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「ポイント還元・軽減税率 分かれる 店の対応」(くらし☆解説)

今井 純子  解説委員

消費税率の引き上げまで、一カ月を切りました。ポイント還元や軽減税率について、今井純子解説委員。

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【ポイント還元も軽減税率も、気になります】
そうですね。このところ、店の対応が次々、公表されています。ただ、よく見ると、店によって対応が分かれていて、それを私たちが知らないと、支払いの段階で「え?」と思うことになりそうな点もでてきています。きょうは、そうした点について、お話したいと思います。
まず、ポイント還元について、改めて仕組みを抑えておきたいと思います。

【複雑ですよね】
そうですね。この制度、消費税率が上がった後、消費の落ち込みを防ぐ狙いで、9カ月の間、
▼ 対象となる中小の店で、現金以外(クレジットカードや電子マネー、スマホのQRコード)で支払いをすれば、
▼ 消費者に、原則、税込みの金額から5%分、ポイントが還元されるという制度です。その分は、政府から手当されます。大手のコンビニやガソリンスタンドでは、ポイントの還元は、2%分になります。

【対象の店。さまざまな業種があるのですね】
法律で中小企業と定義されていれば、原則、制度の対象になります。
▼ 例えば、小売業だと資本金5000万円以下、または、従業員が50人以下です。
▼ ただ、店の側から、政府に申請・登録をする必要があります。9月2日の時点では53万店が申請しています。制度の対象になる店の25%程度ではないかとみられています。今も、1日1万店を超える申請があるということです。

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【5%というと、結構な還元率になりますよね】
そうですね。例えば、
「本体価格が1000円。今、税込みで1080円」のもので考えると、増税後、同じ本体価格だとすると、
▼ 原則、衣料品などは、10%の税率で1100円になります。食料品は、軽減税率の対象になりますので、8%の税率で、1080円と据え置きです。

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それが、ポイント還元の対象となる中小の店で買うと
▼ 税込み価格から5%還元される。つまり、衣料品などは55円引かれて支払う額は1045円に。食料品もポイント還元の対象になりますので、54円引かれて、1026円に事実上なるという計算です。

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【増税したのに、増税前より、安くなるのですね】
消費者にとしては、助かりますよね。ただ、注意が必要な点があります。まず、同じ看板の店でも、ポイント還元の対象になる店と対象にならない店がでてくるケースがあるという点です。

【どういうことですか?】
大手のチェーン店の中には、例えば、日本マクドナルド。オーナーが経営しているフランチャイズの加盟店は(中小企業の扱いになって)、制度に参加するけれど、大企業の本社が直接経営している直営店については、システムの改修が間に合わないということで、参加しない。そのようなチェーン店もでてきています。

【参加する店で買うとポイントが還元されるけれど、こちらでは、されないことになるのですね】
そうですね。ほかにも、中小の店で、制度の対象になるのだけれど、決済事業者に払う手数料の負担が重い。現金払いの客がほとんどなので、期間限定のこの制度には、参加しないと決めている店もあります。

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【どう見分ければいいのですか?】
ひとつポイントになるのが、こちらのポスター。

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国が作ったもので、この制度に参加する店の店頭やレジに貼られることになります。ネットのショッピングサイトでも、このマークが目印になります。また、今月中には、地図から、どの店が対象になって、どの方法で支払いができるのかがわかるアプリも国がつくって公表される予定です。

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ただ、ここでもう一つ。支払の手段によって、還元の方法が違うということも頭に入れておいた方がいいかもしれません。

【還元の方法ですか?】
はい。
▼ もともとは、後から使えるポイントなどの形で還元することが想定されていましたが、
▼ 事実上、その場で、値引きする。あるいは、毎月の請求額から、還元分を差し引く形で、事実上値引きするというところでてきています。
どちらでも構わないという方もいると思いますが、こだわる方は、事前に、決済事業者のホームページあるいは、経済産業省の専用サイト「キャッシュレス・消費者還元事業」などで確認することができます。

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次に、軽減税率をめぐってです。

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【軽減税率。食料品などは8%に据え置きとなるのですよね】
はい。ですが、店内飲食=外食は10%になります。そこで、イートインコーナーのある店や、持ち帰りができる外食の店で、対応が分かれることになりそうです。まず、こちらのポスター。

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【「イートインスペースで飲食される際は、お申し出ください」とありますね】
これは、コンビニなどの業界団体がつくった共通のポスターです。イートインスペースのある全国の大手コンビニに今後貼り出されます。要するに、何も言わなければ食料品は原則、8%でレジを打って、利用客が、店内で食べると申告した場合だけ、10%の消費税を加える方式です。

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一方、モスバーガーなどでは、注文の時に、店内で食べるか、持ち帰るかを聞いて、持ち帰りの場合は、8%。店内で食べる場合は、10%の消費税がかかります。確認の仕方は違いますが、共通しているのは、本体の価格はひとつで、店内と持ち帰りの場合、税込みの価格が変わってくるという点です。

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【税込みの価格は、店内で食べる方が高くなるわけですね。そうすると、持ち帰るふりをして、店内で食べる客もいるかもしれませんね】
制度上は、レジで支払いをした時点で、税率が決まるので、そのあとのことは追求しない。「お客さんの申告を信じます」というのが店側の立場ですが、他のお客さんとトラブルになる懸念は捨てきれません。そこで、こちらの方式をとるところもでてきています。

【どのような方式ですか?】
持ち帰りと比べて、店で食べる場合の本体価格を安く設定する方式です。例えば、すき家は、牛丼の並盛について、10月から、持ち帰りは、325円と本体価格を据え置く一方、店内で食べる場合の価格を319円に値下げします。そうすると、税込みの価格は、いずれのも、350円になります。つまり、客からみると、店内で食べる場合も、持ち帰りの場合でも、支払う額は同じということになります。

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【ポイント還元も軽減税率も、複雑で、いつどこでどういう方法で買い物をしたらいいのか、悩みますね】
そうですね。もともとの消費の落ち込みを食い止めたいという狙いに加えて、キャッシュレス決済をこの際一気に進めたい。中小企業にも目配りをしたい。だけど、一定の財源は確保したい、といった様々な思惑が積み重ねられた結果、非常に複雑な仕組みとなりました。さらに加えると、ポイント還元の対象外の大規模なお店でも、増税後に、セールを検討しているところがあります。本当に複雑ですが、消費者としては、制度を理解したうえで冷静に考え、かしこく対応することが必要になってくるのではないかと思います。

(今井 純子 解説委員)

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