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「災害時の電源にも?エコカー新時代」(くらし☆解説)

土屋 敏之  解説委員

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◆一昨日(4日)まで開かれていた東京モーターショー
 モーターショーというと以前は走行性能や走る楽しさなどが前面に出ている印象がありましたが、今回は多くのメーカーが電気自動車などのエコカーを一番目立つ場所に展示し、走るだけではない価値をもアピールしているのが特徴的でした。

◆エコカーにも色々な種類

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 日本ではエコカーとして例えばハイブリッドやプラグインハイブリッド、電気自動車、燃料電池車というのも市販されています。
 このうち、ハイブリッドとプラグインハイブリッドはエンジンと電気のモーターの両方がついていて、普通の車と同様ガソリンスタンドで給油できる特徴があります。加えてプラグインの方は、電気をコンセントなどから充電して走ることもできる点が異なります。電気自動車はモーターだけで、バッテリーにためた電気で走るので、ガソリンスタンドではなく充電スポットなどでチャージすることになります。燃料電池車は燃料としてガソリンではなく水素を使いますが、水素を燃やして直接走るのでなく、それで発電した電気でモーターを回して走るのでこれも一種の電気自動車と見ることもできます。一般の電気自動車より航続距離が長いなどのメリットがある一方で、燃料補給には水素ステーションが必要で、それがまだ全国で100カ所あまりと設備の普及が課題です。

◆「エコカー」というからには環境によい?

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 よく言われるのは大気汚染物質や、温暖化につながるCO2の排出ですが、ガソリン車と比べるとハイブリッドやプラグインハイブリッドは走行中のCO2排出量はかなり少なく、見方を変えれば燃費もよくなります。そして、電気自動車や燃料電池車は走行中のCO2は基本的にゼロということになります。ただし、エコカーの製造や電気を作る発電所でもCO2は出ていますので、本来はトータルで考える必要があり、一般的にはある程度以上長く乗ると走行時に排出しない効果が上回ってトータルでもエコカーの方がCO2が少なくなるとされます。

◆なぜ最近はこれだけエコカーが次々出てきている?

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 まずメーカーにとって切実なのが海外の環境規制の強まりです。欧州では走行距離あたりのCO2排出量に基準が設けられて、今後は普通のガソリン車では達成不可能に近い水準になっていくと見られています。またアメリカでもカリフォルニア州などがメーカーに販売台数のうちの一定の割合、エコカーを売ることを義務づける「ZEV規制」を打ち出しています。つまり販売を伸ばすにはエコカーを積極的に売り出していく必要があるわけです。

◆国内の動きは?

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 再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度で、ちょうど今月から家庭用太陽光などの買い取り期間の10年が順次終了して、電気が売れなくなる世帯が増えていきます。その電気の活用法として車への充電というのがあります。また、車のバッテリーを家庭用の蓄電池のように利用する方法もあります。特に最近は災害で大規模な停電が相次いでいますが、こうした停電の際に電気自動車や燃料電池車、プラグインハイブリッドなどを電源として使えることをメーカーは新たにアピールしています。

◆エコカーが非常用電源になる?

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 家庭用の電気と同じAC100Vを供給できるエコカーが増えていて、そうすると携帯の充電などに限らず、多くの家電機器が使用可能になります。
 ただ、電力供給ができない車種もありますし、できるものでも「V2H」等と呼ばれる制御機器が必要な場合もあり、それぞれの車で確認をしていただきたいと思います。

◆停電しても家電製品が使えると便利
 車種やバッテリー容量によりますが、一般家庭の消費電力のおよそ1日分から1週間分ぐらい供給できます。

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 また、家に太陽光発電がついていれば、電気自動車やプラグインハイブリッドはそこから充電できるため日数の制限もなくなります。日中は、太陽光パネルから直接家電に電気を送りつつ、あまった分は車に貯めておいて、夜間はそこから家に戻すという形です。もちろん、水害で車自体がダメになったり役立たないケースもありますが、これだけ災害が多発する中で、いざという時に電気が使える可能性を高められるなら、お金を払ってもよいと思う人は増えていくかもしれません。

◆最初から蓄電池を買えばいいのでは?
 住宅用の蓄電池も停電に備える選択肢と言えます。ただ、それなりの容量のものは100万円ぐらいはすることもあり現状まだ十分普及していません。車にそうした機能がついていれば一石二鳥だという考え方もあります。とは言え、こうした使い方ができるエコカーも300万円以上はしますし、さらに太陽光パネルや制御機器まで合わせると相当な金額になり、やはり普及は価格次第とも言えます。一方で最近は若い世代の「車離れ」といったことも言われている中で、メーカーにとっては車に新たな付加価値を付けられる意味もあるように思います。
 車がある意味では、「エコで災害に強い生活」のカギを握るインフラになるかもしれないということで、自動車というと排気ガスやディーゼル粉塵など環境問題と対立してきた面があるわけですが、ひとつの転換点と言えるかもしれません。

(土屋 敏之 解説委員)

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