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「世界で一番『ワン』ダフルな国へ もっと知って!補助犬のこと」(くらし☆解説)

竹内 哲哉  解説委員

きょう5月22日は補助犬に関する法律が制定された「ほじょ犬の日」。補助犬の役割や受け入れに必要なことを竹内哲哉解説委員とともにお伝えします。
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【補助犬とは?】
Q.竹内さん。補助犬、どんなことをする犬なんでしょうか?
A.補助犬の種類は3つあります。盲導犬、聴導犬、介助犬です。
盲導犬は視覚に障害のある人が行きたいとき、行きたい場所に安全に行くことができるよう手伝う犬で障害物を避けたり、段差などを教えたりします。
 聴導犬は聴覚に障害のある人の耳の代わりをします。たとえば、屋内だと携帯の通知音ややかんの音、赤ちゃんの泣き声。屋外だと、クラクションや自転車のベル、病院や銀行などで名前が呼ばれたときに知らせます。
 介助犬は障害のある人の手足の代わりを務めます。冷蔵庫から飲み物を出したり、落としたものを拾い上げたり、着替えを手伝ったり。緊急の場合には助けを求めたりもします。

【補助犬の認知度があがらない】
Q.盲導犬、聴導犬、介助犬とそれぞれ仕事の内容が違うんですね。
 何頭ぐらい活動しているんでしょうか。
A.盲導犬は941頭、聴導犬は68頭、介助犬は65頭となっていますが、どの補助犬も不足しています。理由は犬を育てる訓練士が足りず、育成が追い付かない、補助金育成のための寄付が集まりにくいなどがあります。
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Q.様々な課題があって補助犬の数が増えないんですね。
A.頭数が少ないの、なかなか街でみかけませんよね。そうなると補助犬がどんなことをしているかはもちろん、補助犬に関わる法律、公共施設や公共交通機関はもちろん、ホテルやレストランといった不特定多数の人が利用する施設は補助犬の受け入れを拒んではならないという身体障害者補助犬法があるのを知らないのは致し方ないかもしれません。ある調査によると、法律の名前も内容も知らないという人は2004年はおよそ55%だったんですが、2018年には70%以上。どんどん知らない人が増えているんです。

Q.知らない人が増えてきているんですね。
A.法律ができた当時は、国も積極的に啓発活動を行い、マスコミも頻繁に取り上げましたが、徐々に下火になってきてしまったというのが大きいと思います。補助犬の普及活動や育成をしている団体は継続的に啓発を行ってきていますが、民間だけでは限界がありますからね。
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【補助犬法を知らずに起きた問題】
○東京消防庁が90代の女性を救急搬送する際、付き添いの視覚障害者の家族が盲導犬の同乗を求めました。救急隊員は救急搬送を指示する総合司令室に「搬送先の病院に盲導犬を入れられるか」と確認。すると管制員は「救急車に盲導犬は同乗できない」と回答。

○根本的なミスが2つ。
①救急隊員が病院が盲導犬の受け入れを拒否できないことを知らなかった
②管制員が救急車への同乗を拒んだ
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Q.法律ではどちらも認められているということでしたよね。
A.完全に法律に対する認識不足です。最終的には盲導犬も一緒に救急車に乗って病院へ搬送され、容体にも幸い影響はなかったということですが、一歩間違えば命の危険があったケースです。東京消防庁は同伴拒否をしたのは初めてということで、二度とこのようなことが起きないよう、搬送の手引きに補助犬の同伴を認める記載を追加し、全庁員に周知徹底を行ったということです。

Q.二度と起きては欲しくないですよね。補助犬拒否、他にもありそうですね。
A.補助犬利用者に聞いた2015年のアンケート調査によると、施設などの利用を完全に拒否されたという人は66%でした。そのうち医療機関が47%、飲食店44%、タクシー30%などとなっています。このアンケート2005年にも行われていますが、数字は悪くなっています。
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【法律によって義務付けられている補助犬の健康と清潔】
Q.なぜ拒否されるんでしょうか。
A.補助犬がどういった犬かを知らないのが理由だと考えられます。犬は「吠える、かみつく」「汚い」「感染症がある」といったイメージを持つ人がいます。しかし、法律に則って訓練された補助犬は吠えたり、かみついたりはしません。また、法律によって利用者は補助犬を清潔に保つことが義務づけられています。毎日のブラッシングや定期的なシャンプーなどを行い、時にはコートを着せて抜け毛を防ぎます。排泄ももちろん管理しています。狂犬病の予防接種や混合ワクチンの接種もしていますので、こうした理由での拒否は誤解です。補助犬への認知度や法律の理解が社会全体で深まれば、こうした拒否は減ると思います。
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【犬アレルギーの人へは対応を!】
Q.ただ、犬アレルギーの人もいますよね。
A.犬アレルギーの人には配慮をする必要があります。たとえば、レストランでのケースなどが考えられますが、そうした場合は利用者と補助犬の席の側のお客さんに犬アレルギーかどうかを確認し、席を配慮することは必要です。ただ、これまで飲食店のほか宿泊施設や航空機などで補助犬が理由でのアレルギー事故は報告されてはいません。
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【五輪・パラリンピックを前に対応は急務】
Q.来年はオリンピック・パラリンピックが開催され、海外からも補助犬とその利用者がやってくることが考えられますよね。
A.日本は世界でも数少ない狂犬病が根絶されている国なので検疫をクリアし、指定された法人に補助犬として認められた補助犬が入ってくることになります。

Q.そうした補助犬が飲食店などでの入店を拒まれたり、タクシーで乗車拒否されたりすると、日本の障害者に対する意識を疑われかねませんよね。
A.はい。タクシーなどを管理する関東運輸局では補助犬の乗車拒否に対する苦情が多数あったことから、今年4月に補助犬を同伴する利用者についての適切な運送についての指導・徹底が行われました。
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A.また利用者がより動きやすくなるための取り組みもあります。それが補助犬のトイレです。こちらは京王プラザホテルのトイレですが、排泄をするペットシーツを敷けるスペースがあり、周りから見えないようになっています。そして、シャワーも供えられ汚物を流せるようになっています。まだ数えるほどしかありませんが、羽田や成田などの空港のほか役所。そして、東京スカイツリーといった商業施設などでも設置が始まっています。

Q.こうした動きが広がっていくといいですね。
A.まず重要なのは認知度の向上です。国はこの4月に補助犬のガイドブックを刷新し、改めて認知を高めようとしていますが、これまで以上に自治体や様々な機関と連携し、補助犬の理解を広げる努力をする必要があると思います。
A.施設や事業所も補助犬への先入観や誤解を捨て受け入れに乗り出してほしいと思います。日本補助犬情報センターの調べでは、実際に補助犬を受け入れたことのある施設のほとんどが問題なしと回答しています。補助犬は障害のある人の生活を助ける犬ですが、一方で、障害のある人がきちんと世話をすることで、自信につながり社会参加への糸口ともなります。補助犬をきっかけに、ほかの人との交流が増えたという人もいます。

Q.補助犬を通して、障害のある人への理解も深まるといいですね。
A.ただ注意することがあります。それは、補助犬が仕事中は補助犬を見つめたり、声をかけたり、触ったりはしないで欲しいんです。気が散ると仕事ができなくなってしまうんです。そして利用者が困っていたら、利用者に声をかけて欲しいと思います。身体障害者補助犬法は、日本で初めての障害者の人権を保障している法律ともいわれています。補助犬を広く受け入れられるようになれば、お互いを思いやれる社会につながるのではないでしょうか。
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(竹内 哲哉 解説委員)

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