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「ヒアリ国内定着!?対策を急げ」(くらし☆解説)

土屋 敏之  解説委員

▼2年前に国内で初めて見つかったヒアリが今、深刻な状況に

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 先週21日の会見で菅官房長官は「これまでとは次元の異なる事態」だと強い危機感を表しました。強い毒を持つ外来アリ・ヒアリは2年前に神戸港で陸揚げされたコンテナから初めて見つかって、以後九州から北海道まで14都道府県で40回以上、主に港湾部で見つかっています。
 ただ、これまではヒアリが見つかってもその都度駆除され、少なくともその周辺にはもういないと確認されていました。

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 ところが今回は様子が違います。先月10日に東京都江東区にある青海ふ頭コンテナヤードで、地面の舗装の継ぎ目にヒアリが出入りしているのが確認されて以降、駆除をしても周辺を調べるとまた見つかる、という状況が繰り返されて、これまでに少なくとも800匹以上、しかもその中に羽の生えた女王アリも50匹以上見つかっています。
 繁殖可能な女王が50匹以上見つかったということは、既によそへ飛んで行っているおそれもあると専門家は指摘しています。そして青海ふ頭で見つかった集団は数か月以上前に住み着いたと見られており、このままだと日本に定着するおそれが高いとされ、速やかな対策が求められています。

▼そもそもヒアリとは?

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 ヒアリは南米原産で体長2.5~6mmの赤茶色っぽいアリです。普通の黒いアリは1cmぐらいありますから、それより小型です。アメリカには20世紀前半に入っていましたが、今世紀になってオーストラリアや中国・台湾などにも一気に広がっています。
 おしりに毒針があり、刺されるとやけどのような激痛がして、腫れたり、時には激しいアレルギー反応で呼吸困難などをおこして、死亡することもあります。
 また、アメリカでは家畜が刺されることによる畜産業への被害や、ヒアリが色々なものをかじるため家屋や電気設備の損害も多く、経済損失は年間7千億円にのぼるとの試算もあります。
  
▼日本にはどうやって入ってきた?

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 今回のように地面で見つかったヒアリはどこから来たか特定は困難ですが、これまで確認されたものは中国など既にヒアリが定着している国からのコンテナ内で見つかったり、そうした国からのコンテナ貨物が着く港湾などで見つかったケースが多い状況です。
 そのため、2年前の発見以降これらの国からのコンテナ貨物が入る全国の港湾で、粘着トラップの設置や目視調査に力を入れてきました。対策をとっていたにも関わらず今回の青海ふ頭のケースが起きているのです。
 そこで、21日に新たな対策が打ち出されました。まず、この現場は一般の人は立ち入らないエリアなので、駆除を徹底するためふ頭の全域に毒エサを置くことになりました。そして調査です。女王アリは新たな巣を作るため1kmぐらい飛ぶとされるので、これまで調査の目安は2km圏とされていましたが、今回はそれにとらわれず調査する。また、港や公園などの公有地だけでなく、民有地も対象にします。さらに青海ふ頭だけでなく全国の取り組み状況も再確認して、国内への定着を阻止するとしています。
  
▼ヒアリの対策は他の国ではどうしている?

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 外来生物の侵入を防ぐのは容易ではありませんが上手くいっているケースもあります。ニュージーランドでは2000年代に入ってヒアリの侵入が3度確認されていますが、これまで定着を阻止しています。1993年に「バイオセキュリティー法」という法律を作り、外来生物の早期発見・早期駆除に努めています。全国の港湾や空港などには以前からエサつきのトラップを合計5万個もしかけて外来アリの監視を続けています。さらに、ヒアリが見つかると周辺では物品の移動制限まで行い駆除しています。
 例えば、2006年にニュージーランド北部で侵入後2年ほど経っていると見られるアリ塚と3万匹ものヒアリが見つかりました。これに対し半径2km以内を管理エリアに指定し、土砂や干し草などヒアリが入るおそれがある物は全て許可無く動かすことを禁じました。その間に徹底的な調査と駆除を行ったのです。その後も3年間定期的に調査を繰り返してようやく根絶宣言を出したそうです。
 ひとたびアリ塚が出来るほど繁殖を許してしまうと、根絶はこれだけ大変だと言えます。ましてや東京や大阪のように多くの人や貨物が出入りする所で物品の移動を止めることはできませんから、とにかく広がって繁殖してしまう前に対処することが重要です。
 
▼私たちが気をつけることは?

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 ヒアリと思われるアリを見つけたら、こちらの環境省の「ヒアリ相談ダイヤル」か、自治体に連絡して情報提供すると良いでしょう。ヒアリの特徴は環境省のHPなどに詳しく掲載されています。
 危険ですから素手で触ったり捕まえようとせず、写真をメールで送るのがいいでしょう。ただ、ヒアリかどうかよくわからない場合など、アリの群れを見かけたからと言ってむやみに殺虫剤をかけたり殺すのは控えた方が良いと思います。在来のアリだった場合、それがヒアリの定着を抑えているという面もあるそうです。
 そして万一刺されて重い症状が出た場合、すぐ医療機関を受診して下さい。まだ身近で見かける可能性は低いと思いますが、いざと言うときのために知識を持っておいていただければと思います。

(土屋 敏之 解説委員)

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