NHK 解説委員室

解説アーカイブス これまでの解説記事

「縮まらない男女格差 女性の政治参加を」(くらし☆解説)

二村 伸  解説委員

ことしはアメリカ大統領選挙の年です。来月には予備選がスタートし、民主党の大統領候補指名争いはさらに激しさを増しそうですが、初めての女性大統領の誕生なるかも注目点の一つです。世界ではすでに女性がトップに立っている国も増えていますが、日本は女性の政治参加が各国と比べて大きく見劣りしているということです。女性が活躍する世界の例を見ながら日本の今後について考えます。

k200108_00mado.jpg

Q.日本の女性の政治参加が進んでいないということですが、各国と比べてどれだけ違うのですか?

先月18日に世界経済フォーラムが発表した「グローバル・ジェンダー・ギャップ・リポート2020」、世界の男女格差の報告書では、各国の男女平等の度合いをランキング付けしています。

k200108_01.jpg

トップ3は、アイスランド、ノルウェー、フィンランドの北欧3か国です。アイスランドは11年連続の1位です。これら3か国の共通点はいずれも女性が首相をつとめていることです。フィンランドでは先月、3人目の女性首相が就任しました。

k200108_02.jpg

サンナ・マリン首相は、1985年11月生まれですので、34歳になったばかりです。学生時代から市議会議員をつとめ、27歳のときに市議会議長となり、30歳で国会議員に選出されました。

Q.日本は何位なのですか?

k200108_03.jpg

ランキングではアメリカが53位、ロシアが81位、101位に中国、そして韓国、インドときて日本は153か国中121位です。このランキングは、政治への参加と経済活動への参加、教育の達成度と健康・生存率の4つの分野で14項目にわたって数値化し順位付けしたものです。

k200108_04.jpg

分野ごとの順位では、政治への参加が144位です。政治家や国会議員の数で男女の差が大きく、女性の政治参加が進んでいないことが日本の全体の順位を押し下げています。

Q.153か国中144位ですか。

初めて報告書が出された2006年には83位でしたが、年々順位を落とし、日本より下はイランやレバノンなど9か国しかありません。世界の国々で女性の政治参加が進んでいるのに対して日本ではなかなか進んでいないことがこうしたデータからも読み取れます。国会議員の数を見ますと、日本の衆議院にあたる下院と一院制議会の女性議員は世界の平均が25%、つまり女性が4人に1人で、南北アメリカは3割をこえていますが、日本では衆議院の女性議員は1割にすぎません。去年、世界の女性国会議員の比率が日本は193か国中165位で先進国の中で最下位だというニュースも話題になりました。女性の活躍推進を掲げてきた安倍政権の女性閣僚は現在3人です。

Q.日本の順位は衝撃的ですね。

経済の分野でも日本は115位にとどまっています。女性管理職も増えつつありますが、国際標準にはほど遠いのが実情です。

k200108_05.jpg

報告書をまとめた世界経済フォーラムは、男女の平等なしに経済成長と持続可能な社会の実現は不可能だとしています。女性を含むあらゆる人の能力を活用することが経済成長につながるからです企業はすべての人に平等に機会を提供し、スキルアップのための投資をすべきであり、政府は男女の区別なくリーダーシップが発揮できるような多様性のある社会を形成するための政策を作成すべきだと報告書は指摘しています。
報告書はまた、この半世紀で4割以上の国で女性の政治指導者が誕生したものの日本やイタリア、アメリカなどの先進国でまだ女性の首脳が現れていないと指摘しています。アメリカでトランプ大統領に挑む民主党の大統領候補者指名争いには女性4人が名乗りを上げていますが、初めての女性大統領は誕生するでしょうか

Q5. ニュージーランドの首相が産休を取得したことが話題になりましたが、世界では多くの女性が政治の世界で活躍しているのですね。

k200108_07.jpg

大統領や首相を数えると現職では20人近くに上っています。
北欧以外にもドイツのメルケル首相をはじめ数多くの女性指導者がいます。アーダーン首相は、世界で初めて首相在任中に産休を取得したことで話題になりましたが、ニュージーランドでは、女性議員が4割をこえ、国会の本会議場で赤ちゃんに授乳をすることも認められるようになりました。

Q6.日本では考えられないですね。

日本では3年ほど前に熊本市議会で、生後7か月の赤ちゃんを議場に連れて行こうとした議員が入場を認められず海外でも話題となりました。日本では普通のことと思われていたことも海外から見ると特殊なことが少なくないのですね。女性議員が増えればこうした慣例や古くからの決まりも見直されていくのではないでしょうか。

Q7.海外では女性の経験や才能を活用する政策がとられているのですね。

k200108_08.jpg

フィンランドのマリン首相は貧しい母子家庭で育ち、親戚の中で大学に入学したのは一人だけだそうです。その後女性の同性カップルに育てられ、「レインボー家庭で育ったからこそ平等の大切さがわかる」と話しています。レインボーは性的マイノリティーの意味ですが、どんな環境に置かれても誰にでもチャンスが与えられるのですね。首相はまもなく2歳になる女の子の母親でもあります。6日には「家族との時間をもっと持つべきだ」と述べ、週休3日制や1日6時間労働制の導入を検討しているとも報道されました。政府の正式議題ではないということですが、大きな反響を呼んでいます。フィンランドでは主要8政党のうち5つの政党の党首が女性で、閣僚も女性のほうが多いのです。性別や年齢は関係がないのですね。

Q8.日本ではどうやったら女性の政治参加が進むのでしょうか?

去年5月、「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」が施行されました。衆参両院と地方議会の選挙で男女の候補者をできる限り均等になるように目指すというもので、自治体や政党が目標を定めて取り組むことになっています。ただあくまでも自主的な取り組みであり政党によって温度差があります。また、性別だけでなく年齢や当選回数に縛られず能力主義による登用が求められることは言うまでもありません。

k200108_09.jpg

上智大学の三浦まり教授は、日本で女性の政治参加が進まないのは、政権交代など政党間の競争がなく、新陳代謝が進まないからだと話しています。
女性議員が増えれば育児や就労など女性の視点に立った政策が進められるようになるほか、男性議員の競争が激しくなり、結果として議員の質が向上すると言います。
そのために必要なのが一定の議席数を女性に割り当てるクォータ制の導入だと教授は指摘しています。北欧で女性議員が多いのもクォータ制によるところが大きく、ノルウェーでは法律で一般企業にも導入され、女性の社会進出が進んだと言われます。

少子高齢化が進む日本の将来を切り開くためには女性や若者の力が不可欠であり、女性の活躍推進を掛け声だけに終わらせないためにも世界のトップ10入りを目指すくらいの思い切った改革が迫られていると思います。それには政治家も有権者も意識の改革が何よりも必要ではないでしょうか。

(二村 伸 解説委員)

キーワード

関連記事