小惑星リュウグウへの着陸に成功した探査機はやぶさ2は、その後もリュウグウに水の成分を確認するなど成果を上げ続け、今週、クレーターを作る世界初のミッションに挑戦。
水野倫之解説委員の解説。
2月の着陸は予定した着陸地点からのズレはわずか1mと、ほぼ完ぺきな着陸だった。
1号機のトラブルを教訓に、しつこいくらい準備を重ねたことが功を奏した。
着陸地点はリュウグウにちなんで「たまてばこ」と名付けられ、着陸の瞬間の動画には‘宝物’が飛び出す様子もとらえられていた。
リュウグウの表面に装置の先端が届き着陸した瞬間に上昇。
岩石の破片が大量に舞い上がった。
破片は細かい砂のようなものから数十㎝あるものまでさまざま。
動画は高度100mまで撮影されたが、重力が弱いことから破片は最後まで機体周辺に浮遊し続けていた。
よく見ると破片には、板のように平べったい形をしているものが多いことがわかり、専門家はリュウグウは地層のような層で形成され隙間があってもろい構造だと推測できるという。
そしてこの推測は、これまでの観測結果とも一致。
チームはリュウグウの重力を測定、また大きさは直径900mとわかっているので、そこから密度を割り出した。
その結果、リュウグウの50%以上は隙間が占めていて、内部はスカスカだということ。
また大きな岩が多いことなどから、リュウグウは太陽系ができた46億年前に形成された100㌔程度の母天体に別の天体が衝突し、その破片が再び集まってできたと推測できると、先月科学雑誌に発表。
さらに岩石に取り込まれた形で水の成分が存在することも突き止めた。
リュウグウの赤外線の成分を観測したところ、特定の光だけが少ないことがわかった。
これは水の成分が吸収したとみられ、リュウグウに少量ながら広い範囲で水の成分が存在すると結論づけた。
もちろん地球のように川や海があるわけではなく、水の分子を構成する水素と酸素の原子が結びついた成分が岩石の中に取り込まれる形で存在していると考えられている。
こうした水はもともとは母天体に存在していたもので、その名残がリュウグウにある。
このほかこれまでの調査でリュウグウには炭素を成分とした有機物も含まれているとみられている。
有機物や水は地球の生命誕生には欠かせないもので、有機物や水を含む小惑星が太古の地球に衝突し、生命のもとをたらしたという説が。
これまでもリュウグウ以外の小惑星で水の証拠は見つかっているが、実際に地球に持ち帰った例はない。
今回リュウグウの岩石を持ち帰り詳しく調べることで、生命に不可欠な有機物や水がどこからもたらされたのか、そしてどうやって生命が誕生したのか手がかりが得られることに期待が膨らむ。
このように成果を上げるはやぶさ2だが、これで終わりではなく今週、リュウグウ表面にクレーターを作るという世界でも初めてのミッションに挑戦。
はやぶさ2は高度を徐々に下げ、今週5日に高度500メートル付近で衝突装置を分離。
そして高度300m付近で火薬を爆発させ金属の塊が超高速で飛び出し小惑星表面に激突して、直径数mのクレーターができるというわけ。
岐阜県の山の中の試験場で行われた試験では、金属の円盤が発射の衝撃で丸い塊に変形し進んでいき、的の中央に命中し、試験は成功。
ここまでしてクレーター作るのは小惑星内部の物質がほしいから。
内部は、太陽から飛んでくる粒子や宇宙の放射線による変質がなく、いわば新鮮で、より太陽系ができた当時の状態を残していると考えられ、こうした物質を採取して初期の太陽系の詳細な解析を行いたいわけ。
でも大量に飛散する岩石のかけらや装置の破片が直撃すれば機体がダメージを負うので難しい挑戦になる。
そこではやぶさ2は衝突装置を切り離したあと、タイマーで爆発するまでの40分の間にエンジンを噴射して移動し小惑星の影に隠れる。
破片は長ければ数週間は浮遊していると考えられ、次に着陸するのは破片が再びリュウグウ表面に落ちたあとの、5月以降になる見通し。
今回の着陸で岩石のかけらが採取できたのは確実とみられ、それを持ち帰ることが非常に重要。
ただ内部の物質が採取できれば得られる知見はかなりのものがあるので、やはりチームとしては挑戦することで意見は一致したということ。
1回目の着陸と同様、安全最優先で挑んでもらいたい。
(水野 倫之 解説委員)
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