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「世界難民の日 自立を支えるには」(くらし☆解説)

二村 伸  解説委員

6月20日は「世界難民の日」です。難民について理解を深めてもらおうと、世界各地でさまざまな催しが予定されています。19日に発表された最新のデータでは、迫害や紛争などによって住む家を追われた人は世界全体で7000万人以上に上っています。なぜ難民が増え続けるのか、そして難民の自立をどうやって支援するかを考えます。

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Q.なぜ6月20日が「世界難民の日」なのですか?

もともとはアフリカ難民条約の発効にちなんだ「アフリカ難民の日」だったのですが、難民問題が世界的に深刻化したことから2000年に国連総会で、難民の保護や支援活動への理解促進を目的とした「世界難民の日」が制定されました。

Q.難民の状況は改善してないのですか?

残念ながら悪化し続けています。とくにアフリカでは紛争や迫害から逃れる人が後を絶たず世界の難民の3分の1を占めています。ことし8月には横浜で国連とアフリカ各国首脳が出席するTICAD・アフリカ開発会議が開かれますが、難民問題の背景にある現状と課題が話し合われます。現地はどうなっているのか取材しました。

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場所はケニア北西部、南スーダンとウガンダの国境に近いカクマ難民キャンプです。

Q.どれだけの数の難民が暮らしているのですか?

18万8000人です。町の人口の6倍もの数です。27年前にスーダンの内戦から逃れてきた難民、3万人を収容するためにキャンプが設けられたのですが、その後ソマリアやエチオピア、コンゴ民主共和国、それに南スーダンなどから逃れてきた人たちでキャンプは膨れ上がりました。難民たちの出身国は、今では21か国にも上っています。今年もすでに5500人が新たに加わりました。わずかな雨でも道路はぬかるみと化し、子供たちが遊ぶグラウンドも水浸しでした。粗末な小屋の中には、調理器具とわずかな寝具くらいしかありません。南スーダン出身のこの女性は、1日の収入は炭を売って得る20円だけで、「生きるのに必死です」と話していました。苦しくても祖国に帰ることはできず他に行くところもないのです。

Q.生活もたいへんなようですが、そうした人が世界で7000万人にも上るのですね。

イギリスやフランスの人口よりも多い人たちが、迫害や紛争によって移住を強いられ保護を求めています。

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昨日発表されたUNHCR・国連難民高等弁務官事務所の統計によれば、去年末時点で、難民は2590万人に上っています。難民とは人種や宗教、政治的な意見の違いなどから迫害を受けたり、受ける恐れがあったりして祖国から逃れた人です。最も多いのがシリアで、次いでパレスチナ、アフガニスタン、南スーダンとなっています。家を追われた後も国内にとどまっている人、つまり国内避難民が4130万人。国外に逃れて難民としての認定を待っている人が350万人。これらをあわせて7080万人で、前の年より230万人も増えました。
世界の難民、国内避難民は20年前の2倍、この5年間で2000万人も増えました。今年に入っても南米ベネズエラから多数の住民が国外に逃れており、難民の数はさらに増え続けています。

Q.なぜそんなに増えているのですか。

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新たな紛争や迫害が各地で起きている一方、紛争が長期化して祖国に戻ることができない人が多いからです。紛争が9年目に突入したシリアは、670万人、国民の3人に1人が今も国外に逃れたままで、去年祖国に戻った人はわずか21万人です。ミャンマーからバングラデシュに逃れた少数派のイスラム教徒、ロヒンギャの帰還も一向に進んでいません。世界の難民の5人に4人が、5年以上の避難生活を余儀なくされ、パレスチナ難民や、アフリカ西サハラの難民のように20年以上も難民生活を送っている人も20%に上っています。

Q.それだけの難民を長期間にわたって支援するのもたいへんですね。

難民生活が長期化すれば援助に頼り切るのでなく自立が求められ、そのための支援も必要です。また、難民を受け入れる側も重い負担を強いられています。世界の難民の8割が途上国で暮らしており、そうした国々への支援と、責任の分担が国際社会に求められています。

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そこで、難民の自立と地元住民との共存をめざして、カクマ難民キャンプから30キロほど離れた場所に作られたのがカロベイエイ難民居住区です。従来の難民キャンプと違って、地元のコミュニティーの中で難民たちが暮らし、自ら働いて生計を立てています。難民と地元の人々が等しく公共サービスを受け、地域全体の生活水準の向上と経済の発展をめざす新しい取り組みで、日本も住宅の建設やトイレなどの衛生、それに教育や農業などの分野で支援してきました.

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援助に頼るのではなく、商売をして生計を立てている難民も少なくありません。今や難民も起業する時代です。ソーラー発電でスマートホンの充電を商売にする店もあちこちに見られました。工芸品や衣類の製作、販売に携わっている難民の女性も少なくありません。インフラの整備が遅れ物資が不足する一方で、ビジネスチャンスもあるだけに日本の企業が参入する余地は大きいのではないでしょうか。難民の起業家への投資も今後重要になってくると思います。難民たちの才能を伸ばし、自立を後押しすることがいかにたいせつか現地を見て感じました。

Q.難民の自立を支えるために具体的に何ができるのでしょうか。

国際機関や各国政府、NGOだけでなく、私たち市民も一人一人いろいろな方法で支援ができるのではないでしょうか。たとえば音楽で難民を後押しているのがロックミュージシャンのMIYAVIさんです。

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今回一緒に現地入りし、学校の子供たちと音楽を通じて交流を深めました。UNHCRの親善大使をつとめ、世界各地でライブ活動の合間に難民キャンプを訪れ、難民を励ましたり、実態を世界に伝えたりしています。この学校では、難民と地元の子どもたちが一緒に学んでいました。世界の難民の半数は18歳以下の子どもたちで、親を失ったり離れ離れになったりして独り身の子供も10万人をこえています。そうした子どもたちが希望をもって生きられるようにするためにも、また将来故郷に戻って国の再建に取り組むためにも教育が欠かせません。現地では難民の数が増えすぎて教室が足りず、教師や教材の不足も深刻だということで、日本の支援に期待する声も聞かれました。

Q.難民に援助物資を送るだけでなく、チャンスを与え、成長を応援することも重要なのですね。

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音楽だけでなく、スポーツで難民の自立を後押しすることもできるでしょうし、ビジネスで支援することもできます。日本の子どもたちが難民の学校に絵を送って交流を深めているところもあります。

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6月20日は、全国15か所で日没後いっせいに青色の照明が灯されます。青は国連のカラーです。会場では、難民の苦悩を知ってもらおうと難民が安全な地をめざして歩く旅を疑似体験する催しなども開かれます。難民のために日本の私たち一人ひとり何ができるか、世界難民の日を、そうしたことを考える機会にしてほしいと思います。

(二村 伸 解説委員)

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