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「消費増税1か月 消費への影響は?」(くらし☆解説)

今井 純子  解説委員

あすで、消費税率引き上げから1か月です。今井解説委員。

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【どのような影響がでているのですか?】
まだ、はっきりしていないことも多いのですが、今の時点でわかる影響について、「かけこみ需要とその反動」「新しいポイント還元制度と軽減税率の影響」そして「物価の動向」。こうした観点から見ていきたいと思います。まず、駆け込み需要と反動です。

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【増税前の駆け込み需要は、盛り上がったのですか?】
売っている商品によって、かなり違いがありました。
デパートと家電製品の販売の推移を見てみます。

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いずれも、9月の販売が、前回、消費税率が8%に上がった時と同じくらいの盛り上がりでした。
というのも、デパートや大手の家電量販店には、駆け込みとその反動を抑えるための政府の対策がありませんでした。ですから、
▼ 高級腕時計や高級ブランドのバッグ、宝飾品。
▼ それから、テレビ、冷蔵庫、洗濯機。
こうした高額の商品を、増税前に買おうという人が、今回も多かったようです。

一方、スーパーや自動車販売はこちら。

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【前回の増税の時と比べると、控えめですね】
はい。駆け込み需要がなかったわけではありません。
スーパーでは、化粧品や布団などに駆け込みがありましたが、売り上げの多くを占める食料品は、今回軽減税率が導入され、税率が据え置きとなりました。
また、自動車も、一定のかけこみはありました。ただ、今回、増税後に買った場合、毎年払う「自動車税」が恒久的に減税になる対策がとられました。このため、増税後に買った方がお得というケースもありました。
こうしたことから、スーパーや自動車は、全体では、駆け込み需要が抑えられた形です。

【増税後、反動減がでているのは、やはり、駆け込み需要が大きかったところですか?】
そのようです。まだ、統計はでていませんが、個別に、いくつかの店に聞いたところ
▼ デパートでは、駆け込みが大きかった宝飾品や高級時計などを中心に、10月の前半の売り上げが、全体で、一年前と比べて30%前後落ちている。
▼ 家電量販店も、テレビや冷蔵庫、洗濯機について、直近までの売り上げが20%前後、落ち込んでいるという声が聞こえてきました。

【心配ですね】
ただ、10月は、台風の影響で首都圏で、店を閉めたところも多かった。その影響も含んでの数字です。消費の現場からは、全体的にみると売り上げは少しずつ戻ってきているし、12月には、書き入れ時の年末商戦が控えている。東京オリンピック・パラリンピックに向けて、新しい鮮明な画像のテレビへの買い替えの関心も高い。年末ごろには平年並みに戻るのではないか。そのような期待の声も聞こえてはきます。

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【次に、新しく始まったポイント還元制度の影響は、何かでているのですか?】

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はい。この制度。参加している中小のお店で、クレジットカードや電子マネー、スマホ決済で支払いをすると、税込み価格の5%分。コンビニなどフランチャイズの店だと、2%分が還元される制度です。その分は、政府の予算で対応する仕組みです。参加する店は、あすまでには、64万店になる見込みで、政府の当初の想定を上回って、一日、平均、10億円が利用者に還元されているということです。参加の登録申請は、増えていますので、利用はもっと広がりそうです。

【予算をオーバーしそうだというニュースを見たのですが、そうしたら制度が終わってしまうのですか?】
政府は、もし足りなくなったら、追加の予算措置を検討する考えを示していますので、途中で打ち切られる心配はないと思います。

【私も、コンビニでは、必ずカードを使うようにしています】
ポイント還元を受けたいという人が増えていることから、大手のコンビニでは、増税後に、キャッシュレスでの決済比率が5ポイントから7ポイント程度、上がったということです。
この制度については、クレジットカードを持てない人。それから、スマホ決済に慣れていないお年寄りなど、利用できない人がいて不公平だ。とか、これだけの税金を投入する効果があるのか、といった批判はありますが、一方、参加している店側からは、増税前より安く買えるというお得感があることで、増税後の消費を支える一因になっている、という指摘もでています。

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【次に、軽減税率では、どのような影響がでていますか?】

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まず、食料品では、駆け込み需要や反動減はみられませんでした。加えて、外食は10%に上がりましたけれど、持ち帰りや宅配は軽減税率が適用されましたので、例えば、
▼ 注文の中で、持ち帰りの比率が、10月に入って4ポイントほど増えたという店や
▼ 宅配の販売額が10月の初旬に大幅に増えたという店もあります。
つまり、外食を控えても、持ち帰りや宅配で買うという動きがでているようです。
この軽減税率も、線引きがわかりづらい。とか、8%で食料品を買って、店内のイートインコーナーで食べる人を、「イートイン脱税」と批判する声が上がるなど、一部混乱もあります。ただ、この軽減税率についても、店側から消費を支える一因になっているという指摘はでています。

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【最後は物価。増税で物価は上がっているのでしょうか?】

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おととい、増税後の10月の東京都区部の消費者物価の速報値が公表されたのですが、一年前と比べて0.5%の上昇と、9月と変わりませんでした。

本来は、2%の増税分から、軽減税率の対象、幼児教育無償化で物価が押し下げられる分などを除いて、9月と比べて、0.1~0.2ポイントくらい上がってもおかしくないとみられていました。ですが、家電量販店では、増税後に需要が落ちている冷蔵庫や洗濯機などを値引き販売する動き。そして、外食でも、本体価格を2%分値下げして、税込み価格を据え置く動きも見られました。人件費が上がっていることなどから、増税分以上の値上げをした企業もありますが、全体では、このように値上げを抑える動きが強かったようです。

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【それは、消費者からみるとありがたいですが、結局のところ、増税で消費が冷え込んで景気が悪くなるのではないか、という心配。今のところどう見たらいいのですか?】
経済の専門家の間からは、前回ほど消費の落ち込みが長引いて、大きく景気の足を引っ張ることはないのではないか。という見方もでています。ただ、もともと消費者の節約志向が続いています。また、台風などの影響も心配されています。ですから、景気の今後については、もう少し消費などの動向を見極める必要があると思います。

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さらに来年6月末には、政府のポイント還元策が終わり、そこでまた増税の重みがのしかかってきます。消費を本格的に支えるには、いつも言っていることですが、全体的に賃金を上げていく取り組み。そして、社会保障など将来への不安を取り除く取り組み。そうした根本的な取り組みが欠かせないと思います。

(今井 純子 解説委員)

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