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「チバニアンに条例 そのワケは?」(くらし☆解説)

水野 倫之  解説委員

地球史の一時代に、「チバニアン」と命名する取り組みの先行きが不透明に。地元は先週、現場に自由に立ち入ることを保証する条例を制定し命名実現を後押しすると、表明。
水野倫之解説委員の解説。

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これまで国際学会の審査でヨーロッパからの申請は退けられ、
日本のチバニアンだけが最終候補に。
日本由来の名前が地球史に命名されれば初めてのことだけに大きな期待。
ところが、命名に反対する研究者が現場への立ち入りを拒否する構えを見せているため、
審査が事実上ストップ。

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研究チームが申請した地層は、房総半島中央部、千葉県市原市の養老川沿い。
日本の研究グループが、
この崖の地層が77万年から12万6千年前の特徴をよく現しているとして、
その時代を千葉の時代を意味する「チバニアン」と命名するよう国際学会に申請したのが
2年前。

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地球史は、繁栄した生物や地球の状態などに基づいて細かく分けられ。
その時代を特徴付ける地層が国際学会によって選ばれて命名。
恐竜が全盛を迎えたジュラ紀はフランスとスイスの国境のジュラ山脈にちなんで
命名。
77万年から12万6000年前の間はまだ
マンモスが生息し、今の人類ホモ・サピエンスが現れた時代。

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地球史最後の磁場の逆転も起きていて、
研究グループはその痕跡を千葉の地層で確認。

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現場には年代分析から77万年前の火山灰の層があり、その上下で鉱物のNとSの向きが逆になっていることを発見、つまり、77万年前に磁場の逆転が起きたことを読み取った。

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ただ現状あくまで最終候補で、
最終決定に向けては現場に研究者が自由にアクセスできることが条件。
そこで一帯を天然記念物にして地元市原市が管理し、研究者の立ち入りを保証しようと土地の買い取りを進めていたところ、問題発生。

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崖の一部や崖の手前の土地を所有する地権者が買収交渉に応じなく。
そして茨城大学の名誉教授の研究者がこの地権者から賃借権を得て、研究者の立ち入りは認めないと。

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遅くとも今年9月までに自由な立ち入りを証明して最終決定の手続きに入らないと、
国際学会の選考委員会は審査できないまま解散し、命名されない可能性。
この研究者は、この崖の科学的価値は認めるものの、
「グループの申請内容には不正があり、命名は認められない」と言う。
以前グループが現地に設置した標識に、離れた崖のデータが使われた点を問題視。

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研究チームは離れた場所のデータを使ったのは説明のためで、
最終的に国際学会への申請には現場の崖のデータを使っており、
国際学会もグループの申請内容には問題が無いことを認めている。
しかし研究者は「一度でも不正をしたグループに申請の資格はない」として、
現地に抗議の看板も。

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この騒ぎに困惑しているのが地区の住民。
地元町会では「千葉が世界に発信されるのは名誉だ」として、
市の協力も得て駐車場や通路を整備するなど地域総出で協力。
またボランティアのガイドの養成も始めたところだった。
しかしこの騒ぎで先月は見学者が半減したと言うことです。
一般の人も立ち入りできないと誤解されているのではないかという。
そこで命名に向けて市原市が打ち出したのが、条例制定。
土地の所有者や賃借権者に対し、
研究者が試料採取のために立ち入ることを正当な理由なく妨げてはならないという内容で、
妨げた場合、5万円以下の過料を科すという罰則規定も定める方針。
9月の議会に条例案を提出し、成立すれば、国際学会に対し
研究者の立ち入りを市原市が保証するという文書を提出して命名を後押ししたい考え。

ただ研究者は「不正について解明もせず、条例検討とは信じられない。
法的な根拠を精査したい」と話していて、何らかの対抗措置に出ることも考えられ、
国際学会が争いのある状態をよしとするかははっきりしない。

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ただ国際学会は科学的には問題ないとしているわけで、
関係者が何とか話し合いの場を持つことができれば、状況が変わる可能性もあると思う。
ヨーロッパなどに比べ日本には安定した地層が少なく、
地球史に日本由来の名前が残せるのはこれが最初で最後の機会とも言われる。
時間切れになる前に関係者の努力で事態が進展することを期待したい。

(水野 倫之 解説委員)

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