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「続くマスク不足 うまく使うには?」(くらし☆解説)

水野 倫之  解説委員

新型コロナウイルスの感染拡大でなくてはならないマスク、手に入りにくい状態が続く。政府による全世帯への布マスクの配布も。マスクを有効に使うにはどうしたらよいのか。水野倫之解説委員の解説。

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国内メーカーは人員を増員し24時間体制で増産しているほか、異業種の参入も相次ぐ。
2月には輸入も含めて供給量月4億枚だったのが、4月は7億枚程度まで増えてはいる。

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しかし供給量をはるかに上回る需要があり、未だ手に入りにくい。
政府も需要を正確に把握できていないが、例えば国民が毎日1枚使うと月に30億枚以上必要になる計算で、作っても追いつかない。
原材料の不織布も高騰し、5円程度だった使い捨てマスク1枚の仕入れ価格は、50円程度と10倍に値上がり。
こうした使い捨てマスクの需要を少しでも抑えようと、政府は先月から再使用可能な布製マスクの配布。
でも、布マスクの効果疑問の声もあるほか、汚れや虫の混入が見つかり、一旦回収されることになり、全世帯に行き渡るには少し時間がかかる。
ただ専門家は、今のマスク不足の中にあっては、感染拡大防止のためにそれぞれのマスクの性能を知った上で無駄にすることなく上手に使っていくことが求められると話す。
そこできょうは一般的な、不織布を使った使い捨てタイプと、手作りされることも多い今回配布されるガーゼなどの布を使ったタイプのいわゆる衛生マスクの機能をみたい。

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まずこうした衛生マスクにウイルスの取り込み防止効果は期待できないと言われる。しかし不織布の使い捨てマスクのパッケージを見ると、「粒子・ウイルス99%カット」と書いてあるものが多い。
しかしさらに注意してみると必ず「感染や体内への取り込みを完全に防ぐものではありません」とも書いてある。
一体どういうことか。
不織布はプラスチックの材料のポリプロピレンなど。
その顕微鏡写真をみると繊維が何層にも重なっていることがわかる。
新型コロナウイルスは0.1ミクロン。この画像上だと鉛筆でちょんと書いた点ぐらいの小ささだが、このフィルターを通る間に静電気などによってほとんど捉えられるという。
99%カットと表記されたものは各メーカーが試験結果を載せたもの。
ウイルスと同じくらいの大きさの粒子が大量に集まった線香の煙を使ってNHKが以前独自に実験してみた映像を見ると、煙が不織布で止まっていることがわかる。
不織布マスクのフィルター自体の性能は高い。
なぜ取り込みを完全に防ぐものではないと書いてあるかというと、顔とマスクの間の隙間からの「吸い込み率」がポイントだという。

PM2.5の研究を通じてマスクの性能に詳しい聖路加国際大学の大西准教授に測定してもらった。
この測定はマスクの外側に浮遊している粒子の数とマスクの内側の粒子の数を計測し、どれだけ外側の粒子が入ってくるか測定する仕組み。
まず、私がいつものように鼻の部分をフィットさせてマスクをつけて測定すると吸い込み率は何と100%。顔との間に隙間だらけで外の粒子がすべて内側に入ってきていた。

これでは確かにウイルス取り込み防止効果はない。
大西准教授が不織布マスクを200人あまりにつけてもらって調査した結果、吸い込み率の平均は86%で全員が外側の粒子をマスクの内側に取り込んでいた。
そして私のような100%も半分以上いたということ。

このあと、大西准教授の指導を受けてマスクをつけ直して再度測定すると吸い込み率は66%まで下がった。

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取り込みを少しでも抑えるポイントは鼻とほお、それにあごの部分の密着度だという。
まず鼻の部分をアルファベットのWの形になるようにする。
次にひだを大きく広げてあごまで隠れるようにつける。
最後に鼻やほおの部分をよく押さえる。
先ほどの調査でもこうした指導を受けた後では透過率が66%になった。
ただ一般の人がこの透過率をゼロにするのは難しく、ウイルス取り込み防止効果は期待できないが、自分自身の飛沫を飛ばさないという重要な役割がある。
くしゃみを高感度カメラで撮影した実験映像みると飛沫がきらきらと漂い続け、近くの人が吸い込むと感染が広がる。マスクをしてみると差は明らか。新型コロナは感染しても症状がない人も多いと言われており、マスクをつけることで人にうつすリスクを下げることが期待できる。
その効果を上げるためにも顔と密着させ、漏れを低く抑えることが重要。
こうした点についてガーゼや布のマスクはどうか。

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ガーゼマスクの顕微鏡写真を不織布と比べると隙間が大きいことがわかる。
布自体にウイルス取り込み防止効果がない。
ただ飛沫飛散防止効果は期待できるが、隙間が大きい分、不織布のマスクより漏れ率は高くなるという。こうしたことを理解した上で、咳が出そうなとき前に人がいれば横を向くなど注意して使ってほしいと専門家は呼びかける。

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また布のマスクは洗って再利用できる大きなメリットあり。
経産省などが洗い方を紹介しているが、衣料用洗剤を水に溶かしてつけ置きし、その後押し洗いをします。
さらに漂白剤を使うと殺菌効果が高いと言うこと。
不織布のマスクも洗濯できなくはないが、原則使い捨てで、ガーゼや布マスクほど耐久性は高くないので、洗濯を繰り返して不織布が薄くなったものは使わないように。

さらに不織布も布マスクも共通のメリットとしてつけていれば、無意識のうちに手で口や鼻をさわってウイルスが入り込む接触感染を防ぐ効果も期待できるので今この時期、どんなマスクでもしないという選択肢はない。
それぞれの特徴を知った上で、上手に使ってマスク不足を乗り切ってもらえれば。

(水野 倫之 解説委員)

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