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「新型コロナウイルス ネットと適切につきあおう」(くらし☆解説)

三輪 誠司  解説委員

新型コロナウイルスについては、治療法はまだ確立していません。しかし、もしかしたら、感染しないための薬、重症化しないための食事があるかもしれないと思って、とりあえずネット検索しようという気持ちになるのもわかります。ただ、注意しなければならないことが多いように思います。一つは、デマや不確かな情報に注意すること。もう一つは、検索のしすぎが必要以上の不安につながるおそれがあることです。

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まずはデマについてです。象徴的だったのは、トイレットペーパーの品不足です。品不足になる直前、ネットでは「中国から輸入しているために品不足になる」という書き込みがありました。これは全くのデマです。しかし、それを拡散させる動きはほとんどありませんでした。

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そのころ拡散が目立ったのは「海外ではデマがきっかけとなって品不足になった」という写真つきのものでした。その翌日には、国内でもトイレットペーパーが全国的に品不足になってしまいました。

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理由として考えられるのは、ネットを見ていた人は、デマがきっかけになったかどうかはどうでも良くて、海外で品切れになったという事実、そしてインパクトの大きい写真に引きずられたと見られています。こうした現象を「予言の自己成就」といいます。

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正しくない情報であっても、それに人々が動かされることで、現実になってしまうことです。写真や映像とともに拡散するインターネットは、その傾向が強くなる危険性があります。今後も同じようなケースが出て来た時、デマに振り回されて、他の人が困るくらいに買い占めをしないようにしていただきたいと思います。

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こうした現象に巻き込まれないためには、やはり色々な情報を入手しけることが必要と思われるかもしれません。正確な情報を受け取る努力は必要ですが、やり方次第では別の問題も出てくると思います。それが情報収集のしすぎが必要以上の不安につながるおそれがあることについてです。

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ストレス対策とメンタルヘルスが専門の、東邦大学医療センターの小山文彦教授によりますと、不安を解消したいと思うあまり、ほしい情報に行きつくまで情報を検索しつづけると、大きなストレスにつながってしまう危険性があるということです。特に気をつけなければならないのは、「悲観的バイアス」。あらゆる情報を暗いものとして受け止めてしまう現象です。

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今、新型コロナウイルスに関する情報を検索すると、「死者の急増」や「経済破綻」への心配。さらに国や行政に対する不満、誰も助けてくれないのでどうしようという嘆きの書き込みがどうしても目に入ります。それらをずっと浴び続けると、あらゆる情報を、必要以上に悲観的に受け止めてしまうようになってしまいます。逆に「自分は大丈夫」などという楽観視もよくありませんが、悲観的になりすぎるのは過度のストレスを抱えてしまいます。

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こうした問題への対策として3点あげてみます。

1つ目は、「情報の入手先を決めておく」。健康情報の利用に関しては、インターネットが普及したときから、不確かな情報がネット上で流れ、大きな問題になっています。このため、何を信じたらいいのかという目安を様々な団体が示しています。いくつかのチェックポイントを紹介します。

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まず、ホームページの作成者、連絡先、そして情報の根拠が明示されている。また、いつの情報に基づいているのかが示されている。さらに、見解が異なる別の意見についても取り上げているということなどです。このほか、広告が出ていないこと、個人情報の提出を求めていないことも、ポイントになります。見るサイトは複数あってもいいと思いますが、その中には、厚生労働省や、公的機関のサイトを必ず入れておいて下さい。逆に、噂話を集めているサイトは見ないように決めたほうがいいです。広告費を稼ぐために、センセーショナルな見出しと突飛な内容を掲載しているところが少なくありません。

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2つめは、「検索によって答えが出なくても、焦らない」。新型コロナウイルスに関しては、答えが出ないことがあるのは当然です。自分の「調べ方が悪い」ということはありません。逆に、深夜まで検索し続けることで、生活リズムが乱れて、体調を崩す危険性もあります。もし、ご家族や友人で、SNSやネット検索をやりすぎている人がいたら、ぜひ声をかけてあげて下さい。「他の人は、もっと情報を持っているはずだ」とか「自分だけが知らないことがある」と思わなくていいです。少し検索して見つからなければ、「いまは答えがないんだな」と、いったんやめることをおすすめします。

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3つめは、基本的な対策を確実にすることです。たくさん情報を仕入れても実行することはできません。基本的な予防方法、まずは手洗いをこまめに丁寧に行う。また、密閉・密集・密接の「3つの密」を避ける。これを確実に行うことで、感染のリスクを下げることができているという実感を持つことです。ご家族などと「きょうもきちんと対策したね」と確認しあうのもいいと思います。今、誰もがとても不安ですから、できることを確実に行うことが安心につながります。

人々が情報を求めてSNSネット検索に走るのは、国などの発信する情報では満足できないということの現れでもあると思います。各地で緊急事態宣言が出され、しばらくは緊張した状態が続きますので、国や自治体には、これまでよりも丁寧な情報開示を求めたいと思います。

(三輪 誠司 解説委員)

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