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「防災意識はどう変化~阪神・淡路大震災25年」(くらし☆解説)

清永 聡  解説委員

6434人が亡くなった阪神・淡路大震災から25年です。
NHKは今回、地震などに災害に関する世論調査を行いました。阪神・淡路大震災の教訓や、私たちの防災意識はどう変化したのでしょうか。4年ぶりに実施された調査結果から見ていきます。

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【震災から25年「覚えていない」人も】
Q:今回はどういう内容の調査でしょうか。
A:NHK放送文化研究所は災害への意識を探るため、東日本大震災の後、数年おきに同じ規模と方法で世論調査を行っています。今回は4年ぶりに実施されました。
去年9月から10月にかけて、全国の16歳以上の3600人を対象に配付回収法で行っています。67、7%にあたる2437人から回答を得ました。
この調査結果の中で今回紹介するのは、1つが阪神・淡路大震災から25年が経過して今、何が課題かという点。もう1つは過去の調査と比較して、防災への意識がどう変化しているのかという点です。

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Q:最初は阪神・淡路大震災についてですね。
A:まずは「あなたは、阪神・淡路大震災の発生当時のことを覚えていますか」という質問です。岩淵さんは覚えていますか?
Q:もちろん覚えています。当時、テレビで被害の様子を見てあまりの被害に驚いた記憶があります。
A:ただ、世論調査だと、「はっきりと覚えている」「ある程度覚えている」を合わせた「覚えている」という回答は76%でした。

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Q:みんなじゃないんですか。
A:25年たちますから、調査対象の8%が当時生まれていなかったと答えています。それから「あまり覚えていない」「まったく覚えていない」という人も合わせて16%に上ります。
この調査結果、近畿地方だと「覚えている」と答えた人は84%と全国平均よりも高くなります。地域差もあることが分かります。

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ただ、当時生まれていなかった人はこれからも増えてきます。そうなると、震災の記憶を持つ人の割合は、反対に減っていくでしょう。それだけに、当時の体験を若い世代に伝えることの大切さが、調査結果からも分かると思います。

また、今回の調査では「亡くなった原因で最も多かったのは何だと思いますか」という質問もしています。これに対して、半分近い46%が「火災」と答えました。
しかし実際は、全体の8割以上が倒れた建物や家具などによる“圧迫死”が死因だったとみられています。阪神・淡路大震災の特徴と当時言われた死因を正しく認識していない人も多いという結果になりました。

【耐震対策は進まず】
Q:阪神・淡路大震災では、特に古い建物の倒壊が相次ぎました。
A:これを教訓に平成7年に「耐震改修促進法」が作られました。この法律は、住宅や多くの人が利用する建物の耐震化を目的としています。
ところが今回、自宅が昭和56年より前の古い耐震基準で建てられた人に「耐震補強をしていますか」と質問したところ、「耐震補強した」と答えたのは、わずか12%でした。
また、全員を対象にした「災害への備えとしてどんな準備をしていますか」という質問でも「家具や家電などの転倒防止措置」は21%にとどまっています。

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Q:対策が十分とはいえませんね。
A:特に都市部を襲う直下型地震の場合は、建物や家具などの下敷きになって命を落とす危険が高い、ということを忘れないでほしいと思います。

【過去の調査とどう変化】
Q:それから過去の調査結果と比較できるということですが、今回は、どんな違いが見られたのでしょうか。
A:例えば、「都道府県や市区町村が作った、避難場所を示す防災マップやハザードマップを見たことがありますか」という質問です。
「見たことがある」と答えたのは65%。平成23年の調査より16ポイント上昇しています。地震や津波だけでなく、大雨による浸水や土砂災害など、自治体がさまざまなハザードマップを公表し、認識が広がったのだと思います。
Q:今はネットでもハザードマップを見ることができますね。私も自宅や実家の周辺のハザードマップを何度も見ました。

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A:一方でこんなデータもあります。「自宅に家族全員が何日くらい過ごせる食料と飲料水がありますか」という質問です。「まったくない」と「1日~2日」という答えを合わせると、全体の半分近くに上りました。

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平成27年の調査結果と比べると「1週間以上」備蓄しているという回答は減っています。反対に「1日から2日」という答えが増えています。
国は最低3日分、できれば大規模な災害に備えて1週間分の備蓄が望ましいとしています。備蓄への意識は残念ながら後退しているという結果でした。

【助け合い「期待できず」が過半数】
Q:ほかにはどうでしょうか。
A:社会の変化を反映したこんな調査結果もあります。「大きな災害が発生した際の住民どうしの助け合いはどの程度期待できるか」という質問です。
これに対して「まったく期待できない」と「あまり期待できない」を合わせた「期待できない」という回答が52%に上りました。
これは平成27年の調査結果と比べて、8ポイント増えています。

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Q:どうしてこうなったのでしょう。
A:住民どうしの助け合いを進めるうえで、何が不安かも聞きました。もっとも多かったのが「高齢化がすすんでいるから」でした。

【急激に進む高齢化と各地の取り組みは】
阪神・淡路大震災の時には、崩れた家の下敷きになった人を近所の人が救助したケースが多く、「共助」の重要性がクローズアップされました。
この時、つまり25年前と現在を比較してみると、日本の総人口はほぼ同じです。ところが、65歳以上の高齢者の数はおよそ2倍に増えています。特に若い人が減っている地域では、高齢化の不安を反映しているとみられます。

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Q:でも、災害時の「共助」は欠かせません。どうしたらよいのでしょうか。
A:高齢化する地域の防災対策は、全国で課題になっていて今、独自の取り組みも行われています。
こちらは消防庁の「防災まちづくり大賞」を受賞した地域の例です。
仙台市の「仙台八木山防災連絡会」では病院や福祉施設、中学校など40以上の団体で防災組織を作っています。住民以外の若い人たちにも支援に加わってもらおうという狙いです。
10年以上前から続いていて、東日本大震災の時には、高齢者への水の配布などボランティア活動も行われました。
それから、川崎市立川崎高等学校は生徒や教職員が、地元の大島地区連合町内会と連携して、万が一の救助者として活動する訓練などを行っています。
共通しているのは、様々な団体と連携することで、高齢化を乗り切ろうという試みです。

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それから高齢者自身で取り組みを進めている地域もあります。
千葉県市原市の高滝地区の防災組織です。住民の半分が高齢者ですが、高齢者が自ら高齢者を救う「救友会」を作りました。キーワードは「老老救助」。定期的に救命処置などの訓練を行っています。
ほかにもドローンを使って、上空から救助を求める人を速やかに発見することなど、お年寄りでもできることは何かを検討しています。

【個人と地域の対策を】
Q:みなさんお元気ですね。
A:高齢者が多い過疎地域でも、あらかじめサポートが必要な人と手助けが可能な人で役割を決めておくなど、いろんな取り組みがあります。
今回の世論調査を通じて改めて見えたのは、「個人」と「社会」という2つの課題です。
阪神・淡路大震災から25年で社会の高齢化は進んでいます。それでも、各地の事例も参考に地域での「共助」の取り組みを工夫してほしいと思います。

(清永 聡 解説委員)

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