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「自主防災組織 災害に強いまちづくり」(くらし☆解説)

清永 聡  解説委員

九州北部は記録的な大雨が続き、多くの方が避難を余儀なくされています。
9月1日は「防災の日」ですが、万が一の際に大きな役割を果たすのが各地の「自主防災組織」です。災害に強いまちを作るためどのような取り組みが必要なのでしょう。

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【自主防災組織って何?】
Q:自主防災組織は聞いたことはありますが、どんな組織なのでしょうか。
A:文字通り、住民が自分で作る防災組織です。全国16万5000組織あり、地域のカバー率は、実に全国の8割以上に上っています。

Q:そんなに多いんですか。消防団とは違うんですか。
A:どちらも地域の活動ですが、消防団員は非常勤特別職の地方公務員です。これに対して、自主防災組織はボランティアで、町内会や自治会が作っているところが多いようです。

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特に平成7年の阪神・淡路大震災の時に、救助が届かない中、地域の住民ががれきの下から多くの人を救いました。こうしたことから「自分の地域は自分たちで守ろう」と自主防災組織が増えていったんです。現在、普段は防災教育、災害の時には要支援者のサポート、避難所の運営などが役割です。

Q:ただ、なじみがない人も多いのではないでしょうか。
A:参加者が増えず、活動があまり行われていない所も少なくないようです。
そこで、私、各地を取材してきました。消防庁が毎年、組織や団体の優れた防災の取り組みを表彰する「防災まちづくり大賞」という賞があるのですが、今回受賞した自主防災組織がどんなことをしているのか、そして、活動の秘訣は何か聞いてきました。

【都市部のマンションで自主防災組織】
最初に訪ねたのは、千葉県習志野市です。ここの「津田沼ハイライズ自主防災会」は1つのマンションで、自主防災組織を作っています。訪問した時には、ちょうど来月予定している防災訓練の準備をしていました。毎年、春と秋に防災訓練を行っています。

Q:年に2回もやっているんですか。
A:都市部のマンションで活発な防災活動を行っていることが高く評価され、受賞しました。

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(提供:津田沼ハイライズ自主防災会)

今年3月に行われた訓練の様子です。強い地震が起きたという想定で、住民が外に集まります。マンションの中を一軒ずつ回って、住民が避難したかどうかを確認します。訓練に参加する人は、この「安否確認シート」を玄関に張り出しています。

Q:スタッフにはお年寄りの方も多くいますね。
A:炊き出しも高齢者が中心で、子供も参加します。安否確認シートを掲示するなど、何らかの形で訓練に参加・協力した世帯の割合は、8割以上に上るということです。

【秘けつ1:高齢者の力と「防災だより」】
Q:どうしてこんなに活発なのでしょうか。

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A:秘訣の1つが、▼高齢者に戦力になってもらうことです。マンションにはお年寄りのサークルがあるのですが、ここに訓練の手伝いをお願いしています。高齢者の方みなさんまじめで、積極的に役割を担ってくれるそうです。つまり、お年寄りを「助ける」対象ではなく、反対に自主防災組織を「助けてもらう」わけです。
▼もう1つは「防災レター」というお知らせを毎月作成して、配布していることです。自主防災組織を知ってもらうだけでなく、役員が話し合った情報を住民に共有するという役割もあります。

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会長の日暮裕規さんは「できるだけみんなに知ってもらい、参加してもらうことが大切。住民の交流にもつながる」と話していました。

【IT活用して省力化】
茨城県常総市の根新田地区です。4年前の「関東・東北豪雨」では、地区の周辺は広く浸水しました。
事務局長をしている須賀英雄さんです。ここは小川が流れていて、鬼怒川に注いでいます。豪雨ではこの小さな川があふれて地区が浸水しました。
自主防災組織では携帯電話のショートメッセージを使って、住民に防災情報を流しています。

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この取り組みが実際の災害でも役立ちました。4年前の豪雨の時に送信したメッセージが今も残っています。「鬼怒川(三妻小学校付近)で越水のおそれ」。そして、「根新田地区にも浸水が始まりました」。地元の地名を入れることで、より危機感を伝えることができます。その後も浸水が続きます。「ヘリが見えたら懐中電灯を大きく触れ」「あきらめるな。頑張ろう」。こうした呼びかけもあって、幸い、この地区はみんな無事だったということです。
一昨年からは自分たちで、かつて氾濫した川に防災カメラを設置しました。映像は、町内会のHPで誰でもみることができるようにしています。大雨の時に川の様子を見に行かなくても良いようにしたのです。こうした取り組みが高く評価されました。

【秘訣2 ハイテクしすぎず生活情報に盛り込む】
Q:さまざまな工夫がありますね。
A:秘訣は3つあると思います。

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▼まず、できるだけ省力化するということです。ショートメッセージも防災カメラも、住民に負担をかけすぎずにできる取り組みです。
▼そして、ハイテクになりすぎないということです。高齢者の方はスマートフォンを持っていない人や、メールアドレスがない人も多くいます。ショートメッセージでしたらいわゆるガラケーでも電話番号だけで送ることができます。
▼最後に、生活情報の中に盛り込むことです。先ほどのHPも、ショートメッセージも普段は町内会のお知らせやイベント案内などに使っています。日常的に利用することで多くの人に使ってもらうわけです。

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事務局長の須賀英雄さんは「住民に負担をかけすぎないよう、長く続けられる活動を心がけています」と話していました。

【行政の支援も欠かせない】
Q:取材してみると、いろんなアイデアがありますね。
A:今回多くの方にお話を聞かせてもらいましたが、どちらの自主防災組織もリーダー役になる人の存在が大切でした。それと、行政の支援も必要です。自主防災組織があるから、行政は何もしなくていいというわけではありません。取り組みへの金銭的な補助を行うことや、リーダー役となる人材育成の支援などを行い、普段から活発に活動できるようにすることが求められます。

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Q:住民と行政が協力することが大事なんですね。
A:普段の行政のサポートが手厚いからこそ、いざという時に住民が大きな力を発揮できるわけです。
また、消防庁の「防災まちづくり大賞」は、今回合わせて18の団体や組織が受賞しています。また、今年度の募集も9月30日まで行っていて、直接応募することもできるそうです。
各地の取り組みも参考にして、様々な工夫と協力で、災害に強いまちをつくってほしいと思います。

(清永 聡 解説委員)

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