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「孤立をどう防ぐ 問われる地域の総合力」(くらし☆解説)

飯野 奈津子  解説委員

引きこもりや生活困窮など、複雑な問題を抱える家族が、地域から孤立するのを防ごうと、これまでの福祉の在り方を見直して、新たな制度の枠組みを創設する方針を国の検討会が打ち出しました。担当は飯野解説委員です。

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Q1 複雑な問題を抱える家族が孤立するケース、増えているのですか?
A1 統計的な数字はないのですが、福祉の現場からは、複雑な事情を抱えて孤立する家族が目立ってきているという報告が相次いでいます。その典型的なケースが、8050問題です。このことば、きいたことがありますか?

Q2 80代の親が、引きこもっている50代の子供の生活を支えているという問題ですよね。
A2 そうです。

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子供が40代から50代、親が70代から80代の家族。子供の引き子もりが長期化して、親も高齢になって収入が減ったり介護が必要になったりすると、とたんに親子双方が生活に困窮して、社会から孤立してしまいます。
経済的な困窮、親の介護、子供の引きこもり、その背景に病気があるかもしれませんし、40代を超えると就職も難しい。いろいろな課題を抱えていますが、こうした家族は自ら声をあげづらく、親の介護をきっかけに、介護職が自宅を訪問するようになって、初めてその状況がわかるケースも少なくありません。
最近は、親が介護を受けないまま亡くなり、それを届け出ずに遺体を放置したとして子供が逮捕されるケースも目立っていて、先月も、東京や埼玉などで相次ぎました。親が亡くなっても声をあげられない、それほど孤立の状態が深刻だということです。

Q3 国の検討会が、新たな制度の枠組みを打ち出したのは、8050問題に対応するためですか。
A3 それだけではありません。このほかにも、今の福祉の枠組みでは、対応しきれない、さまざまな問題が噴出しているからです。

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今の福祉の仕組みは、高齢者は介護サービス、障害者は障害福祉サービス、子供は子育て支援といったように、対象者ごとに、相談窓口やサービスが分かれています。ところが最近は、先ほどの8050問題以外にも、介護と育児の問題を同時に抱えるダブルケアなど、複合的な問題を抱える家族や、どの制度の対象にもならないごみ屋敷の問題なども相次いでいます。地域のつながりが薄れる中で、誰にも相談できずに孤立して、問題を深刻化させるケースが少なくないのです。
こうしたさまざまな難しい問題にも対応できるように、これまでの福祉の在り方を見直そうというのが、国の検討会の考えです。

Q4 具体的にどう見直すのですか?
Q4 行政の縦割りをなくして、包括的に支援できる体制を整えようということです。

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具体的には、まず、「断らない相談」です。たとえば、高齢者の窓口に介護の相談に来た親が、息子の引きこもりのことも相談したら、その家族の問題を丸ごと受け止める。ほかの窓口にたらいまわしにしないということです。そして、複雑なケースの場合は、福祉の分野にとどまらず、住まいや雇用、医療など、他の分野の人たちとも連携して、課題を解決していきます。
しかし、引きこもりが長期化しているような場合は、本人に心を開いてもらい、次のアクションにつなげるまで時間がかかります。その間も、本人に寄り添い話をしながら課題を整理したり、本人の力を引き出したりする「伴走型の支援」が重要だとしています。
そして地域につなぎ戻していくための「参加支援」です。困りごとを抱えていても自分だけで抱え込んでいると、問題が深刻化してしまうからです。仕事をすることだけでなく、何らかの形で地域との接点をもてるよう支援するとしています。

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3つ目の柱が、「地域づくり」です。地域の中に、住民同士が出会うことができる居場所や、互いに支えあったりする活動があれば、長く引きこもっていてすぐに仕事ができない人も、そうした場に参加して一歩を踏み出せるようになるからです。
NPOや福祉団体、地元企業など福祉以外の分野の人たちが出会う場を設けたりして、いろいろな形の活動が広がるよう、調整・支援していくことも、行政の役割だとしています。

Q5 今回の包括的な支援体制は、相談につながった人たちへの対応が中心ですが、自らSOSを出せずに窓口にもたどり着けない人もいるのはないでしょうか。
Q5 そうした人たちも多いと思います。そうした人たちを支援につなげていくために重要なのが、ともに暮らす住民の気づきだと思います。住民が、自分が暮らす地域に関心をもち、困りごとを抱えている人を気にかけるようになれば、自らSOSを出せない人たちを早い段階でみつけて、支援につなげることができると思うからです。
行政が相談をしっかり受け止める方向性が示されたのは一歩前進ですが、問題が深刻になってからでは対応が難しいこともあります。そうした意味では、住民の気づきが広がるような地域づくりがとても重要ですが、国の検討会のこれまでの議論では、そうした視点での地域づくりを進める具体策は十分みえてきません。

Q6 どうすれば、そうした地域づくりが進んでいきますか?
A6 簡単ではありませんが、それをはじめている地域もあります。住民主体のまちづくりを進める三重県名張市の取り組みからみえてくるのは、住民を支える行政のきめ細かな対応です。

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人口およそ8万人の名張市。小学校区を単位とした15の地域に、「地域づくり組織」という住民自治組織ができています。それぞれの組織が、住民アンケートをもとに地域の課題を整理して、さまざまな活動を展開しています。
地域で子育てを応援する子育て広場の運営や、地域の防犯を目的としたパトロール、地域住民同士が有償で支えあう生活支援。家の掃除や、通院や買い物の外出支援なども行っています。

Q7 名張市で地域づくり組織ができたのは、何かきっかけがあったのですか
A7 15年以上前のことですが、市が財政の非常事態宣言を出したことです。市の財政事情を住民に示して、自分たちでできることは自分たちでやってくださいとお願いしたそうです。そのかわり地域づくり組織が活動しやすい環境を整えてきました。

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●ひとつは、使い道が自由な一括交付金を交付したことです。平均すると年間700万円。それを原資に、住民が優先順位をつけてまちづくり活動を行っています。
●地域づくり組織と一緒に住民の生活を支える、行政の「まちの保健室」も各地域に設置しました。介護福祉士などの専門職が常駐していて、住民からの困りごとの相談を何でも受けつけています。敷居の低い駆け込み寺という感じです。
●住民から寄せられた難しいケースを、さまざまな分野の関係機関が連携して解決する仕組みがあることも、住民の安心につながっています。行政で難しい問題はやってくれる、だから自分たちもできることをやろうという気になるのだそうです。
こうした形で行政がサポートし、住民活動が広がり、住民の地域への関心も高まる中で、まちの保健室には、近くに閉じこもりがちの人がいるといった、近所の気になるケースの相談も多く寄せられています。

Q8 地域の力というのは大きいですね。
A8 そう思います。地域づくりが重要だと話をすると、地域の中の関係はすでに崩壊していて再生は難しい、といった声も聞かれます。ですが、あきらめてしまっては前に進みません。地域によって事情が違うので、名張流がどこでも通用するわけではありませんが、自分たちが暮らす地域の今に目を向け、何ができるか考え、工夫することが、行政の責任ではないでしょうか。

Q9  8050問題だけでなく、子供への虐待など悲惨な事件も相次いでいますよね
A9 声をあげられずに孤立している人たちをどう支えるのか、私たち一人ひとりも、自分が暮らす地域に目を向け、暮らしやすい地域にするために何ができるか、考えていくことが必要なのだと思います。

(飯野 奈津子 解説委員)

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