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緊急事態宣言・経済対策 生活への支援は?

今井 純子  解説委員

政府は、おととい、7都府県を対象に「緊急事態宣言」を出すとともに、緊急の経済対策をまとめました。今井解説委員。

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【政府の緊急事態宣言ですが、対象は7都府県ですね】
はい。新型コロナウイルスの感染者が特に急増している地域が対象となりました。今後、増える可能性はあります。
宣言を受けて、対象地域の知事が、住民に不要不急の外出の自粛を要請しました。その上で、多くの人が利用する施設などについて、休業や自粛を要請できることになり、東京都は対象となる施設のあすの(10日)公表をめざしています。

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【外出の自粛要請ですが、罰金を伴う外出禁止の命令ではないのですね】
はい。海外のような、いわゆる都市封鎖=ロックダウンではありません。ですが、法律に基づく強い要請です。友人同士で集まって食事会をしたり、繁華街に行ったりすることは、これまで以上に重い意味合いで、自粛が求められることになります。
一方、生活に必要なものを買いに行く。病院に行く。職場に通勤する。といったことは、これまで通りできます。「屋外での運動」や「散歩」も大丈夫です。ただ、政府などは、できるだけ在宅勤務をするよう求めていますし、東京都の小池知事は、やむをえず外出する場合は、人との間隔を2メートルは確保するよう呼びかけています。

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【次に、休業を要請するという施設は、どのような施設が考えられるのですか?】
食料品などの売り場を除いたショッピングモールやカラオケ、スポーツジムなど幅広い施設が対象になる可能性があります。イベントの自粛も要請されます。身近なところでも、デパートやカラオケ、飲食店などの間で、臨時休業に踏み切る動きが急速に広がっています。

【食料品などの売り場は開いていますよね】
はい、食料品や医薬品など生活に必要なものを売っているスーパーやコンビニなどは原則、営業を続けるとしています。ただ、営業時間を短縮する動きはでてきています。金融機関や、鉄道・バスも、原則、これまで通り利用できます。

【普通の会社は?】
できるだけ在宅勤務をするよう求められていますが、工場や事務所で特に活動に制限はありません。

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ただ、働く側からみると、すでに自粛や臨時休業で、収入が大幅に減ったり、解雇・雇止めにあったりする人が増え、悲鳴があがっています。そこに、緊急事態宣言が出たことで、生活に行き詰まる人が相次ぐのではないかとの懸念が高まっています。
そこで、政府は、おとといまとめた緊急経済対策で、生活が厳しい世帯や、フリーランスを含めた個人事業主などに対して、「返す必要のないおカネを給付する」というこれまでにない対策を盛り込みました。

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【返す必要がないのですね】
そうです。まず、個人に対しては、一世帯あたり30万円です。
対象は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、今年2月から6月のいずれかの一カ月の世帯主の収入が、
▼ 年収に換算すると、住民税が非課税になる水準まで減った世帯
あるいは、
▼ 収入が半分以下に減って、年収に換算すると、住民税が非課税になる水準の2倍以下に落ち込んだ世帯が対象です。

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【年収に換算するということは、一番、収入が少なかった月の額に、12をかけた数字でいいのですか?】
そうなります。この住民税非課税の水準。自治体によって違いますが、例えば、東京23区内のざっくりしたイメージで言うと、「扶養家族が配偶者1人」というサラリーマン世帯の場合、156万円になります。ですから、実際の月収を年収に換算した額が156万円以下まで減った世帯が給付の対象になります。月収では13万円以下のイメージですね。
また、2つ目の条件になっている、非課税水準の2倍は、156万円の2倍で、312万円になります。ですから、年収500万円だった世帯が250万円の水準に半減したケースでは、312万円以下ですので、対象になります。
一方、年収700万円の世帯が350万円の水準に半減したケースでは、312万円を上回るので、対象外になります。

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【どういう方法でもらえるのですか?】
この基準に当てはまると思う人が、市町村の窓口に自ら申告する仕組みになります。収入が減ったことを証明する給与明細などの書類を提出すれば、原則支給を認める方向です。窓口が混雑して感染が広がらないよう、オンラインでも申請できるようシステムの整備を検討するとしています。

【こどもがいる世帯も、いない世帯も、同じ30万円ですか?】
はい。一世帯30万円です。ただ、子育て世帯に配慮して、別途、児童手当を受給している世帯を対象に、こども一人につき、1万円を上乗せすることも決めました。中学生までのこどもが対象で、「扶養家族が配偶者と子ども2人」のサラリーマン世帯の場合、おおむね年収960万円未満が対象です。これは一回限りで、自治体によりますが、早ければ6月の支給分に上乗せされることになります。

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【個人事業主への給付は、どのような制度ですか?】
事業を続けることを支援するために
▼ フリーランスを含む個人事業主に対して、最大100万円
▼ 中小企業には、最大200万円を給付する制度が新たに設けられました。
具体的には、
▼ 今年1月から12月までのいずれかの月の売り上げが、去年より半分以下に減った事業主が対象で、
▼ 売り上げの減少に応じて、具体的な支給額が決まる仕組みです。
これも自己申告で、原則、オンラインでの申請としますが、全国に会場も設けて、手助けを受けながら手続きできるようにする方向です。

【さきほどの30万円の給付金と、両方はもらえるのですか?】
条件に当てはまれば、両方の給付を受けることができるということです。
▼ また、個人事業主などが、事業用の資金を、政府系の金融機関から、実質無利子で借りられる制度について、今回、新たに、民間の金融機関でも借りられる制度ができます。
こうした対策については、問い合わせのための電話窓口が設けられました。

【電話番号は、03-3501-1544ですね】
はい。ただ、きのうは、問い合わせが殺到してつながりにくい状況になっていたようです。
このほか、対策では、
▼ 収入が一年前より20%以上減った中小企業や個人事業主などに対しては、法人税や所得税、社会保険料などの支払いを1年間猶予する措置も設けられました。

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今回、こうした対策のための補正予算案。財源は、すべて国債で賄うことになります。将来の負担にはなりますが、今この厳しい事態を国全体で支えあおうと考えだと受け止めたいと思います。

【給付金はいつもらえるの?】
すぐに給付してほしいという方が多いと思いますが、政府は、補正予算案を月内に成立させた上で、5月にも支給をめざしたいとしています。時間がかかる背景には、様々な条件が設けられたことがありますが、できるだけスピーディーに、必要なところに必要な支援がきちんと届くようにしてほしいと思います。そのうえで、この事態が長引くようであれば、給付金を追加する。あるいは、対象を広げるなど、次の対策も柔軟に検討していってほしいと思います。

(今井 純子 解説委員)


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