新型コロナウイルス対策 国民の理解と協力は?
2020年04月14日 (火)
太田 真嗣 解説委員
新型コロナウイルスの感染拡大で、政府は、国民に外出自粛などの協力を求めると共に、追加の緊急経済対策をまとめるなど、様々な施策を行っています。
こうした取り組みを国民は、どう評価しているのか。きのう(12日)まとまった、今月のNHKの世論調査をもとに考えます。
≪新型コロナウイルス 感染の不安は?≫
新型コロナウイルスの感染拡大に、なかなか歯止めが掛からない中、国民の不安は、さらに増しているといった感じです。
今回の調査で、「自分や家族が感染する不安を、どの程度感じているか」を聞いたところ、▽「大いに感じる」は49%、▽「ある程度感じる」は40%でした。これを、今年2月の調査から比較して見ますと、▽「不安を感じる」と答えた人は、今回、さらに増えて、全体のおよそ9割に上りました。一方、▽「あまり感じない」は7%、▽「全く感じない」は2%で、先月までは「不安を感じない」という人も2割程度いたのですが、今回は大幅に減りました。
安倍総理大臣は、先週、東京・大阪など、7都府県を対象に緊急事態宣言を行い、国民に一層の協力を求めています。当初は、お年寄り、そして、持病がある方の重症化が注目されましたが、最近では、若い人が感染するケースも目立っており、今回の調査では、10代・20代の人たちにも、危機意識が浸透していることが伺えました。
≪外出自粛 国民の協力は?≫
政府は、緊急事態宣言の対象となった地域の住民に対し、人との接触を、最低7割、極力8割減らすよう呼び掛けています。
ただ、今回の調査で、「人との接触を7割から8割減らすことができると思うか」を聞いたところ、▽「できると思う」は41%、▽「できないと思う」が48%となりました。職業別にみても、勤め人・サラーマンの人たちなどを中心に、多くの人が難しいと感じているのが分かります。
この『8割削減』という目標は、爆発的な感染拡大を防ぐのに必要な水準を計算して割り出されました。専門家は、これを実現するため、▽密閉、密集、密接といった、いわゆる3蜜の場面や夜の街は10割、▽外出は8割、▽仕事への出勤は7割、減らしてほしいと呼び掛けています。ただ、普通は、日々、会う人の数を数えている訳ではありませんから、具体的に、どのくらい減らせば8割減になるかは正直分からない。要は、個人として、『不要・不急の外出は控える』ということに尽きると思います。
一方、サラリーマンの方などで、「休みたいけど休めない」、あるいは、「在宅勤務ができる環境にない」という問題は、個人のレベルでは解決できず、企業、あるいは、社会全体での取り組みが必要です。一日も早い収束が将来のプラスになると考え、いまは、思い切り急ブレーキを踏み込むことができるか、そして、それが出来る環境を、いかに作っていくかが問われています。
≪政府の新型コロナウイルス対策 国民の評価は?≫
政府のこれまでの取り組みについて、その評価を聞いたところ、▽「大いに評価する」は8%、▽「ある程度評価する」は38%で、▽「あまり評価しない」は36%、▽「まったく評価しない」は14%でした。ちなみに、過去2回の調査では、「評価する」の方が多かったのですが、今回は、それが逆転した形です。
その理由としては、プラス・マイナス、様々な要素が挙げられますが、政府が緊急事態宣言を出したタイミングへの評価も影響していると思います。
今回の調査で、政府が緊急事態宣言を出したタイミングについて、どう思うかを聞いたところ、▽「適切だ」は17%。これに対し、▽「遅すぎた」は75%となりました。
政府は、「必要とあれば躊躇しない」としつつも、緊急事態宣言を出せば、国民の権利の一部を制限することになる。そして、何より、「国民生活や日本経済にパニック・混乱が起きるのは避けたい」として、医療・検査体制の整備、あるいは、経済対策のとりまとめの状況などを見ながら、慎重にタイミングを探ってきました。しかし、都市部で急速に感染が広がり、自治体側からも緊急事態の宣言を求める声が強まったことから、専門家の意見を踏まえ、宣言に踏み切りました。
ただ、国が宣言を行った後も、休業要請の範囲をどうするかで調整に手間取ったり、対象から外れた自治体から、対象に加えるよう求める声が上がったりと、一部では混乱も見られました。引き続き、国と自治体との一層の連携強化が課題です。
≪政府の緊急経済対策 現金給付の評価は?≫
政府の緊急経済対策への評価を聞いた結果、全体では、「評価する」という人が、あわせて半数近くに上り、「評価しない」を上回っています。
ただ、具体的な政策ついて聞きますと、まず、個人に対する支援では、世帯主の月収が、一定の水準まで落ち込んだ世帯などに限って1世帯あたり現金30万円を給付する、現金給付について、▽「大いに評価する」は8%、▽「ある程度評価する」が35%、だったのに対し、▽「あまり評価しない」は34%、▽「まったく評価しない」は16%で、「評価しない」という声が上回りました。
給付の対象や、金額などの評価に加え、制度が分かりにくいこと、そして、実際に、いつ給付が受けられるようになるかが、なかなか見えないことも影響しているように思います。
≪企業などへの支援策は?≫
一方、外出の自粛などに伴って、様々な企業、あるいは業種にも、深刻な影響が出ています。
そこで、今回の調査で、感染防止のためにイベントや活動を自粛した事業者の損失を国が補償することへの賛否を聞いたところ、▽「賛成」は76%、▽「反対」は11%という結果でした。
ただ、「自粛の影響をどこまで認めるかは難しい」として、政府は、『補償』という形ではなく、深刻な影響を受けている、▽中堅・中小企業に最大200万円、また、▽フリーランスを含めた個人事業主には最大100万円の給付金を支給する制度を設ける、としています。そうした中、東京都が営業の自粛に協力した業者に対する支援策を決めるなど、自治体レベルで、独自の対策を講じる動きもあります。
先ほどの個人への支援もそうですが、重要なのは、困っているところに、必要なものを早く届けることです。政府・与党は、野党側の協力も得ながら、来週中にも、補正予算を成立させ、実際に窓口業務などにあたる地方自治体などが、少しでも早く対応できるようにしたいとしています。
≪安倍内閣の支持率≫
今月の安倍内閣の支持率は、▽「支持する」が、前の月より4ポイント下がって39%、▽「支持しない」も、3ポイント下がって38%となりました。その分、「わからない・無回答」が増えており、国民として、「いまは、判断が難しい」といったところだと思います。
こうした中、いま、改めて求められているのは、『政治のリーダーシップ』と、『政治への信頼感』です。政治のリーダーシップは、政策実現のスピード、そして、政治への信頼は、国民の協力が得られるかどうかに直結しますから、国民目線に立った、十分な説明がより重要になっています。
(太田 真嗣 解説委員)
この委員の記事一覧はこちら
太田 真嗣 解説委員