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「周期表誕生150年 元素は今」(くらし☆解説)

水野 倫之  解説委員

今年は周期表の誕生から150年の国際周期表年。113番のニホニウムを発見した日本は、今新たな挑戦を始めています。水野倫之解説委員の解説。

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周期表の原型は150年前にロシアで考案。
これを記念して、ユネスコが今年を国際周期表年と位置づけ、記念の国際会議がきのう都内で開かれた。日本からはニホニウムに関わった研究者、また欧米やロシアなどから400人が集まり、周期表の重要性を訴えていた。
現代の周期表には118番まで載っている。
元素の種類は原子核の中の陽子の数で決まる。

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周期表は陽子1個の水素から軽い順に並べられ、縦の列には性質がよく似た元素が配置。
一番左の列はナトリウムなど激しく反応する元素が、また一番右はほとんど反応しない元素が並んでいる。
科学者はこの周期表を見ながら様々元素を組み合わせて新しい材料を作り出してきた。
科学の発展には欠かせないもの。
まだ物質の知見が少なかった中世に錬金術がはやったがうまくいかず、物質には変えられない基本単位があることがわかり、19世紀に入ると物質は原子でできていて、その種類を示す元素の概念。
そして1869年、ロシアの化学者メンデレーエフが、当時知られていた63種類の元素を記したカードを並べていたところ周期性があることに気づき、周期表の原型を考案。
ところどころに?マークがあり、重さから、まだ見つかっていない未知の元素があることを予言して、空欄にしていた。

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その後、空欄に当てはまる天然の元素が次々に発見され、彼の予想が正しかったことが証明。

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こうして1939年までに、92番のUまでの天然にある元素はすべて発見され尽くした。
93番以降は人工的につくられた元素。
元素は原子核の陽子の数で決まるので、元素同士合体させて重い元素作ろうと20世紀後半以降、加速器を使った人工元素の発見競争が激しくなる。

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しばらくは欧米ロシアが発見を独占、日本の理化学研究所のチームがようやく一矢を報いたのが113番のニホニウムだった。

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チームは30番の亜鉛を83番のビスマスにぶつける方法で挑んだが、原子核は1兆分の1cmと小さく合体確率は100兆分の1と極めてわずか。
チームは高性能の検出器を開発するなどしてようやく発見でき、2016年に日本由来の名前を初めて周期表に載せることができた。

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でもチームの挑戦はこれで終わりではない。
新たな元素の合成実験を始めたと聞き、理化学研究所を訪ねた。

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理研は埼玉県和光市の最寄り駅から徒歩10分あまり、初めて訪れる人でも必ずたどり着けるよう、今年あるものが整備された。
それがニホニウム通り。
元素記号が番号順にプレートに刻んで歩道に埋め込まれている。
これはニホニウムがここ和光市で合成されたことを記念して、和光市が国際周期表年の今年完成させた。
途中周期表のモニュメントを見ながら歩いていくと113番のニホニウムの記念碑があるのが理研の門というわけ。
実験担当の森本さんと、加速器担当の上垣外さんが案内してくれたのが、未知の119番元素を検出する装置。

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今回チームは足して119になる組み合わせとして23番のバナジウムを96番のキュリウムにぶつける。
バナジウムが装置の中を1秒間に1兆個左へ移動し、容器の中に仕込まれたキュリウムに衝突。
そしてさらに移動しながら周りの磁石によって不純物が取り除かれ、119番元素を検出しようという。

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中断されていた実験は今月17日から再開される予定で、早ければ来年中にも見つかるかも。
119番どんな元素かは作ってみなければわからない。
ニホニウムと同じように不安定で1秒以下で別の元素に変わってしまうと予想され、すぐには役に立たないかも。

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ただ人工元素の中には寿命がある程度長いものもあって、たとえば95番のアメリシウム、できた当初は役立つかどうかわからなかったものが、煙感知器のセンサーとして使われたという例も。

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ただ多くの科学者は、
元素は一体何番まで作ることができるのか、限界はあるのか。
これを探究していく基礎研究として挑戦。
また日本がこうした挑戦を続けることで、科学に関心を持つ若い人が増えることも重要。

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実際に、3年前ニホニウムの命名を知り、元素の虜になった高校生。
罍(もたい)穂乃香さん、都内の高校に通う1年生。
ニホニウム誕生の研究過程を自ら調べていくうちに元素が大好きになって、118番まですべて覚えただけでなく、感動のあまりニホニウムというピアノ曲を作曲。
理研の研究者や、加速器を思い浮かべながら、楽譜を書いた。
きのうの国際会議で世界の科学者を前に披露。
演奏が盛り上がる場面は、ニホニウム合成や命名の瞬間をイメージしていると言う。
今も全国の科学館を巡り、元素の標本を見たりするのが楽しいと言う罍さん。
将来の夢はピアノも作曲もできる科学者になりたいという。

国際会議ではほかにも若者の発表がありました。こうした若い人たちが出てきただけでも、ニホニウムや新しい元素の挑戦は十分意味があると思う。
未知の元素を巡っては海外との競争も激しいが、日本がいち早く合成に成功し、若者に夢を与え続けてほしい。

(水野 倫之 解説委員)

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