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「消費増税で始まる 『給付金』『無償化』」(くらし☆解説)

藤野 優子  解説委員

10月からの消費税率の引き上げに合わせて、私たちの暮らしにかかわる社会保障もいくつかの見直しが行われます。

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【低年金生活者支援 給付金】
一つは、年金が少なくて低所得になっている65歳以上の人に、新たな給付金を出そうというもの。消費増税による財源をつかって10月からスタートするので、9月から、対象の970万人に、日本年金機構から手続きのための封書が順次送られることになっている。

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【どんな人が対象?】
前の年の収入が年金を含めておよそ78万円以下、つまり国民年金の満額以下の人で、世帯全員が住民税非課税となっている人が、ひと月最高で5000円を年金とは別に受け取れるというもの。
ただ、ここで「最高で」というのは、この給付金、保険料を納めた期間に比例して金額が決まる仕組みで、保険料を納めた期間が短い人だともっと少ない額になる。
最高の5000円が受け取れる人は、40年保険料をしっかり納めてきた人の場合。
20年しか納めていない人は半額の2500円になる。

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どうしてこのような制度になったかというと、保険料をしっかり納めた人と、納めていなかった人が一律に同じ金額を受け取るのは不公平だという指摘がでたから。

【保険料免除だった人や障害年金受給者も対象】
ただ、現役時代に低所得で保険料が免除されていた人、きちんと免除の手続きをとっていた人については、年金額が少ないのでそこは救済しようということで給付金が支給される。ただし、こちらも、免除期間に応じて金額が決まる。
 免除の手続きをとらずに保険料を納めていなかった人は、給付金を受け取れない。
今、非正規で働く人が増え、その中には生活が苦しいから保険料を払っていない人も多い。保険料を払えるのに払っていなかった人との線引きは、免除手続きをとっていたかどうかで判断されることになるので、今、所得が少なくて保険料を払えない人は、将来のために免除の手続きをしておいたほうがいいと思う。

このほか、障害年金を受け取っている人なども一定以下の所得であれば、給付金を受け取れる。

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このようにたくさんの人たちが給付金の対象になるが、これまで見てきたように、保険料を納めた期間や免除期間が短いと少ない給付金しか受け取れない。
このため、この制度が低所得の人たちの生活を支える効果がどの程度あるのか、検証することが重要になる。

【手続きはどうする?】
封書の中に入っている請求書に必要事項を記入して返送する必要がある。送り返さないと給付金を受け取れないので注意してほしい。10月18日までに返送すれば、12月の年金支給日に10月分と11月分が振り込まれる。この期限より遅れた場合、12月末までに返送しないと、10月から1月までの4か月分の給付金が受け取れなくなるので注意が必要。
それから、日本年金機構が口座番号などを電話で問い合わせたりすることはないそうなので、くれぐれも詐欺に注意してほしい。そうした電話があったら、この給付金についての問い合わせ先、給付金専用ダイヤルに確認をしてほしいと思う。

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【幼児教育・保育の無償化】
ふたつめが幼児教育・保育の無償化。
これは政府が、全世代型社会保障への転換を進めようと少子化対策として3歳から5歳の幼稚園や保育園の保育料を原則無料にしようというもの。
こちらも消費増税に合わせて10月からのスタート。
具体的には施設ごとに金額は違っていて、幼稚園はひと月2万5700円まで無料に。
認可保育所はすべて一律に無料に。
認可外の保育所を利用している人はひと月3万7000円までの補助が出る。

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【どんな手続きが必要か?】
幼稚園や認可保育園を利用している人は、基本的には、施設や自治体から請求される利用料が変わるだけなので特段の手続きはいらない。
一方、認可外施設を利用している人は、手続きが必要。
親が仕事や病気などで子どもの保育が必要と自治体で認定(保育認定)を受けていることが条件。これがないと補助を受けられないので、自治体の窓口で必ず申請を。
そして、施設に利用料を支払った時に受けとった領収書を自治体に提出し、あとから払い戻しを受けるところが多い。
【認可外の保育施設はすべての施設が対象か?】
国は、5年間は経過措置として、原則すべての施設を対象にするとしているが、自治体によっては、安全性の問題があるとして、一部の認可外施設などを除外しているところもあるので、自治体に確認が必要。

【自治体の問い合わせ窓口は?】
自治体の問い合わせ窓口の一覧は、厚生労働省のHPに掲載されているので、「全国にある『認可外保育施設』の窓口情報一覧」という文言で検索をしてみてください。

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この中には、問い合わせ窓口だけではなく、どんな施設があるのか施設の紹介や、自治体が施設に対して実施した指導監査の結果が見られるところもある。

【指導監査結果も閲覧できるところも】

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これは東京都のHPだが、過去に、どの施設がどんな改善指導を受けたのかが掲載されている。例えば、常に複数の職員が配置されているかどうか、職員の3分の1以上が保育士資格をもっているかなど項目別になっていて、×がついているところは、そうなっていないということ、×から〇になっているところは、その後改善されたということ。
こうした情報は、施設選びの参考になるが、監査の結果まで出していない自治体も多いので、今後、公表する自治体が増えてほしいが、保護者も今利用している施設や、これから利用を検討している施設などの情報をしっかりと確認してほしい。

【消費増税でスタートするこの他の対策】
このほかにも、消費増税のよる財源をつかって、社会保障や教育の分野での見直しが行われる。

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10月から低所得の高齢者の介護保険料の引き下げ、来年4月からになるが大学などの授業料の無償化、それに、保育所の整備、保育士や介護職員の待遇の改善なども予定されている。広く国民に負担を求める消費増税。政策の効果を十分に検証しながら、必要な見直しを重ねていってほしい。

(藤野 優子 解説委員)


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