。きょうご紹介した以外にも、特定の団体や活動を支援するものなど、様々な形の支援が数多く行われています。

Q5、こうした様々な形で支援の輪が広がると良いですね。

【広がる寄付文化】
A5、日本は欧米諸国に較べますと寄付文化が根付いていないと言われます。

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寄付をする人の割合などのデータをもとにイギリスの団体が発表している世界各国の寄付活動のランキングです。一位は敬虔な仏教徒が多いミャンマー、次いでイギリス、マルタ、タイなどの順で、日本は126か国中64位に留まっています。
一方でこんなデータもあります。日本人が年間どれくらいの寄付を行ったかを示したものです。2009年は5500億円ほどでしたが、東日本大震災があった2011年には1兆円を超えました。その後は7500億円から8000億円くらいで推移しています。

Q6、東日本大震災があった時には、寄付をしようという人が一気に増えているのですね。

A6、この年は「寄付元年」と呼ばれました。この時の調査では成人の7割近くが何らかの寄付をしたと答えています。寄付文化に詳しい専門家にお話しを伺いました。

(日本ファンドレイジング協会 鵜尾雅隆代表理事)
「新型コロナウイルスに関連した寄付ですが、5月に入って急速に寄付が伸びてきているなという実感があります。日本で今回の新型コロナに関連した社会変化が、寄付行動にどんな変化をもたらすかはまだ誰にもわかりませんが、私は、選択して寄付する、困っている人、チャレンジしている人をみんなで支援するという経験そのものが、日本の寄付文化をまた一歩進歩させていくという可能性はあるのではと思っています」

程度の差はありますが、今、日本中の皆が様々な困難に直面しています。しかしこんな時だからこそ、困っている人達、弱い立場にいる人達、そして懸命に感染者の治療に当たってくれている医療関係者などへの感謝や思やりの気持ちが大切ではないでしょうか。
寄付という形でそんな人達を支援していく、そうした取り組みが広がることを期待したいと思います。

(出石 直 解説委員)

問い合わせ先:

▽「コロナ給付金寄付プロジェクト」

▽「新型コロナウイルス感染症拡大防止活動基金」

▽「CRISP CONNECT」CRISP SALAD WORKS

 

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