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「長引く外出自粛  高齢者は楽しくフレイル予防を!!」(くらし☆解説)

飯野 奈津子  解説委員

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、不要不急の外出を控える国や自治体からの要請が続いています。長引く自粛生活で心配される高齢者のフレイルの予防策について、飯野解説委員です。

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Q1 タイトルに「楽しく」となりますね。

A1 外出自粛で気分が落ち込みがちですから、「楽しく」ということを少し意識してフレイル予防について解説します。

Q2 そのフレイル、高齢になって身体や心の働きが弱ってしまう状態ですね。

A2 そうです。その高齢者のフレイルが、外出を控えて、家で過ごすことが多くなることで、一気に進むのではないかと心配されているのです。

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誰でも年齢を重ねると徐々に心身の機能が衰えていきます。フレイルは介護が必要とまではいかないけれど、様々な機能が衰えてきた状態です。今回のコロナの問題で、家の中に閉じこもってばかりいると、食欲が落ちて低栄養になり、筋力が衰えていく。それによってさらに生活の動作が鈍くなって外出も難しくなる。そうした悪循環に陥って、一気にフレイルが進むのではないかと心配されているのです。2週間動かない状態が続くと、7年分の筋肉量が失われるともいわれています。

Q3 高齢者には、家に閉じこもることによる健康リスクもあるということですね。

A3 その点が、若い人たちとの大きな違いだと思います。
フレイルが進むと、身体の免疫力が低下して、感染症も重症化しやすいとされています。高齢者は、感染を防ぐことと同時に、フレイルが進まないよう、その兆候に早めに気付いて、予防を心がけて生活することがとても大事だということです。

Q4 フレイルの兆候、たとえばどんなことですか?

A4 実は、今月から75歳以上の高齢者を対象にフレイルの予防を目的にした健診が全国で始まることになっています。新型ウイルスの感染拡大で、対応が遅れているところも多いのですが、健診の時に使われる質問票が参考になります。たとえば、こんな質問があります。

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○6か月間で2~3キロ以上の体重減少がありましたか
○歩く速度が遅くなってきたと思いますか
○お茶や汁物などでむせることがありますか
○今日が何月何日かわからないことがありますか
体重が減ると低栄養の可能性がありますし、歩くのが遅くなったりむせたりするのは筋力の低下、日付がわからないのは認知機能の低下の恐れがあります。健診では、こうした状況を総合的にみてフレイルかどうかをチェックするのですが、ひとつでもあてはまれば、フレイルが始まっているかもしれないと警戒した方がいいと思います。

Q5 フレイルを防ぐために、どんな点に注意して生活すればいいのでしょうか。

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A5 規則正しい生活を送ることが基本ですが、特に気をつけていただきたいのが、「食事」「運動」「人との交流」この3つです。当たり前のようですが、家にいる時間が長く生活のリズムが崩れると、どれもおろそかになってしまいがちです。

まず、活力の源となる「食事」です。家に閉じこもっていると食欲が落ちて食べる量が減ったり、保存の利くカップラーメンなどが多くなって、栄養が偏ってしまいがちです。

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心がけてほしいのは、
★ 朝昼晩、3食しっかりとること。
★ 多様な食品をバランスよく食べること。
★ 特に高齢者は筋肉の量の減ることが心配なので、筋肉のもととなる良質なたんぱく質を意識してとることです。

Q6 タンパク質はどのくらい摂ればいいのですか?

A6 最低でも体重1キロ当たり1グラム、フレイル予防のためには1.2グラムから1.5グラムを毎日目指したいということです。体重60キロの人なら、目標にするのは、1日あたり70グラムから90グラムです。
たとえば、朝牛乳1本と卵1個、昼に生姜焼き2枚くらい、夜に焼き魚、このくらい食べてもたんぱく質の摂取量は1日60グラム程度ということです。これに納豆や冷ややっこ、ヨーグルトを加えたり、食後のコーヒーを、豆乳を入れた豆乳ラテに変えたりすれば、30グラムほど増やすことができます。

Q7 タンパク質が多く含まれる食品をちょい足しするのですね。

A7 ちょっとした工夫で摂取するたんぱく質が増えれば、何か得した気分になりますよね。無理せず楽しくということです。
そして、もうひとつ、食事との関係では、かむ力や飲み込む力を維持するために、口周りの筋肉を鍛えることも大切です。意識して噛みごたえのある食品を食べたり、好きな歌を歌ってみたり、早口言葉を練習したり。自宅で閉じこもって人と話をする機会が減ると、口周りの筋肉も衰えていくからです。
しっかり歯磨きをして口の中の清潔を保つことも必要です。虫歯や歯周病になると食事が進みませんし、口の中の細菌が出す酵素によって、のどや鼻の粘膜が壊され、感染症にかかりやすくなるという報告もあります。

Q8 健康のために心掛けること。二つ目は運動ですね。

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A8 運動することで、食事で摂ったたんぱく質が効率よく筋肉になるとされています。
★ 天気のいい日に、散歩に出かけたり、開放された場所で運動したりすることは、積極的に行ってほしいと思います。もちろん人込みは避けなければなりませんが、こうした外出は自粛の対象ではないとされています。外に出ると気分も晴れやかになります。
★自宅の中でも、座っている時間を減らすこと。一日中テレビを見てすごすのではなく、家の片づけをしたり、庭いじりをしたり。外出の機会が減った今だからできることをみつけて、意識して身体を動かすことを心がけてください。家がきれいになれば、得したという気持ちにもなります。
★テレビを見ながら体操や筋トレもできます。NHKでもテレビ体操の番組を放送しているので活用していただいてもいいですし、自治体が、ホームページで公開しているご当地体操も、それぞれ特徴があって楽しめます。佐賀弁でのラジオ体操を公開している佐賀市や、タオルを使ったオリジナル体操を公開している福岡県古賀市、全身の体操だけでなく口周りの筋肉を鍛える体操もあわせて公開している愛知県豊明市など。
自宅で過ごす高齢者のために、ご当地体操をホームページで公開する自治体が増えていますから、いろいろな地域の体操に挑戦してみるのも、楽しいと思います。

Q9 最後の3つ目のポイントが「人とのつながり」ですね。

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A9 はい。こんな時だからこそ、気の合う人と電話で話をしたり、メールや手紙をやりとりしたりして励ましあうことが必要ではないでしょうか。そうした関係が、何か困った時の安心感につながりますし、やりとりすることで気分が少しでも明るくなれば、食欲がわいて、身体を動かす気持ちにもなれると思います。
外出自粛の生活がまだ続きそうですから、無理せず、楽しくとういことです。

新型ウイルスの感染拡大で、高齢者が楽しみにしている地域の運動教室や食事会などの休止が続いています。気分も沈んでしまいがちですが、また元気に地域のお仲間と楽しい時間を過ごすためにも、この時期、フレイルを意識した生活を心がけてほしいと思います。

(飯野 奈津子 解説委員)

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