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「マンション管理で感染どう防ぐ」(くらし☆解説)

清永 聡  解説委員

緊急事態宣言が延長され、感染防止の取り組みが引き続き求められることになりました。多くの人が生活するマンションの管理を通じた対策についてお伝えします。

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【多くの人が出入りするマンション】
Q:私もマンションに住んでいますが。もし、感染が広がったらどうしたらいいのか心配です。

A:マンションは特に多くの人が出入りしますから、不安に感じる人も多いと思います。
5月に政府の専門家会議がまとめた提言の中に、「業種ごとの感染拡大予防ガイドラインに関する留意点」があり、感染防止策を検討する例として「タッチパネル、エレベーターのボタン、手すり、ドアノブ、電気などのスイッチ類」などを挙げています。これは事業者向けですがマンションもあてはまる内容がいくつもあります。

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Q:まずは帰宅したら手を洗うことですね。ただ、部屋の中は掃除や消毒など対策をとることができますが、エレベーターや手すりなどは共用部分です。

A:この「共用部分」どこまで対策すればよいのか、困っている人もいると思います。
そこで、様々な取り組みを進めている東京都内のマンションを取材しました。

【さまざまな取り組み進める管理組合も】
訪ねたのは東京・港区の芝浦地区です。大きなマンションが立ち並ぶ地域です。マンションの住民で管理組合法人の理事長、丹羽章夫さんです。丹羽さんが住むのはおよそ2000人が生活する大規模マンションです。
通路などには、いたるところに感染への注意を書いた紙が掲示されています。
ソファなどを備えた共用スペースは3月から使用中止にしたほか、消毒液も設置しました。
住民が打ち合わせなどに使う会議室も使用中止にしました。子供が遊ぶことができる部屋や中庭も利用を取りやめました。
消毒も始めました。清掃作業を行うスタッフに1日3回、タッチパネルやエレベーターのボタン、手すりなど共用部分の消毒を加えてもらいました。
一方で、対策が難しい場所もあります。
周囲には一般の人が通行できる歩道や座って景色を眺めることができるスペースが作られています。「公開空地」と呼ばれ、ここもマンションの敷地です。休みの日には多くの人が行き交います。こうした場所の対策はどこまで取るべきなのか、手探りの毎日です。

【マンションの感染防止はどこまで】
Q:管理組合は住民の代表です。役員に選ばれて新型コロナウイルスの感染防止に何をすればいいのか、悩んでいる人もいると思います。

A:丹羽さんは都心のマンションの管理組合の人たちで作る新型コロナウイルス対策の「研究会」にも参加しています。それだけに早い段階から対策をしているのですが、それでも丹羽さんは「外出とはマンションの各部屋から出ることであり、共用部分は準公共空間だと考えて利用禁止を行ったが、苦渋の判断だった」と話しています。

Q:そもそも、どこまでが管理組合の役割なのでしょうか。

A:多くの相談を受けているマンション管理士、土屋輝之さんに、今回様々な疑問点を聞いてきました。
土屋さんは「管理組合に感染症対策まで法的義務を負うとは考えにくいが、住民から強い要望もあって対策を迫られている管理組合も多い」ということです。

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【まずは管理会社と相談を】
Q:どのように対策を進めていけばいいのでしょう。

A:マンションの多くは管理業務を実際に行っている会社と契約をしています。まずは住民と管理会社の連携が大事だということです。
先ほどの丹羽さんのマンションでは会社と話し合って、ふだんの清掃の日数を減らす代わりに、消毒作業を追加してもらったということです。こういった交渉を会社側と行う方法もあると思います。
管理業務を行う会社側も「従業員の感染を防ぎたい」と考えています。勤務するスタッフの数を減らすことに住民も協力するなど、お互いに連携して、業務が続けられるようにすることも必要です。

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Q:日中は管理人さん1人だけとか、不在だというマンションも多いと思います。管理会社に相談しても消毒業者の手配ができない場合もあるのではないでしょうか。

A:その場合住民が手分けをして自分たちでやるか、独自に消毒業者を探すということになります。
ただし、自分たちでやる場合、薬剤に注意をしないと、塗装が剥げたり、変色したりすることがあるので注意してほしいということです。

Q:エレベーターの中は密閉空間ではないかと心配している人もいると思いますが。

A:エレベーターは換気扇や換気口が設置され、換気は行われているということです。ただし、寒い時期にスイッチを切っているところもあるそうですので、作動しているかどうかを確認してください。

Q:マンションの敷地の通路や広場に人が集まる場合も課題ですね。

A:「公開空地」は私有地ですが、公共性があります。勝手に立ち入り禁止にすることはできないということです。例えば、看板で密集しないよう協力を呼び掛けることはできると思います。(「さくら事務所」の対応例などによる)

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【患者が出たらどうなる?】
Q:一番みんな心配していると思うのが、もし、自分のマンションに患者が出たらどうなるのかということですが。

A:土屋さんによると多くの場合、個人情報であることを理由に行政がマンションの管理組合などに患者の発生を公表することはないということです。

Q:そうなんですか。

A:実際の相談で多いのは、別の部屋の住民から連絡があって判明するというケースだそうです。また、保健所は相談には対応しますが、マンションの共用部分も私有財産ですので、実際の消毒はしてくれないということです。

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Q:じゃあ、どうしたらよいのですか。

A:土屋さんはこういう場合、「まずは管理会社に連絡を取ること。そして会社を通じて、消毒作業を行う業者を呼んで、通路や出入り口などの消毒作業をしてもらうこと」と話しています。
したがって「万が一自分のマンションで患者が出た場合の対応も、事前に管理業務を行う会社と話し合い、消毒作業が速やかに行われるよう準備をしておく必要がある」ということです。

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もし、患者が発生して、マンションの管理会社が撤退してしまうと、ごみの回収など日常の生活にも影響が出る恐れがあります。それだけに事前に十分話し合っておくことが大切です。

【「マンションにもガイドラインを」の声も】
Q:対策は難しい点が多いですね。

A:さきほど紹介したマンションの丹羽章夫さんの研究会は、自治体に「管理組合が取るべき対策の指針を示してほしい。集合住宅での感染予防のガイドラインなどを作成してほしい」という要望を行っています。またできるだけ患者の発生についての情報提供もお願いしたい、としています。

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今週まとまった専門家会議の提言では、業種ごとのガイドライン作成を求めています。ただ今後は事業所向けだけでなく、マンションなど集合住宅向けにも、感染防止の取り組みについて、一定の指針は必要になってくるのではないかと思います。そのうえで、住民が協力して対策を進めてほしいと思います。

(清永 聡 解説委員)

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