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「どう考える? 企業がつける あなたの『点数』」(くらし☆解説)

今井 純子  解説委員

個人をどのくらい信用できるか。それをネット上の個人の行動や、本人が提供する情報をもとに、企業がAIを使って点数の形(信用スコア)ではじきだすサービスを、2つのIT企業が相次いで始めました。ただ、心配な点も指摘されています。今井解説委員。

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【新たに始まったサービス。どのようなものですか?】
ひとつは、メッセージアプリを展開しているLINEが、6月下旬から、8000万人の利用者を対象に、始めたサービスです。本人が、診断をするとクリックする。つまり、同意をすると、

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それまでの、LINE上のアプリを使った行動傾向。それから、生活に関する15の質問。例えば、一戸建てに住んでいるかアパートかといった住居の形態。職業の形態といった質問への答えから、最大1000点で、点数がつけられます。

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【この行動傾向。どのような情報ですか?】
気になりますが、点数を引き上げるための恣意的な行動につながると困るということで、詳細には公表されていません。例えば、LINEが提供しているニュースで、どのような記事を見ているのか、といったことが考えられるとされています。メッセージアプリの会話の内容や友人関係などの情報は使わないと、会社側は話しています。

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【どうやって点数がつけられるかわからないのは心配ですね】
心配な点のひとつです。

【そして、その点数。どのように使われるのですか?】
まずは、LINEがこの夏から始めるとしている消費者金融です。点数が高いほど、原則、低い金利で借りられるとしています。実際に貸す際には、貸金業法に基づいて、年収やほかにどのくらいの債務があるかといった情報は見ますが、そのうえ独自に信用力をはかることで、年収など従来の情報だけではおカネを借りにくかった、フリーランスやアルバイトの人が、機動的におカネを借りられるようになるというのが、会社側の説明です。

【おカネを借りるときに使われるだけですか?】
いいえ。そのほか、今後、LINEが提携する企業に点数を渡します。その際には、その都度、利用者の同意をとるとしています。そのうえで、例えば、点数の高い人は、車や自転車、高級バッグなどのレンタル、あるいはシェアサービスを優先的に、そして、割安に利用できる。そういった可能性があったり、LINEのQRコードの決済サービスで、買い物の支払いをする場合、より多くのポイントが還元されたりする。そのような特典があるということです。

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【点数が高い人は・・ということですよね】
そうです。

【二つ目の企業は?】
ヤフーです。先月から、信用スコアのサービスを始めました。対象は、ヤフーのIDを取得して、メールやネットショッピングなどをしている人で、およそ4800万人とみられます。旅館やレストランの予約を無断でキャンセルしていないか。ヤフーのショッピングやオークションで、他の人からどのくらい高い評価を受けているか。それに利用した金額。こうした情報から、900点を上限に点数がつけられます。

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ただ、こちらは、IDを持っている人は自動的に点数がつけられる仕組みで、スコアをつけてほしくない人は、ネット上で自ら操作する必要があります。

【いやなら、自分で操作をしないといけないのですか。しかも、このはてな。どういうことですか?】
今の時点では、ネット上では自分の点数がわからない仕組みになっています。この点は対処すると会社は言っていますが、今は、自分の点数を知るためには、書面上での手続きが必要なっています。こうした点については、大きな批判もおきています。

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【知らないうちに点数がつけられるのは、抵抗がありますよね。そして、こちらは、点数はどのように使われるのですか?】
これも、具体的にはこれからですが、やはり、提携する企業に渡します。外部に提供するときには、一件ごとに、利用者の同意をとるとはしています。そのうえで、例えば、レストランの予約サイトで、人気の店に突然のキャンセルが出た時に、点数の高い人に優先的に割安で招待をする。仕事の仲介サービスで、点数が高いフリーランスの人に、優先的に仕事の依頼をする。こういった、サービスが考えられるということです。

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【自分が点数で評価される。どう考えたらいいのでしょうか?】
ネットサービスの普及で、ビッグデータはどんどん膨らんでいます。それを利用して、個人の様々な信用スコアをつける企業、そして、それを利用して、効率的に営業したいという企業は増えていくと思います。
ただ、信用スコアが普及することに65%の人が「反対」と答えたという調査の結果もあります。「自分の個人情報を、他に提供されたくない」「監視されているようで気持ちが悪い」「点数を計算する方法が不透明だと不安だ」というのが、反対する主な理由です。

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企業の側からは、点数という抽象化されたデータを他の企業に渡すわけなので、問題は少ないという意見がありますが、新しくでてきている信用スコアは、ある意味、個人の広い範囲での“信用力”を、他の人と比べやすい、点数という形で示すだけに、点数が独り歩きして、格差につながりかねないという指摘もあります。点数をつけられる側としては、心配な点がありますよね。

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【心配な点はいくつもありますね】
そうですね。例えば、
▼ 勝手に、あるいはわかりにくい表示で同意をとられて、点数をつけられ、いろいろな企業に提供されるようなことがないか。
▼ 結婚紹介のサービスや、就職活動で使われることがないか。
▼ 自分の点数を知ることができるのか。そして、企業に求めたら、きちんと納得がいく説明が得られるのか。
▼ 退会した場合、自分のスコアを消せるのか、こうした懸念はありますよね。

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【何もルールはないのですか?】
信用スコアを出すサービスについては、始まったばかりで、それに特化した特段のルールはありません。ですが、こうした不安が指摘されているだけに、専門家の間からは、
▼ 点数をつけたり、ほかの企業に提供したりする場合は、明確な同意をとるとか、
▼ 提携する企業には、点数を不利益に使わないことや、退会した場合点数を消すことを、あらかじめ約束させるなど、
信用スコアが本格的に広がる前に、業界で一定のルール、あるいは法律の規制も考える必要があるのではないか、という指摘がでています。私も、検討する必要があるのではないかと、思います。

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【安心できるルールはつくってほしいですね。また、使う側も注意して利用することが必要ですね】
そうですね。興味本位で、自分の点数を出してみようというのではなく、
▼ どういう目的でどのような企業に提供されるのか。
▼ それに見合うメリットが得られるのか。
▼ 不利益を被る心配はないのか。

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きちんと、心配な点も理解したうえで、利用すること。その場合も、目的を絞って利用することが大事だと思います。

(今井 純子 解説委員)

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